捨て猫を拾った日

トウリン

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捨て猫が懐いた日

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「ん……ぁ、あぁっ」
 こらえきれなかった微かな喘ぎが、真白ましろの口から漏れる。だが、大半は彼女の喉の奥に呑み込まれていった。

「まだ我慢できるんだ?」
 最近少し大きくなった彼女のふくらみの突端を軽く噛んでいた孝一こういちは、少しだけそれを引っ張ってから放し、にっと笑った。親指の腹で硬く立ち上がった色付く蕾を転がしてやると、真白の身体がビクビクと引きつる。
「ん……そこ、ばっかし、もう……」
「何だ、他の場所も触って欲しいのか?」
 笑みを浮かべたまま潤んだ真白の目を覗き込み、孝一は右手で胸の脇から腰へと撫で下ろす。

「や……ぁん」
 甘い声で啼いた彼女はくすぐったそうに身をよじるが、脚の間に入り込んだ孝一の身体に腹から下を押さえ込まれていては、ろくに動かすこともできない。
 触れるか触れないかという力でウェストのくびれを撫で、身もだえする真白の動きを楽しんだ。
「やめ……」
 真白の息が弾む。孝一の手を押し退けようとするが、儚い抵抗は功を奏さない。
 まだキスを数回と、胸をいじったくらいだ。たったそれだけなのにすでにとろけ始めた彼女が、孝一にはたまらない。

(可愛い)
 彼の中にはそんな感情が湧き上がるけれど、齧り付きたいような気持ちも伴ったそれが一般的な意味の『可愛い』と同じものなのかと問われると、甚だ疑問だ。

 孝一はわざと音を立てて胸から腹へとキスをしながらゆっくりと身体を下げていく。チュッと音が響くたびに真白の身体が震えるのが、楽しい。
 脚の付け根の柔らかな凹みまで行ったところで進路を変えて、腰の丸みにそっと噛み付いた。
「ふぁ……」
 真白の両手がキュッとシーツを握る。
 孝一は骨の形を確かめるように少しずつ位置をずらしながら、痕が残らないように力を加減しつつ二度三度と歯を立てる。前は骨のでっぱりの方が目立っていたそこも、今は薄いとはいえ肉が付き始めていた。

(親鳥が甲斐甲斐しく雛に餌を運んでくる気持ちが解かるな)
 腰骨に舌を這わせながら孝一は内心でそう呟く。
 真白の身体が丸みを帯びていくのを実感するのは、彼の楽しみでもあり喜びでもある。
 自分からは要求を口にしない彼女が何を好むのか。わずかな表情の変化などから察してそれがうまくはまると、仕事で大口の契約を取れた時よりも達成感があった。
 何しろ真白の頭の中を読むのは、容易なことではなかったから。
 取引先のオッサンの目論みを先取りすることの方が、遥かに簡単だった。
 目下のところ、真白に効率よく肉を付けるのに役立っているものは、ケーキだ。
 ある晩思い付きで駅からの帰り道にあるケーキ屋でいくつか買って帰ったら、意外に真白の食い付きが良かったのだ。食の細い彼女をてっとり早く太らせる為に、三日に一度は土産にしている。
 その甲斐あってか、出会った頃には骨と皮ばかりだったその身体は年相応の凹凸を帯びつつある。以前は彼女に触れる度に孝一の胸は痛ましさによる疼きに襲われたものだが、最近では暴走しそうな欲求を抑えるようと己に我慢を強いることが彼を苦しませるようになった。
 もっとも、真白には少しも我慢などしていないではないかと睨まれそうだが。

 再び攻撃をキスに変えて、孝一は彼女の中心へと辿っていく。
「ッん!」
 腿の内側の薄い皮膚を強く吸うと、腱が浮き上がるほどに力が入った。閉じそうになる彼女の膝に両手を当てて、それを止める。
「やッ」
 何度孝一に同じことをされても、真白は毎回同じ反応を返す。隠すべき場所をさらけ出されて狼狽を露わに彼女が手を伸ばしてくるのを無視して、中心にほど近い柔らかな部分に、続けざまにいくつかキスを落とした。
「ぁッ、ぁ……」
 孝一がチュッと音をさせるたびに真白の全身にヒクンヒクンとさざ波が走る。
 その様が何とも愛らしい。
 彼はふと動きを止めて、唇を彼女の肌に触れさせたまま、眼だけで見上げた。

「なあ、どっちがいい?」
「え?」
 唐突な問いに、頬を上気させたまま一瞬真白がキョトンとする。ただでさえ熱に浮かされたようにぼんやりとした眼差しをしていたが、それを差し引いても何が「どっち」なのかさっぱり判らないふうに。
「ああ、そうか、こっちはまだしたことなかったっけ」
 呟いて、孝一はふっくらと厚みを持ち始めている花弁をくわえ、吸う。
「きゃっ!?」
 小さな悲鳴と共に、真白の腰が跳ねた。と思ったら、上半身を起こして逃げ出そうとする。

 孝一は真白の両の膝裏に手を当てて持ち上げ、腰ごと押さえ込むようにして彼女の身体の両脇に向けてグッと押し開いた。
「や、やだぁ!」
 これまでにないほど全てを孝一に見せることになる格好に、真白が悲鳴に近い声を上げる。
 だが、この抵抗も長くは続かないことを、孝一は知っていた。束の間正気を取り戻したとしても、彼の身体の下では、真白はいつもあっという間にトロトロにとろけてしまうのだ。

