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SS:赤毛の特別隊員
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「今週も免除者はなしだな」
泰然とした声でブラッドがそう告げた瞬間、そこかしこから怨嗟の呻き声が立ち上がる。
デリック・スパークの一件が解決され再び平穏を取り戻したウィリスサイド地区だが、警邏隊隊員たちは決して暇にはならない。有事の備えての鍛錬は、彼らの一日の大半を占めている。
今日も今日とて朝から日が沈みかけているこの時間まで、あれやこれやと励んでいたわけだが。
「まったく、隊長も副隊長も、ホントに人間なんすか?」
地べたにへたり込んで恨みがましい声でそう言ったのは、最若手のアレンだ。いや、彼の名誉のために言うならば、へばっているのはアレンだけではない。詰め所内に設けられたこの鍛錬上の中で、平然と立っているのはブラッドとルーカスのみ。三十名ほどの隊員たちは、皆、座り込むなり寝転ぶなりしていた。
「普通に人間だよ。失礼だな」
にこやかに答えたのはルーカスだ。ブラッドがそうであるように、隊員たちの喘鳴が響く中、息一つ乱していない。恨めしそうなアレンに向けて、彼はにこやかに付け加える。
「じゃあ、腹筋、腕立て各二百回、町内一週、頑張って」
「くそぅ……来週こそは……」
唸ったアレンがばたりと伏せた。
屍累々→死屍累々とも表現できそうな光景だが、これは週末のウィリスサイド警邏隊詰め所では恒例となっているものだ。
警邏隊は一応公務員でもあるので、基本、週末は休みとなっている。しかし、確かに平日のような鍛錬はないが、休みで身体が鈍らないようにと「腹筋二百回、腕立て二百回、町内一周一走り」がウィリスサイド警邏隊では義務付けられていた。その義務免除を賭けて、鍛錬締めくくりのこの時間、ブラッドもしくはルーカスに対して隊員たちは五人一組で挑むことができる。
力のブラッドに対して、技のルーカス。
二人のどちらかに対し、隊員五人組が好きな得物で試合に臨める。
試してみるかどうかは隊員たち次第。
とはいえ、皆、漏れなく挑戦しているのが実際のところだ。
勝てば前述の義務が免除されるのだが――ブラッドが隊長となってから三年強ほどが過ぎた現時点で、今のところ、そのご褒美を得られた者はいない。
ボチボチ復活し起き上がる者も出始めた頃、鍛錬上に立ち込める汗と熱気を打ち払う朗らかな声が響き渡る。
「皆さん、ご飯できましたよ!」
声の主は、ケイティだ。
彼女はいつも変わらぬ明るい笑顔で隊員たちを励ます。
「お疲れさまです。今日はいいお肉が入りましたから、お肉たっぷりシチューにしました。早くお風呂入ってきちゃってください」
途端にどよめきが走り、死人の様だった男たちは次々と立ち上がると我先にと建物の中に駆け込んでいく。
あっという間に鍛錬場に残っているのはブラッドとルーカスだけになってしまった。
「じゃあ、我々も行きましょうか」
「ああ」
ルーカスの誘いに頷いたブラッドだったが、その彼に、トトッとケイティが寄ってきた。
「だんな様」
「?」
ブラッドの足を止めるように前に立ったケイティを、彼は見下ろす。
「何だ?」
眉間にしわを寄せたブラッドに、ケイティは前置きなく言った。
「出してください」
断固とした口調のケイティが、大きな緑の目でブラッドをねめ上げてくる。ここ数日後ろめたい思いをしてきたブラッドは、その一言でピンときた。ルーカスもケイティが言わんとしていることを察したらしく、形ばかりの笑みを浮かべて一歩、二歩と彼らから離れる。
「ああっと、では、私は先に行きますね」
