29 / 48
Ⅲ:捨てられ王子の綺羅星
四阿で:必要としているもの
しおりを挟む
「それでね、メルセデが――」
おしゃべりの合間でステラがふと眼を向けると、アレッサンドロの身体がふらりふらりと揺れていた。
どうやら、うたた寝を始めたらしい。
あんなふうに船を漕いでいたら、あまり身体は休まらないだろう。四阿の長椅子の背もたれは低いから、後ろに寄り掛かることもできない。
束の間どうしようかと考えたステラは、手にしていた茶器を置き、アレッサンドロの隣に行く。そうして揺れる彼の肩を支えてゆっくりと引き倒し、頭を自分の膝に下ろした。
「ん……」
アレッサンドロがもぞもぞと身じろぎをし、ステラは起こしてしまったかと息を詰める。が、彼は小さく息をついただけで、むしろ身体の力が抜けたのか、ステラの膝にかかる重みが増した。そして、より深く緩やかな寝息が聞こえてくる。
ディアスタ村にいた頃も、子どもたちの世話の手が空くと、時々こんなふうに膝枕で彼の午睡に付き合ったものだった。ステラの中で宝物のように大事にしている思い出の一つだ。些細で何気ない、けれども、とても大事な思い出の、一つ。
(あの頃は、あんなに軽かったのに)
ステラの膝にチョンとのるくらいだったフワフワの金髪は、色も手触りもあの頃と違っていた。すぐに絡まってしまう猫毛ではなくなり、色も淡い金色から黄金色になっている。
(でも、寝顔はやっぱり同じかな)
そっと前髪を避けて覗き込んだ横顔に、ステラはクスリと笑う。
起きているときは十八歳よりも大人びて見えるけれども、こうやって静かに寝息を立てているところはそれよりも少し幼く見えるくらいだった。ステラの膝にしがみついてきた、小さなアレッサンドロを思い出させてくれる。
ステラはサラリとした金髪の中に指を潜らせた。
この城に招かれてから、服も食事も、これでもかというほど豪華なものを与えてもらった。けれど、アレッサンドロを膝の上にのせている今が一番、満たされた気持ちになれている気がする。
(これって、やっぱり、庇護欲の延長なのかな)
艶やかな髪をゆっくりと撫でながら、ステラは胸の内で呟いた。
ステラは、教会に引き取られた子どもたちのことは皆、可愛いと思っている。コラーノ神父がそうしているように、分け隔てなく平等に。
けれど、その中でもアレッサンドロは『特別』な存在だった。八年間離れていても、あの四年間が色褪せることはなかった。
ステラの頭のどこかに、彼のことは『自分のもの』だという思いがあったのかもしれない。彼女が見つけ、連れてきた子だったから。いつか村に返すことになる他の子らと違って、ずっと、彼女の傍にいてくれるはずの子だったから。
八年前に迎えに応じて都へ行くことを勧めた時、アレッサンドロが再び彼女の元へ帰ってくることを信じ、それを欠片も疑わなかった。
八年間、ステラからの手紙に一度も返事がなくても、アレッサンドロが彼女のことを忘れてしまったなどとは、つゆほども思わなかった。
どれだけ距離も時間も離れていても、ずっと、ステラにとってアレッサンドロは特別な存在だった。アレッサンドロにとっても、ステラは特別な存在なのだと、思っていた。
(でも……)
ステラは睫毛を伏せる。
都で再会したアレッサンドロを見ていると、その確信が、揺らぐ。
アレッサンドロがジーノの誘いでのこのことやってきたステラのことをどう思っているのかが解らないし、自分自身の気持ちも、何だか良く解からない。
幼い頃のアレッサンドロは、傍にいて、ただ心地良いだけだった。穏やかで、温かで、笑み交わせばふわりと幸せな気分になれた。
それが、今はない。
再会したアレッサンドロは、一緒にいると落ち着かない。ニコリともしない彼を見ていると、胸が苦しくなるだけだ。
アレッサンドロが変わったから、というのもあるけれど、自分の中にある彼に対する何かも、昔とは違ってしまっている気がした。
「八年も会ってなかったのだもの、仕方がないよね」
苦笑混じりで呟き、また、彼の眠りを妨げないようにゆっくりと、黄金色の髪を梳く。そうしていると、一梳きごとに時が巻き戻されているような錯覚に見舞われた。
けれど、実際には、過去には戻れない。やり直すことなどできないのだから、これから先を見つめて進んでいくしかない。
それに、何もかもが変わってしまったようだけれども、一つだけ、揺るぎなくステラの中に留まり続けているものがある。
(わたしは、いつだってアレックスの幸せを何よりも願っているよ)
八年経っても少しも変わらないその想いを、今度は声に出さずに囁いたときだった。
「お休みですか」
不意にそんな声がかけられて、ステラは思わずあげかけた悲鳴を寸でのところで呑み込んだ。
顔を上げるといつの間にそこにいたのか、白髯を蓄えた老宰相が佇んでいる。
