クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる

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スキル【異能強化】

 ――どれくらい、時間が経っただろうか。
 俺はまた、見知らぬところで目を覚ました。
 今度は大きな神殿どころか、クラスメートの姿もない、真っ白な空間だ。

「……俺……死んだ? ここ、もしかして天国?」

 のそり、と起き上がった俺の腹には、なんの傷も残っていない。
 きっと死んでしまって、魂だけあの世に行ったんだろうな。

「いいや、死んでないし天国でもないよ」
「うわぁっ!?」

 なんて俺の予想は、後ろから聞こえてきた声にひっくり返された。
 驚いた俺が振り返ると、そこには川底にいた男――死体の男がいる。

「驚かなくていい。私は君に、危害を加えるつもりはない……むしろその逆だ」

 水の中で見た時よりもちょっぴり血色の良い男は、やけにフランクに接してくる。
 まるで、十年来の友人みたいだ。
 おまけに気のせいか、黒くて短い髪、顔の輪郭やパーツとか、色んなところが俺に似ている気がする。
 俺が10年ほど歳を取ったら、こうなるんじゃないかってくらい。

「この空間は、私のスキル【異能強化】が生み出した精神世界だ。肉体が存在する空間のあらゆる法則を無視する、誰にも干渉かんしょうされない世界だよ」

 要するに、この人もスキルを持っていて、俺を助けてくれたみたいだ。

「……質問してもいいですか?」
「どうして君を助けたのか、かい?」
「……そうですね」

 こつん、こつんと音を立てて、男は俺のまわりをうろうろと歩く。

「これはあくまで推測だけど、あの大神殿から川に落ちる理由なんてのはひとつだ。さしずめ、スキルが原因で、一緒に転移した連中に殺されそうになったんじゃないかな?」
「…………」
「私も同じようなものさ。強力なスキルが原因で、川に封印された」
「……どこの誰だか知らないですけど、俺とは理由が違いますよ」

 見事に言い当てた推理力には驚いたけど、俺と彼とじゃ事情がかけ離れてる。

「俺は元居た世界でもいじめられてて、こっちの世界に来たって最低ランクのスキルしか発現しなくて、挙句の果てに殺されました」
「転移者の中には、異世界に来て人間性が歪む者もいる。君を殺した人間は、きっと強力なスキルを手に入れて、人間として大事なものを損なったんだろうよ」

 俺の真正面で足を止めた男は、ぽん、と俺の肩を叩く。

「だが、スキルは目覚めたんだろう? ええと……」
「イオリ。天羽イオリです」
「そう、イオリ少年。君の悩みを解決する手段は、とても簡単だ――」

 ずい、と顔を近づける男の瞳に、俺が映った。

「――スキルが弱いなら、強くすればいい」

 男は指をぐっと近づけ、パチンと鳴らす。

「どういう……うわっ!」

 すると、真っ白な空間が目まぐるしく移り変わったかと思うと、たちまちマンションの一室のような景色へと変わった。
 プロジェクターに景色を映し出したようだけど、ただ映像が見えるだけじゃない。
 置いてあるテーブルに触れられるし、芳香剤の匂いもする。

「スキルというものは、鍛えれば鍛えるほど強さが増し、ランクも上がる。多くの人がそうしないのは、ランクひとつ上げるのに、気の遠くなるような時間がかかるからさ」

 唖然あぜんとする俺の様子を楽しむように、男は椅子に腰かけた。
 今更だけど、シャツの袖から見える彼の紋章は、Sランク以上の長さだ。

「だけど、【異能強化】の精神世界は、スキルを鍛えるのに適したものをすべて用意してくれる。しかも、何百年修行しても外では数日も経っていないんだ」

 つまり、男は俺に、スキルを強化する機会をくれたんだ。
 すごいスキルのはずだけど、【異能強化】と聞いた俺の予想したものとはちょっぴり違う。
 もっとこう、あめを舐めたらレベルアップとか、スライムを倒すだけで無敵になったとか、そういうのだとありがたいんだけどな。

「なんだか、原始的な鍛え方ですね……」
「神殿で簡単に得られる力なんてのは、たかが知れてる。責任のないただの暴力さ」

 俺のリアクションを予想していたように、男がふっと口端を吊り上げた。

「本当のパワーが宿るのは、鍛えた方だ。そして天羽イオリ君、君の目には強い敵におくさない、正しい光が宿っている……成長したスキルを使いこなせるはずさ」

 なるほど確かに、と俺は納得した。
 責任のない力の前例ならよく知ってる。
 そいつが、俺を斬り殺そうとしたんだから。

「ひとまず、君のスキルはどんなものか教えてくれないか?」
「ええと……ものに命を吹き込める【生命付与】で、ランクは……E、です」

 手の甲の紋章を見せると、男がふむ、と頷く。

「ふむ、直観的にスキルがどんなものかを理解できているなら、必要最低限の力は目覚めているね。だったら、話は簡単だ」

 それからもう一度指を鳴らすと、今度は部屋の光景が折り紙のようにぱたぱたと折り畳まれて、代わりに海と砂浜、コテージと打ち捨てられた船が現れた。
 しかも砂浜の端には、タンカー船のようなものまで漂着してる。
 ぽかぽか温かい日光が降り注ぐここは、南の島の、プライベートビーチみたいだ。

「どうせ努力するなら、殺風景な空間より、こっちの方がいいだろう? この方が君も集中して、スキルの強化ができるはずさ」
「あの、スキルを強化って、どうやって……」
「決まってるよ――使んだ。使えば使うほど、スキルは強くなるからね」
「使う……?」
「スキルはランクアップする。最低ランクのEからD、順に上がっていき、最後はSSランクにまで到達する」

 けらけらと話す男の後ろに、いつの間にか白いドアが出てきている。

「経験値を溜めていくように、何度も同じ計算式を解くように、とにかく使うんだ。どうすればいいかは、スキルを手にした君自身が一番知っているはずだよ」
「俺自身が、知ってる……」
「じゃ、僕はいったんこの辺で……頑張ってくれ」

 ぼんやりと両手のひらを見つめる俺を置いて、男の姿はドアの向こうに消えた。
 ざざんと波の音が聞こえるビーチに取り残されて、ほんの少しだけぼんやりとする。
 でも、いつまでもこうはしてられない。
 俺は砂浜の端に転がっていた石を掴み、ぐっと握りしめる。
 誰にやり方を教わらなくても、無意識に体が動いたなら、きっとこれが正しいやり方だ。

「……スキルを、使う……物質を他の生命に……!」

 目を閉じて、強く祈る。頭の中で最初にイメージしたのは、猫の姿。
 石に命を吹き込み、猫にするんだと力を込め、俺は静かに目を開いた。

「――にゃあん」

 手のひらに乗っているのは――石の色と材質でできた、猫。
 小さく鳴いた石の猫が砂浜に降り、足元に頬ずりするさなか、俺は手の甲を見た。
 Eランクを示す紋章に書き足すように、楔の模様が増える。

 これがDランクへとランクアップした証だと、俺は直感した。
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