そう残し、そそくさと立ち去っていってしまった。
逃がしはしないと言わんばかりに唇を引き結んでいるケイティの前に置き去りにされたブラッドは、目を泳がせる。
「出す、とは何のことだ?」
取り敢えず、とぼけてみた。
が。
「だんな様、とっくにバレてるんです。そろそろ、見てないふりをするのは難しくなってきたんですけど?」
「……すまん」
ボソリと謝ると、ケイティは小さくため息をついた。
「取り敢えず、だんな様のお部屋に行きましょう?」
「……ああ」
観念して頷き、ブラッドは先に立って歩き出す。
さほどかからずブラッドの私室に着き、彼は懐から滅多に使うことのない鍵を取り出した。
開錠し、ブラッドはそっと扉を押し開く。
と。
「ニィ」
愛くるしいひと声と共に、彼の寝台からピョンと何かが飛び下り一目散に突進してくる。
ブラッドは急いでケイティを部屋の中に引き込み、扉を閉めた。そうして身を屈めると、ズボンの裾に爪を引っ掛けよじ登ってこようとしているソレを、そっと両手で包み込んだ。
細心の注意を払って生地から小さく薄い爪を放させ、持ち上げる。
温かくて、頼りない感触。手のひらに重みは感じられず、確かに存在しているが、ほんの少しでも力加減を誤れば、砂糖細工か何かのように簡単に潰れてしまいそうだった。
――この、頼りない感触というものに、ブラッドは弱いのだ。是が非でも、守ってやらねばという思いに駆られてしまう。
身を起こしたブラッドの手の中でしきりに鳴き声を上げているふわふわな毛の塊を、ケイティが覗き込んできた。
「まだ小さいですね」
ケイティのその声に反応したように、ソレ――ブラッドの片手にスッポリと収まってしまうほどの仔猫――はピタリと鳴き止み、澄んだ大きな緑色の目で彼女を見上げた。
ニィと鳴いた仔猫を、ケイティは指の先でそっと撫でる。仔猫も小さいが、ケイティの手も小さい。子どものもののようなのに有能なその指に耳の裏をくすぐられ、心地よさそうに目を閉じた仔猫の喉から、驚くほど大きなゴロゴロという音が響き始める。
「元気そうですね」
微笑みと共に言ったケイティを見つめながら、ブラッドは頷く。
「ああ」
路地裏で見つけた時はヘロヘロだったが、この七日ほどの間にすっかりやんちゃになった。
彼の返事に、ケイティは仔猫と同じ色をした目で睨みつけてくる。
「じゃあ、何で引き取り手を探さないんです? いつもなら、三日か四日もしたら手放しているじゃないですか」
ブラッドは、ぐぅと喉の奥で唸った。
ケイティの今の台詞は、これまでにも彼が拾った動物を連れ帰ってきていたことに気付いていたということを示している。一体全体、いつからバレていたというのか。
狼狽するブラッドの中に沸いたその疑問は、しかし、煌く緑の瞳に押しやられる。
確かに、いつもなら、拾ってきた仔猫や仔犬がもらわれた先で無事に過ごせるだろうと確信できた段階で早々に里親に引き渡している。世話をしている時間がないということもあるが、それより何より、手元に置いておけば情が移ってしまうからだ。
だから、いつもなら、早々に手放している。
だが――この仔猫は。
ブラッドはチラリと手の中を見下ろした。
茶色というには鮮やかな、夕焼け空を映したような赤銅色。少し長めなその毛は柔らかい上に癖がある。
大きく丸く、けれども少しばかり目尻が吊り上がった目の色は、萌え始めた夏草の色だ。
……手放し、難い。
「だんな様?」
詰め寄るケイティに答えられず、ブラッドは眼を逸らした。そして、切羽詰まって彼女の問いに問いを返して逃げを打つ。
「君は……どうして……」
「どうして――って、どうして、仔猫がいることに気付いたか、ですか?」
「ああ」
むっつりと頷いたブラッドに、ケイティはニッコリと笑う。
