ハンバーガー

久手堅悠作

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ハンバーガー

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 アメリカに行けば、何かが変わると思っていた。しかし、自分から踏み出さない限りは何も変わらない。

 今日のカフェテリアはいつもより空いていた。多分、4年生が休みだからだろう。日本の高校の頃と同じように一人でお昼を食べようとしていると、女の子が僕の目の前にトレイを置いて僕に目配せした。真っ黒な髪を顎下で切り揃え、目は明るい茶色で日本人にしては彫りが深い。何語で話しかけようか悩んでいると、彼女が僕に声を掛けた。

「今、何語で話しかけようか迷ったてでしょ?」

「日本人なの?」

「そうだけど純血じゃないよ。お父さんがアメリカ人なの」

「へ~」

「一緒に食べてもいい?」

「いいよ」

 彼女は僕の目の前に座った。白いトレイには、ピザとハンバーガー、ポテト、牛乳が置かれている。彼女がハンバーガーを食べ始めた。あまりに美味しそうに食べるものだから、その姿をじっと眺めていると彼女が僕が何も食べていないことに気がついた。

「食べないの?」

「いや、ハンバーガー美味しそうだなぁと思って」

「買ってきたら?」

「ホストマザーに知られたら怒られるんだよ。ほら、ランチって学生証でしか買えないじゃん。うちのとこ、ヴィーガンみたいな食事しかしないから」

「今日のお昼は何渡されたの?」

 僕は茶色の紙袋から3つりんごを取り出した。

「りんご3つだけ?」

「うん」

「ここ田舎だから近くにマクドナルドもバーガーキングないもんね。良かったら私のハンバーガー、一口食べる?」

 彼女はそう言うと、ハンバーガーの自分の齧ってない方を僕に向けて差し出した。たったそれだけのことなのに、この瞬間僕は恋に落ちてしまった。

「……好き」

「急にどうしたの? そんなにハンバーガー好きだったの? それなら、食べかけじゃなくて新しいの買って来てあげよっか?」と彼女は言いながら、不思議そうに首を傾げて微かに笑った。
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