「うたた寝とは、お珍しい」
四阿の外から、リナルドはいかにも物珍しそうな眼差しでステラの膝の上のアレッサンドロを見つめている。
「お仕事の合間にお昼寝とか、しないんですか?」
「ないですね。横になられているお姿を拝見するのも初めてですよ。あなたにはよほど心を許しておられるようだ」
「そう、でしょうか」
ポツリとこぼしたステラの呟きに、リナルドが眉を上げた。けれど、彼女が都に来てからのアレッサンドロの態度を見ていると、あまり『心を許している』ようには思えない。
確かに、街に探しに来てくれた時のように、何かの拍子に、昔のアレッサンドロが垣間見えることがある。けれど、それ以外――つまり殆どずっと、ステラは彼との間に壁を感じるのだ。それも、アレッサンドロが築こうとして築いている、壁を。
「わたしがここにいてもいいのか、よく判りません」
傍にいていいのかすら判らないのに、心を許してくれているだなんて、到底思えない。
ジッと見つめてくるリナルドの視線から逃れるようにステラはうつむき、そっとアレッサンドロの髪を撫でる。
もしも八年前に戻れたら、都になんて行かなくてもいいよと言ってしまっているだろうか。
かつての彼を思い出させる寝顔を見つめ、ふと、そんなことを考えた。
今のこの国を見ていればそれが正しくない言葉だというのは判るけれども、それでも、「行かないで」という一言を口にしてしまうかもしれない自分がいることを、ステラは否定できなかった。
顔を伏せたままのステラに、低い声での呟きが届く。
「この方は我々を信用していないのです」
「え?」
唐突に不穏なことを言われてステラが眼を上げると、そこには苦笑、いや、自嘲の嗤いがあった。
「我々の前ではうたた寝どころか目を閉じることすらなさいません。まあ、理不尽な王妃の命に唯々諾々と従い、寄る辺の無い親子を無情に追いやった者どもですからね。今更赦せ、信用しろなどというのは虫が良すぎる」
どう答えていいのか判らず唇を噛んだステラに、リナルドは微笑んだ。
「十三年前に何があったのかは、ご存じでしょう?」
「何となく……」
細かい事情をはっきりと教えられたわけではない。
ただ、ジーノとアレッサンドロは母親が違うこと、十三年前に父親である国王が亡くなると同時に、ジーノの母親である王妃によってここから追い出されたことは、聞いた。
「アレッサンドロ様は、我々を信用していません。政務の点ではともかく、個人としては。信頼どころか、欠片ほどの好意すらお持ちではないでしょう。そんな中で寛ぐことなど、できなくても当然ですな」
常に淡々としたリナルドの声に今滲んでいるのは、慚愧の念だ。八年経ってもアレッサンドロの信頼を得ることができていないことに、不甲斐なさでも覚えているのだろうか。
「でも、頑張ってお仕事してるでしょう? きっと、国の為に、みんなの為にって……」
あんなにも身を粉にしてジーノの代わりとして王の職務に力を尽くしているのだ。嫌っている相手の為に、あれほど心血を注ぐことなどしないに違いない。それはとりもなおさず、アレッサンドロはここの人たちのことを好きだということになるはずだ。
だが、リナルドはステラの言葉に淡く微笑み、かぶりを振る。
「この方がなさっていることは、どれも『国の為』ではありませんよ」
「? どういうことですか?」
眉根を寄せて首をかしげたステラに、リナルドは笑みを返しただけだった。彼はもう一度アレッサンドロの寝顔に眼を向け、そして、ステラを見る。
「あまりうるさくすると、せっかくお休みになられているのを邪魔してしまいますな」
「え、あの……」
「では、ごゆっくり」
結局ステラの疑問を煙に巻き、リナルドは老人らしからぬ素早い足取りで去っていってしまった。
「どういう意味……?」
解けない謎を与えられて放り出されたステラは、独り途方に暮れる。
アレッサンドロはこんなに一生懸命頑張っているというのに、それがティスヴァーレ国の為ではないとしたら、いったい、何が目的だというのだろう。
今のリナルドのように、アレッサンドロを取り巻く人たちからは、どこか彼に引け目を感じているような空気を感じることがある。あるいは、常に一歩距離を取ろうとするような空気を。
アレッサンドロの方だっていつもしかめ面で、ニコリともしない。
そんなふうに壁を感じるとはいえ、アレッサンドロは確かにここで必要とされているし、彼もまた身を粉にして国に尽くしている。
それは、間違いない。
ステラが教会で皆の為に動いているのは、彼らが好きだからだ。神父や子どもたちのために働き、彼らが喜ぶ顔を見て、ステラは満足を得ていた。ステラには、彼らに必要とされているという実感が、必要だった。
(じゃあ、アレックスは?)