「皆、気付いてるみたいですよ?」
「皆?」
「ええ。捨て猫とか捨て犬とか、見つけるたんびに連れてきちゃうんですよね?」
「誰からそれを」
「内緒です。それより、今はこの子のことですよ。どうするんです? 里親、見つけられそうなんですか?」
「いや……」
ブラッドは言葉を濁した。
見つけられないというか、見つけたくないというか。
ケイティは渋面のブラッドをしばらく見つめた後、ため息をついた。
「仕方がないですね……実は、最近、食糧庫にネズミが出るんです」
「? ネズミ?」
彼女が何を言いたいのかが判らず眉を寄せたブラッドの手から、ケイティは仔猫を取り上げる。
「ネズミ退治用に猫を置いておくのは、いいんじゃないですか?」
至極真面目な顔でそう言うと、ケイティはブラッドの答えを待つように小首をかしげて見上げてきた。
「役割を持ってたら、立派な隊員でしょう?」
問われてようやく彼女の意図が理解できた。
「あ……ああ、そうだな。そうか、ネズミか……」
ホッとした思いで繰り返したブラッドに、ケイティがクスリと笑う。
「じゃあ、この子は厨房に連れて行きますから、いつでも会いに来てください」
*
「ていうわけで、飼うことになったの、この子」
膝の上にのせた仔猫の喉をくすぐりながら、ケイティはフィオナに事の顛末を説明した。たっぷりの栄養をもらってお腹を膨らませた赤毛の仔猫はご満悦だ。
「なんだか、ブラッドさんらしいね」
「でしょ?」
ひとしきりクスクスと笑い合った後、フィオナがふと首をかしげる。
「でも、この子、なんだかケイティに似てるね」
「あたしに?」
「ええ。この毛の色に緑色の目でしょう? 毛も、何だかフワフワでクルクルした感じだもの。顔も……似てる気がする。可愛い」
言われてケイティは仔猫を持ち上げ、鼻面を突き合わせてしげしげと眺める。
「ええ? ……そうかなぁ」
唇を尖らせた彼女に笑いかけるように、ニィと仔猫はひと声上げた。
泰然とした声でブラッドがそう告げた瞬間、そこかしこから怨嗟の呻き声が立ち上がる。
デリック・スパークの一件が解決され再び平穏を取り戻したウィリスサイド地区だが、警邏隊隊員たちは決して暇にはならない。有事の備えての鍛錬は、彼らの一日の大半を占めている。
今日も今日とて朝から日が沈みかけているこの時間まで、あれやこれやと励んでいたわけだが。
「まったく、隊長も副隊長も、ホントに人間なんすか?」
地べたにへたり込んで恨みがましい声でそう言ったのは、最若手のアレンだ。いや、彼の名誉のために言うならば、へばっているのはアレンだけではない。詰め所内に設けられたこの鍛錬上の中で、平然と立っているのはブラッドとルーカスのみ。三十名ほどの隊員たちは、皆、座り込むなり寝転ぶなりしていた。
「普通に人間だよ。失礼だな」
にこやかに答えたのはルーカスだ。ブラッドがそうであるように、隊員たちの喘鳴が響く中、息一つ乱していない。恨めしそうなアレンに向けて、彼はにこやかに付け加える。
「じゃあ、腹筋、腕立て各二百回、町内一週、頑張って」
「くそぅ……来週こそは……」
唸ったアレンがばたりと伏せた。
屍累々→死屍累々とも表現できそうな光景だが、これは週末のウィリスサイド警邏隊詰め所では恒例となっているものだ。
警邏隊は一応公務員でもあるので、基本、週末は休みとなっている。しかし、確かに平日のような鍛錬はないが、休みで身体が鈍らないようにと「腹筋二百回、腕立て二百回、町内一周一走り」がウィリスサイド警邏隊では義務付けられていた。その義務免除を賭けて、鍛錬締めくくりのこの時間、ブラッドもしくはルーカスに対して隊員たちは五人一組で挑むことができる。
