異世界行って黒ネコに変身してしまった私の話。

しろっくま

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魔術師団編

34の1.そりゃ荒れるわ!

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 レイニーさんが私の肩に手を当てたまま、また一歩私ににじり寄ってきた。

「あなた……」

 と、面と向かって言われ、これ以上ない危機感からまずは謝るのが一番と考え、ソッコーで謝罪をした。

「ごめんなさいっ、悪気はなかったんです。私、基本ネコで生活していますし、同居は不可抗力ですからっ。安心してください、決して恋愛とかに発展するようなことはありませんっ!」

 ギュッと目を瞑って一気に喋り切ってから、恐る恐る目を開けてみた。

 レイニーさんは目をまん丸にしながら少し固まっていた。次の瞬間、爆笑、と言わんばかりに豪快に笑いだし、私をギュッと抱きしめながらこう言った。

「いいわぁ、あなた最高よ。師団長が手元に置くくらいだから、どれだけ完璧な女性かと思ってたけど……ククク。あなたのその元気さが新鮮だわぁ」

 背中をバンバン叩かれて軽くむせながら、為すがままに身を任せる。

 笑いの波が去ったレイニーさんは、目尻の涙をぬぐいながら大きく息を吸って呼吸を整えた。

「あなた、師団長のとこより私のところで生活しない?   あーんなつまらない男と同居よりも余程楽しいと思うわよ。私の部下もほぼ毎日いるし。女性ならではの不安はあなたもあるでしょう?」

 それに、と言葉を繋いだ後に艶っぽい視線を感じ、ぞわりとした、表現し難い気分に襲われる。
 なんだ?   この人、さっきから獲物を狙う猛禽類のような目つきをする。すごく居心地が悪いんだけど……

 顔を引きつらせながらレイニーさんの申し出にどう対応したらいいか迷っていると、視界の端にルディとさっき一緒にいたコワモテのミラーズ隊長を捉えた。

 助けて、と目で訴えて向こうを見ると、彼らも了解したと言わんばかりにこちらに近づいてきてくれた。

「姐さん、ソイツは姐さんの遊びに付き合うには免疫無さすぎ。ただイキがいいってだけだから」

 最初に止めに入ってくれたのは、意外にもルディだった。

 ルディは横から入ってきて、私に迫ってきている彼女の手をやんわり掴み、解放してくれる。

「……レイニーちゃん、遊ぶならレイニーちゃんの取り巻きだけで遊んでよ。新しい子が入ると、それはそれで僕たちが被害を受けるんだからね」

 少しビクビクした感じの声を発しているのは、もう一人の隊長……ミラーズ様だった。
 顔と体はイカついのに、この口調と物腰。
 おどおどとして、話しかけるのもルディを盾にして後ろから顔を出している。

 あまりのギャップに唖然としていると、レイニーさんは怒りを露わにして二人に向き直った。

「アンタらが頼りないからでしょう。ミラーズ、アンタは任務以外の時のそのおどおどした動きや口調、直しなさいって言ったでしょうが。アイツはアイツであんなだし」

 不満そうにブツブツとレイニーさんとミラーズ隊長が話している側で、ルディを呼び寄せてから問いただした。

「ねえ、レイニーさんは何で怒ってんの?   ミラーズさんも、見た目と違ってずいぶんと控えめな様子なんだけど」
「んー、ウチの隊長クラスって結構面倒くさい人たちが多くてさ」
  
 コホンと小さく咳払いをした後、言い合っている二人に背を向けて説明してくれた。

 第二部隊長のミラーズさんは、第三部隊長のレイニーさんが言っている通り、任務以外ではからきし意気地がないらしい。街のおばちゃんや子供同士のいざこざにも対応できないので、常に部下と一緒に行動しているという。

 結果、何人も部下を従えて市内巡回しているのだが、遠目に見る分には実にたくましい、街を任せるならこの人たちだ、と市民からも信頼を得ている、という話しだ。

 当初の目的とは違う意図にはなっているが、街の治安維持のためにも役立っているということで、その巡回スタイルが定着しているのだそうだ。

 ハハハ、内側から見れば情けないのに外側から見れば、高い評価をされてるのにカチンときてるワケか。なるほど、そりゃムカつくよね。
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