八年も一緒にいる人たちと打ち解けようとせず、あれほどがむしゃらに国王の役割に没頭しながら、国の為、国民の為でもないという。
アレッサンドロが必要としているものは、いったい、何だというのだろう。
彼が望んでいることは、いったい、何だというのだろう。
「アレックスは、何のために、そんなに頑張ってるの?」
ステラがそう呟いた時、まるでその問いに答えようとするかのように、アレッサンドロの睫毛が震えた。
おしゃべりの合間でステラがふと眼を向けると、アレッサンドロの身体がふらりふらりと揺れていた。
どうやら、うたた寝を始めたらしい。
あんなふうに船を漕いでいたら、あまり身体は休まらないだろう。四阿の長椅子の背もたれは低いから、後ろに寄り掛かることもできない。
束の間どうしようかと考えたステラは、手にしていた茶器を置き、アレッサンドロの隣に行く。そうして揺れる彼の肩を支えてゆっくりと引き倒し、頭を自分の膝に下ろした。
「ん……」
アレッサンドロがもぞもぞと身じろぎをし、ステラは起こしてしまったかと息を詰める。が、彼は小さく息をついただけで、むしろ身体の力が抜けたのか、ステラの膝にかかる重みが増した。そして、より深く緩やかな寝息が聞こえてくる。
ディアスタ村にいた頃も、子どもたちの世話の手が空くと、時々こんなふうに膝枕で彼の午睡に付き合ったものだった。ステラの中で宝物のように大事にしている思い出の一つだ。些細で何気ない、けれども、とても大事な思い出の、一つ。
(あの頃は、あんなに軽かったのに)
ステラの膝にチョンとのるくらいだったフワフワの金髪は、色も手触りもあの頃と違っていた。すぐに絡まってしまう猫毛ではなくなり、色も淡い金色から黄金色になっている。
(でも、寝顔はやっぱり同じかな)
そっと前髪を避けて覗き込んだ横顔に、ステラはクスリと笑う。
起きているときは十八歳よりも大人びて見えるけれども、こうやって静かに寝息を立てているところはそれよりも少し幼く見えるくらいだった。ステラの膝にしがみついてきた、小さなアレッサンドロを思い出させてくれる。
ステラはサラリとした金髪の中に指を潜らせた。
この城に招かれてから、服も食事も、これでもかというほど豪華なものを与えてもらった。けれど、アレッサンドロを膝の上にのせている今が一番、満たされた気持ちになれている気がする。
(これって、やっぱり、庇護欲の延長なのかな)
艶やかな髪をゆっくりと撫でながら、ステラは胸の内で呟いた。
ステラは、教会に引き取られた子どもたちのことは皆、可愛いと思っている。コラーノ神父がそうしているように、分け隔てなく平等に。
けれど、その中でもアレッサンドロは『特別』な存在だった。八年間離れていても、あの四年間が色褪せることはなかった。
ステラの頭のどこかに、彼のことは『自分のもの』だという思いがあったのかもしれない。彼女が見つけ、連れてきた子だったから。いつか村に返すことになる他の子らと違って、ずっと、彼女の傍にいてくれるはずの子だったから。
八年前に迎えに応じて都へ行くことを勧めた時、アレッサンドロが再び彼女の元へ帰ってくることを信じ、それを欠片も疑わなかった。
八年間、ステラからの手紙に一度も返事がなくても、アレッサンドロが彼女のことを忘れてしまったなどとは、つゆほども思わなかった。
どれだけ距離も時間も離れていても、ずっと、ステラにとってアレッサンドロは特別な存在だった。アレッサンドロにとっても、ステラは特別な存在なのだと、思っていた。
(でも……)
ステラは睫毛を伏せる。
都で再会したアレッサンドロを見ていると、その確信が、揺らぐ。
アレッサンドロがジーノの誘いでのこのことやってきたステラのことをどう思っているのかが解らないし、自分自身の気持ちも、何だか良く解からない。
幼い頃のアレッサンドロは、傍にいて、ただ心地良いだけだった。穏やかで、温かで、笑み交わせばふわりと幸せな気分になれた。
それが、今はない。
再会したアレッサンドロは、一緒にいると落ち着かない。ニコリともしない彼を見ていると、胸が苦しくなるだけだ。
アレッサンドロが変わったから、というのもあるけれど、自分の中にある彼に対する何かも、昔とは違ってしまっている気がした。
