スパイごっこ

久手堅悠作

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スパイごっこ

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男「日曜、暇なら遊びに行かない?」

女「あー、その日は〇〇教の集まりがあるから無理」

男「〇〇教!? あんな過激な宗教に入れ込んでるの?」

女「そうじゃないよ。私、コナンの安室さんが好きで公安に入ってスパイになりたかったんだけど頭悪くて入れなかったんだ。でも前に、公安の監視対象の宗教や政党に入れば公安の人が接触してくれるって聞いて入っただけ」

男「で、接触出来た?」

女「出来てな~い。だから、個人的に公益通報してるだけ」

男「なんて通報したの?」

女「教祖と上層部が密輸した武器で国会議事堂を占拠するって計画立ててたから通報したの」

男「なんで君はそのこと知ってるの? そんなに長い間潜入してるの?」

女「私は入ってまだ5年だよ。あと、最近はネットでもスパイグッズ売ってるんだよ。ほら、これボールペン型の盗聴器。会議室の清掃時にこれをこっそり置いて、会議が終わったらその次の清掃時に回収するの。そうすれば、会議の内容の盗聴なんて簡単だよ。でも、ネットで売ってるのをそのまま使うとバレそうだから1回分解して、普通のボールペンにパーツ組み込んでるんだ~」

男「本当だったらやってることめちゃくちゃスパイじゃん」





「ニュースをお伝えします。今日未明、公安が〇〇教本部に家宅捜査に入りました。公安によりますと、〇〇教は密輸した武器で国会議事堂を占拠する計画を立てていたと見られます」





男「うわぁ。マジだったんだ。……じゃあ、僕はこれで」

女「ちょっと待って! 鈴木くん、今寝返っておけば逮捕するのは見逃してあげるよ? ……鈴木くんじゃなくて、上層部の佐藤さんって言った方がいいですかね?」

男「バレてたか。まさか、一般人の公益通報なんぞで公安が動くとは思わなかったよ」

女「そりゃ、私は一般人ではなく本物の公安のスパイですからね」

男「なぜ俺の正体がわかった?」

女「顔が20代なのに声が老けすぎてますもん。その特殊マスクはやめておいた方がいいですよ。確かに精巧に出来てるけど、佐藤さんの声が老けすぎてて違和感しかないです。あと、あなたの右手のほくろと歩き方、あなたが思ってる以上に特徴的です。マスクを付けたらと言って別人に成り代われるとは思わない方がいいですよ」

男「……そうか」

女「ちなみに、私に近づいたのはどうしてですか? あなたみたいな一般人にスパイだとバレるようなことをした覚えはないんですけど?」

男「どんなに演じていても、教祖様は信仰心のない人間は一目で見てわかるんだよ」 

女「で、その教祖様は今どこにいるんですか? 家宅捜査しても見つからなかったみたいでしてね、こちらも手荒な真似はしたくないんですよ」
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