力のブラッドに対して、技のルーカス。
二人のどちらかに対し、隊員五人組が好きな得物で試合に臨める。
試してみるかどうかは隊員たち次第。
とはいえ、皆、漏れなく挑戦しているのが実際のところだ。
勝てば前述の義務が免除されるのだが――ブラッドが隊長となってから三年強ほどが過ぎた現時点で、今のところ、そのご褒美を得られた者はいない。
ボチボチ復活し起き上がる者も出始めた頃、鍛錬上に立ち込める汗と熱気を打ち払う朗らかな声が響き渡る。
「皆さん、ご飯できましたよ!」
声の主は、ケイティだ。
彼女はいつも変わらぬ明るい笑顔で隊員たちを励ます。
「お疲れさまです。今日はいいお肉が入りましたから、お肉たっぷりシチューにしました。早くお風呂入ってきちゃってください」
途端にどよめきが走り、死人の様だった男たちは次々と立ち上がると我先にと建物の中に駆け込んでいく。
あっという間に鍛錬場に残っているのはブラッドとルーカスだけになってしまった。
「じゃあ、我々も行きましょうか」
「ああ」
ルーカスの誘いに頷いたブラッドだったが、その彼に、トトッとケイティが寄ってきた。
「だんな様」
「?」
ブラッドの足を止めるように前に立ったケイティを、彼は見下ろす。
「何だ?」
眉間にしわを寄せたブラッドに、ケイティは前置きなく言った。
「出してください」
断固とした口調のケイティが、大きな緑の目でブラッドをねめ上げてくる。ここ数日後ろめたい思いをしてきたブラッドは、その一言でピンときた。ルーカスもケイティが言わんとしていることを察したらしく、形ばかりの笑みを浮かべて一歩、二歩と彼らから離れる。
「ああっと、では、私は先に行きますね」
そう残し、そそくさと立ち去っていってしまった。
逃がしはしないと言わんばかりに唇を引き結んでいるケイティの前に置き去りにされたブラッドは、目を泳がせる。
「出す、とは何のことだ?」
取り敢えず、とぼけてみた。
が。
「だんな様、とっくにバレてるんです。そろそろ、見てないふりをするのは難しくなってきたんですけど?」
「……すまん」
ボソリと謝ると、ケイティは小さくため息をついた。
「取り敢えず、だんな様のお部屋に行きましょう?」
「……ああ」
観念して頷き、ブラッドは先に立って歩き出す。
さほどかからずブラッドの私室に着き、彼は懐から滅多に使うことのない鍵を取り出した。
開錠し、ブラッドはそっと扉を押し開く。
と。
「ニィ」
愛くるしいひと声と共に、彼の寝台からピョンと何かが飛び下り一目散に突進してくる。
ブラッドは急いでケイティを部屋の中に引き込み、扉を閉めた。そうして身を屈めると、ズボンの裾に爪を引っ掛けよじ登ってこようとしているソレを、そっと両手で包み込んだ。
細心の注意を払って生地から小さく薄い爪を放させ、持ち上げる。
温かくて、頼りない感触。手のひらに重みは感じられず、確かに存在しているが、ほんの少しでも力加減を誤れば、砂糖細工か何かのように簡単に潰れてしまいそうだった。
――この、頼りない感触というものに、ブラッドは弱いのだ。是が非でも、守ってやらねばという思いに駆られてしまう。
身を起こしたブラッドの手の中でしきりに鳴き声を上げているふわふわな毛の塊を、ケイティが覗き込んできた。
「まだ小さいですね」
ケイティのその声に反応したように、ソレ――ブラッドの片手にスッポリと収まってしまうほどの仔猫――はピタリと鳴き止み、澄んだ大きな緑色の目で彼女を見上げた。
ニィと鳴いた仔猫を、ケイティは指の先でそっと撫でる。仔猫も小さいが、ケイティの手も小さい。子どものもののようなのに有能なその指に耳の裏をくすぐられ、心地よさそうに目を閉じた仔猫の喉から、驚くほど大きなゴロゴロという音が響き始める。