 当座の抵抗を力で封じ、歯と舌で柔らかな感触を堪能する。薄紅色に色付く花びらを吸い、軽く食むと、その度に真白の全身がビクビクと反応した。
「ふ……ッ」
 唇をきつく噛み締めた真白の鼻から微かな息が漏れる。素直に声を上げたらいいと思うのだが、よほど我を失わせない限り、彼女は大きな声を出そうとしない。

 こらえられるということは、まだまだ熱が足りないということだ。
(もっともっと、狂わせてやらないと)
 存分に外側を楽しんだ後、名残惜しくもキスを残し、孝一はより中心へと向かう。
 綺麗な紅色の泉。そこから溢れ出す蜜。
 孝一は舌先を使ってそれをそっとすくい取り、そしてその柔らかく熱い内部へと侵入する。と、その瞬間、真白の身体が跳ね上がった。
「……ひぅッ!」
 チラリと彼女の顔に視線を走らせると、そこにあるのは驚きの色だった。嫌悪では、ない。

 もしも真白が嫌がるようであれば、いつも通りの流れにしようと思っていた。だが、そうでなければ、いつもよりも時間をかけて焦らし、彼女の方から彼を求めさせたかった。
(嫌がっては、いないな)
 それだけを確認し、孝一は蜜を溢れさせる源泉の深みへと舌を進める。途端、真白は息を詰め、クッと背をのけ反らせた。
「や……や……ダメ……ッ」
 辛うじて自由になる膝から先をバタつかせても、孝一の動きには全く影響しない。
 真白に聞かせるようにわざと水音を立てながら、伸ばした舌で彼女の中を探る。
「ぁ……あ、ぁんん、んッ」
 舌での刺激だけでは強さも深さも足りないから、イくことはできないだろう。彼女の秘裂はもっともっとと要求しているかのように、ハクハクとヒク付いている。
 柔らかな内部をこすり上げるほどに溢れ出してくる蜜を孝一が強く啜り上げると、彼女は挿し入れた彼の舌をキュッと締め付けてきた。

「うまいな」
「う、そ……そんなの、おいしい筈、ない……」
「いいや、うまいよ。このまま全部食い尽くしてしまいそうになる」
 その言葉を証明するように、孝一は充血していっそうふくらみを増しつつある花弁にそっと歯を立てた。
「や、やぁッ、噛まないで」
「わかったよ」
 孝一は真白を宥めるように、薄らと付いている歯形をペロリと舐める。そうして、深いキスをする時のようにピタリと蜜壺に唇を押し当て、届く範囲全てを舌でなぶり尽くした。

「ふぁ、あ、ぁ」
 仔猫のような啼き声を喉から漏らしながら、真白が腰を揺らす。
「……イきたい?」
「んん……」
 孝一の問いに、涙をにじませた目が返ってくる。それは真白の望みを何よりも雄弁に語っていたけれど、彼は見て見ぬふりをした。音を立てて蜜をすすり、後孔から茂みに隠れた花芯のすぐ手前までをゆっくりと舌で辿る。
「や、ぁん」
 か細い声と共に真白の全身がビクビクと震え、小さな爪先が跳ね上がった。

「お願いと言ってみろよ。そうしたらイかせてやるから」
 ふっくらと充血した蕾の周りを尖らせた舌の先でくすぐりながら、孝一は言う。真白は両手で顔を覆っていたけれど、指の隙間から口元がわななくのが見て取れた。
「……ね、がい……」
「何?」
 訊き返し、孝一は潤みの中に指を潜らせ、彼女の浅いところでクチュクチュと音をさせる。それに合わせてキュウキュウと締め付けてくるのが愛おしい。
 真白の大きな栗色の目が真っ直ぐに彼を見つめてくる。快楽に霞んだ、栗色の目が。

「おねがい、コウ、ね?」
「よくできました」
 一気に多くは望まない。それが今の彼女にとっては精一杯の『おねだり』だろう。
 孝一は真白の中を探る指を二本に増やす。そうして、彼女の中の浅い部分にある感じるところをグッグッと押し上げるようにして刺激した。
「あ、あ」
 彼の指が動くたびに、あえかな声が寝室に響く。
 そこだけでも、真白を高みに送ることはできる。だが、孝一は、巧妙に力を加減した――達する一歩手前を保つように。

「や、ね、コウ、コウ、おねがい」
 すすり泣きの混じった声でそう乞いながら、真白が両手を彼に向けて伸ばしてくる。それは孝一の動きを邪魔しようというものではなく、彼を求めてのものだった。

(今、こいつは、俺を欲しがってる)
 その感触に、ぞくぞくと背中に快感が走る。ただでさえ昂ぶっていた彼の怒張が更に張り詰めてジンジンと欲求を主張してくる。
 孝一は伸び上がって彼女のその手を取り、指先に口付けた。
「ごめんな」
 ギリギリまで導いていた真白に一線を越させるのは簡単な事だった。
 彼女の内襞をこすり上げる力を増し、紅く熟れた花芯を尖らせた舌先で突き、転がす。
 ほんの少し、それを加えただけ。
 それだけで、真白の息が速く浅くなり、四肢を突っ張らせる。次いで内腿がガクガクと痙攣し始めた。

「ふ、ぁ、あ、あ、ん! んん――ッ!」
 途中で閉ざされた唇の奥に押し込められた、嬌声。不意にそれが止むと、糸が切れたように真白はふつりと脱力する。散々お預けを食わされた末に与えられた快感は強烈に真白を翻弄し、なかなか引ききらないようだった。
 時折真白の全身には細かな震えが走る。達すると同時にきつく収斂した内壁は、彼の指を甘噛みするようにヒクン、ヒクンとうごめいていた。
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