「八年も会ってなかったのだもの、仕方がないよね」
苦笑混じりで呟き、また、彼の眠りを妨げないようにゆっくりと、黄金色の髪を梳く。そうしていると、一梳きごとに時が巻き戻されているような錯覚に見舞われた。
けれど、実際には、過去には戻れない。やり直すことなどできないのだから、これから先を見つめて進んでいくしかない。
それに、何もかもが変わってしまったようだけれども、一つだけ、揺るぎなくステラの中に留まり続けているものがある。
(わたしは、いつだってアレックスの幸せを何よりも願っているよ)
八年経っても少しも変わらないその想いを、今度は声に出さずに囁いたときだった。
「お休みですか」
不意にそんな声がかけられて、ステラは思わずあげかけた悲鳴を寸でのところで呑み込んだ。
顔を上げるといつの間にそこにいたのか、白髯を蓄えた老宰相が佇んでいる。
「うたた寝とは、お珍しい」
四阿の外から、リナルドはいかにも物珍しそうな眼差しでステラの膝の上のアレッサンドロを見つめている。
「お仕事の合間にお昼寝とか、しないんですか?」
「ないですね。横になられているお姿を拝見するのも初めてですよ。あなたにはよほど心を許しておられるようだ」
「そう、でしょうか」
ポツリとこぼしたステラの呟きに、リナルドが眉を上げた。けれど、彼女が都に来てからのアレッサンドロの態度を見ていると、あまり『心を許している』ようには思えない。
確かに、街に探しに来てくれた時のように、何かの拍子に、昔のアレッサンドロが垣間見えることがある。けれど、それ以外――つまり殆どずっと、ステラは彼との間に壁を感じるのだ。それも、アレッサンドロが築こうとして築いている、壁を。
「わたしがここにいてもいいのか、よく判りません」
傍にいていいのかすら判らないのに、心を許してくれているだなんて、到底思えない。
ジッと見つめてくるリナルドの視線から逃れるようにステラはうつむき、そっとアレッサンドロの髪を撫でる。
もしも八年前に戻れたら、都になんて行かなくてもいいよと言ってしまっているだろうか。
かつての彼を思い出させる寝顔を見つめ、ふと、そんなことを考えた。
今のこの国を見ていればそれが正しくない言葉だというのは判るけれども、それでも、「行かないで」という一言を口にしてしまうかもしれない自分がいることを、ステラは否定できなかった。
顔を伏せたままのステラに、低い声での呟きが届く。
「この方は我々を信用していないのです」
「え?」
唐突に不穏なことを言われてステラが眼を上げると、そこには苦笑、いや、自嘲の嗤いがあった。
「我々の前ではうたた寝どころか目を閉じることすらなさいません。まあ、理不尽な王妃の命に唯々諾々と従い、寄る辺の無い親子を無情に追いやった者どもですからね。今更赦せ、信用しろなどというのは虫が良すぎる」
どう答えていいのか判らず唇を噛んだステラに、リナルドは微笑んだ。
「十三年前に何があったのかは、ご存じでしょう?」
「何となく……」
細かい事情をはっきりと教えられたわけではない。
ただ、ジーノとアレッサンドロは母親が違うこと、十三年前に父親である国王が亡くなると同時に、ジーノの母親である王妃によってここから追い出されたことは、聞いた。
「アレッサンドロ様は、我々を信用していません。政務の点ではともかく、個人としては。信頼どころか、欠片ほどの好意すらお持ちではないでしょう。そんな中で寛ぐことなど、できなくても当然ですな」
常に淡々としたリナルドの声に今滲んでいるのは、慚愧の念だ。八年経ってもアレッサンドロの信頼を得ることができていないことに、不甲斐なさでも覚えているのだろうか。
「でも、頑張ってお仕事してるでしょう? きっと、国の為に、みんなの為にって……」
あんなにも身を粉にしてジーノの代わりとして王の職務に力を尽くしているのだ。嫌っている相手の為に、あれほど心血を注ぐことなどしないに違いない。それはとりもなおさず、アレッサンドロはここの人たちのことを好きだということになるはずだ。
だが、リナルドはステラの言葉に淡く微笑み、かぶりを振る。