「元気そうですね」
微笑みと共に言ったケイティを見つめながら、ブラッドは頷く。
「ああ」
路地裏で見つけた時はヘロヘロだったが、この七日ほどの間にすっかりやんちゃになった。
彼の返事に、ケイティは仔猫と同じ色をした目で睨みつけてくる。
「じゃあ、何で引き取り手を探さないんです? いつもなら、三日か四日もしたら手放しているじゃないですか」
ブラッドは、ぐぅと喉の奥で唸った。
ケイティの今の台詞は、これまでにも彼が拾った動物を連れ帰ってきていたことに気付いていたということを示している。一体全体、いつからバレていたというのか。
狼狽するブラッドの中に沸いたその疑問は、しかし、煌く緑の瞳に押しやられる。
確かに、いつもなら、拾ってきた仔猫や仔犬がもらわれた先で無事に過ごせるだろうと確信できた段階で早々に里親に引き渡している。世話をしている時間がないということもあるが、それより何より、手元に置いておけば情が移ってしまうからだ。
だから、いつもなら、早々に手放している。
だが――この仔猫は。
ブラッドはチラリと手の中を見下ろした。
茶色というには鮮やかな、夕焼け空を映したような赤銅色。少し長めなその毛は柔らかい上に癖がある。
大きく丸く、けれども少しばかり目尻が吊り上がった目の色は、萌え始めた夏草の色だ。
……手放し、難い。
「だんな様?」
詰め寄るケイティに答えられず、ブラッドは眼を逸らした。そして、切羽詰まって彼女の問いに問いを返して逃げを打つ。
「君は……どうして……」
「どうして――って、どうして、仔猫がいることに気付いたか、ですか?」
「ああ」
むっつりと頷いたブラッドに、ケイティはニッコリと笑う。
「皆、気付いてるみたいですよ?」
「皆?」
「ええ。捨て猫とか捨て犬とか、見つけるたんびに連れてきちゃうんですよね?」
「誰からそれを」
「内緒です。それより、今はこの子のことですよ。どうするんです? 里親、見つけられそうなんですか?」
「いや……」
ブラッドは言葉を濁した。
見つけられないというか、見つけたくないというか。
ケイティは渋面のブラッドをしばらく見つめた後、ため息をついた。
「仕方がないですね……実は、最近、食糧庫にネズミが出るんです」
「? ネズミ?」
彼女が何を言いたいのかが判らず眉を寄せたブラッドの手から、ケイティは仔猫を取り上げる。
「ネズミ退治用に猫を置いておくのは、いいんじゃないですか?」
至極真面目な顔でそう言うと、ケイティはブラッドの答えを待つように小首をかしげて見上げてきた。
「役割を持ってたら、立派な隊員でしょう?」
問われてようやく彼女の意図が理解できた。
「あ……ああ、そうだな。そうか、ネズミか……」
ホッとした思いで繰り返したブラッドに、ケイティがクスリと笑う。
「じゃあ、この子は厨房に連れて行きますから、いつでも会いに来てください」
*
「ていうわけで、飼うことになったの、この子」
膝の上にのせた仔猫の喉をくすぐりながら、ケイティはフィオナに事の顛末を説明した。たっぷりの栄養をもらってお腹を膨らませた赤毛の仔猫はご満悦だ。
「なんだか、ブラッドさんらしいね」
「でしょ?」
ひとしきりクスクスと笑い合った後、フィオナがふと首をかしげる。
「でも、この子、なんだかケイティに似てるね」
「あたしに?」
「ええ。この毛の色に緑色の目でしょう? 毛も、何だかフワフワでクルクルした感じだもの。顔も……似てる気がする。可愛い」
言われてケイティは仔猫を持ち上げ、鼻面を突き合わせてしげしげと眺める。
「ええ? ……そうかなぁ」
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