「この方がなさっていることは、どれも『国の為』ではありませんよ」
「? どういうことですか?」
眉根を寄せて首をかしげたステラに、リナルドは笑みを返しただけだった。彼はもう一度アレッサンドロの寝顔に眼を向け、そして、ステラを見る。
「あまりうるさくすると、せっかくお休みになられているのを邪魔してしまいますな」
「え、あの……」
「では、ごゆっくり」
結局ステラの疑問を煙に巻き、リナルドは老人らしからぬ素早い足取りで去っていってしまった。
「どういう意味……?」
解けない謎を与えられて放り出されたステラは、独り途方に暮れる。
アレッサンドロはこんなに一生懸命頑張っているというのに、それがティスヴァーレ国の為ではないとしたら、いったい、何が目的だというのだろう。
今のリナルドのように、アレッサンドロを取り巻く人たちからは、どこか彼に引け目を感じているような空気を感じることがある。あるいは、常に一歩距離を取ろうとするような空気を。
アレッサンドロの方だっていつもしかめ面で、ニコリともしない。
そんなふうに壁を感じるとはいえ、アレッサンドロは確かにここで必要とされているし、彼もまた身を粉にして国に尽くしている。
それは、間違いない。
ステラが教会で皆の為に動いているのは、彼らが好きだからだ。神父や子どもたちのために働き、彼らが喜ぶ顔を見て、ステラは満足を得ていた。ステラには、彼らに必要とされているという実感が、必要だった。
(じゃあ、アレックスは?)
八年も一緒にいる人たちと打ち解けようとせず、あれほどがむしゃらに国王の役割に没頭しながら、国の為、国民の為でもないという。
アレッサンドロが必要としているものは、いったい、何だというのだろう。
彼が望んでいることは、いったい、何だというのだろう。
「アレックスは、何のために、そんなに頑張ってるの?」
ステラがそう呟いた時、まるでその問いに答えようとするかのように、アレッサンドロの睫毛が震えた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】灰かぶりの花嫁は、塔の中
白雨 音
恋愛
父親の再婚により、家族から小間使いとして扱われてきた、伯爵令嬢のコレット。
思いがけず結婚が決まるが、義姉クリスティナと偽る様に言われる。
愛を求めるコレットは、結婚に望みを託し、クリスティナとして夫となるアラード卿の館へ
向かうのだが、その先で、この結婚が偽りと知らされる。
アラード卿は、彼女を妻とは見ておらず、曰く付きの塔に閉じ込め、放置した。
そんな彼女を、唯一気遣ってくれたのは、自分よりも年上の義理の息子ランメルトだった___
異世界恋愛 《完結しました》
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
簒奪女王と隔絶の果て
紺乃 安
恋愛
穏やかな美青年王子が、即位した途端に冷酷な王に変貌した。そしてそれが、不羈の令嬢ベアトリスの政略結婚相手。
ポストファンタジー宮廷ロマンス小説。
※拙作「山賊王女と楽園の涯」の完結編という位置づけでもありますが、知らなくとも問題ないよう書いてあります。興味があればそちらもお読みください(ただしずいぶんジャンルが違い、とても長いです)。
猫になった悪女 ~元夫が溺愛してくるなんて想定外~
黒猫子猫
恋愛
ディアナは欲深く、夫にも結婚を強いた悪女として知られた女王だ。当然のように人々から嫌われ、夫婦仲は悪く、病に倒れた時も誰も哀しまなかった。ディアナは、それで良かった。余命宣告を受け、自分の幸せを追い求める事などとうに止めた。祖国のためにできる事は全てやった。思うままに生きたから、人生をやり直せると言われても、人間などまっぴらごめんだ。
そして、《猫》になった。日向でのんびりと寝ている姿が羨ましかったからだ。いざ、自堕落な生活をしようと思ったら、元夫に拾われてしまった。しかも、自分が死んで、解放されたはずの彼の様子が妙だ。
あなた、隙あらば撫でようとするの、止めてくれる? 私達は白い結婚だったでしょう。
あなた、再婚する気がないの? 「お前を愛したりしない」って嬉しい事を言ってくれたのは誰よ!
猫になった孤高の女王×妻を失って初めて色々気づいてしまった王配の恋のお話。
※全30話です。
【完結】一途すぎる公爵様は眠り姫を溺愛している
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
リュシエンヌ・ソワイエは16歳の子爵令嬢。皆が憧れるマルセル・クレイン伯爵令息に婚約を申し込まれたばかりで幸せいっぱいだ。
しかしある日を境にリュシエンヌは眠りから覚めなくなった。本人は自覚が無いまま12年の月日が過ぎ、目覚めた時には父母は亡くなり兄は結婚して子供がおり、さらにマルセルはリュシエンヌの親友アラベルと結婚していた。
突然のことに狼狽えるリュシエンヌ。しかも兄嫁はリュシエンヌを厄介者扱いしていて実家にはいられそうもない。
そんな彼女に手を差し伸べたのは、若きヴォルテーヌ公爵レオンだった……。
『残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました』『結婚前日に友人と入れ替わってしまった……!』に出てくる魔法大臣ゼインシリーズです。
表紙は「簡単表紙メーカー2」で作成しました。
国王陛下はいつも眠たい
通木遼平
恋愛
八つの国が一つになって建国されたフォルトマジア王国では、「主家」と呼ばれる八つのかつての王家が順番に王位を継ぐことが決まっていた。その一つであり先々代の王家でもあったエリーディアに生まれたフィーナディアは、ある日突然、現国王であるトゥーランのラグルに嫁ぐよう父から告げられる。彼女の父親と姉は自分たちこそ王位にふさわしいと言ってはばからず、どんな手を使ってでもラグルを陥れるよう命じたのだった。
しかしそんな父たちの考えに賛同できないフィーナディアは、父の企みをラグルに伝え、婚約もなかったことにし、後は自由にさせてもらおうと考える。しかしふとしたきっかけでラグルとの距離が縮まっていき……。
真実の愛に目覚めた伯爵令嬢と公爵子息
藤森フクロウ
恋愛
女伯爵であった母のエチェカリーナが亡くなり、父は愛人を本宅に呼んで異母姉妹が中心となっていく。
どんどん居場所がなくなり落ち込むベアトリーゼはその日、運命の人に出会った。
内気な少女が、好きな人に出会って成長し強くなっていく話。
シリアスは添え物で、初恋にパワフルに突き進むとある令嬢の話。女子力(物理)。
サクッと呼んで、息抜きにすかっとしたい人向け。
純愛のつもりですが、何故か電車やバスなどの公共施設や職場では読まないことをお薦めしますというお言葉を頂きました。
転生要素は薄味で、ヒロインは尽くす系の一途です。
一日一話ずつ更新で、主人公視点が終わった後で別視点が入る予定です。
そっちはクロードの婚約裏話ルートです。
出ていってください!~結婚相手に裏切られた令嬢はなぜか騎士様に溺愛される~
白井
恋愛
イヴェット・オーダム男爵令嬢の幸せな結婚生活が始まる……はずだった。
父の死後、急に態度が変わった結婚相手にイヴェットは振り回されていた。
財産を食いつぶす義母、継いだ仕事を放棄して不貞を続ける夫。
それでも家族の形を維持しようと努力するイヴェットは、ついに殺されかける。
「もう我慢の限界。あなたたちにはこの家から出ていってもらいます」
覚悟を決めたら、なぜか騎士団長様が執着してきたけれど困ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる