異世界行って黒ネコに変身してしまった私の話。

しろっくま

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魔術師団編

50の2.可愛いくなーいっ!

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 ただ、なんというか、テンポのいい曲だと浮きまくるのは確定だよね。ならゆったりとした……演歌?
 いやいや、コブシ回してどうするねん。
 ここは一発オペラ……なんて知らんがな。

 ハッ……ボケてる場合じゃなかった。子守唄か?   でもあんまり知らんしなぁ。ねんねんコロリよ……のあとなんだ?   ダメだこりゃ。
 しゃぁない、沙羅ちゃんチョイス、気合い入りまくりメドレーでいくか。

 頭に浮かんだ、適当に落ち着いた感じの曲を何曲かピックアップして、脳内カラオケのBGMで軽く歌い始めた。

 最初に歌いだしたのは、かなり歌いやすくてお気に入りの曲だったんだけど、この場の雰囲気には合わないと考えて一曲で終わりにした。やっぱ童謡とかを何曲かチョイスしてみよう。教科書にも載ってたヤツだから万人受けはするだろ。

 記憶を辿りながら歌い進めると、これがなかなか子守唄っぽくていい感じだ。
 もう歌い疲れてきたなと思った頃には、彼はスヤスヤと穏やかな眠りの中にいってしまった後だった。

 掴まれていた手を外し、上を向いて天井を眺める。もう一度童謡を口ずさむと、なぜか薄っすらと涙が出てきた。

 この童謡を歌っていた頃の無邪気な自分を思い出し、二度と帰れない故郷を思いつつ。
 感慨に浸りながら私も彼の後を追い、眠りの淵に手をかけて心地よい気分に身を任せた。

「おい、起きろ。沙羅、起きなさい」

 ユサユサと揺さぶられ、大きな伸びをしながら目を覚ました。

「会議がある。既に皆集まっているだろう。いつもならばコークスが迎えに来るのだが……どうしたことか」

 声に少し不機嫌そうな響きはあるが、さっきのような、張りのない弱々しいのとは違うトーンに安心を覚えた。

 よかった。いつものこの人に戻ってる。一時はどうなるかと心配したけど、もう大丈夫かな。
 私が自然と笑顔になってるのに気づいたラッセルは、頭をポンとひと撫でしてきた。

「心配かけたようだ。今朝方のことは……その……忘れてくれ」

 なるべく目線を合わせないように喋っているのは、照れのせいなのか、そんな態度まで新鮮に見えて笑ってしまう。

 そんな私の態度に対してなのか、両の頬をムニュっと捻られた。

「だーい、だーいって。ふぁなひれ」

 これ以上つねられないように、二、三歩後ずさりしながらキッとにらみ返せて文句を言った。

「何すんのよっ。それが親切にしてあげた人に対する態度かしらっ?」
「感謝は述べた。にもかかわらず、君が笑っているのが悪い」

 あん?   なんだその論理は?
 そこまで無理やりな言い訳しなくたっていいでしょうにっ!
 全く素直じゃないんだから。

「信っじられないっ。だいたい私の美声に酔いしれてぐっすりと寝込んだ人はどこのドイツよ!」
「あれは気を失っただけだ。君の声に反応してな」

 こんのぉぉっ!
 ああ言えばこう言うし。本っ当に可愛くないわっ。
 どう言い返そうか、プンプン怒りながら考えていると、私も会議に出るよう促された。

 はて、魔術師団の会議が私に関係あるんかいな?   意味が分からずに不可解な顔をしてたようで、ラッセルが説明してくれた。

「君の今後にも関わる話し合いだ。聞いておくべきだろう」

 私の今後だと?   ああ、ハルの補佐がどうのって話しだったもんね。最終的にハルに面倒みてもらうつもりだから、行き先くらいは知っておきたい。

 二つ返事で応じて、早速身支度を整えることにした。

 最後の点検で鏡に自分を写して変じゃないか確認している時だ。ヤツがまたさっきの話しを蒸し返してきた。

「先ほど君は自分の声は美しいと表現したな。あれは少し違うと思うぞ」

 せっかく身支度で半分忘れていたのに、またムカムカと腹が立って口がとんがってくる。
 会議室までの廊下を歩きながら、腕組みをして忌々しげに前を行くふざけた野郎の頭に向かって毒づいた。

「何よっ。そこまで否定することないじゃない。ホント乙女心わかってないわよねっ」

 ちょうど会議室に辿り着いたので、扉の前で二人とも足を止めた。私だけ大声でわめいてもしょうがないと思ったのだが、なかなか収まりがつかない。もう少し言ってやろうかと息を吸い込んで構える。
 そんな私に対して、ラッセルがドアノブに手をかけて振り返りながら一言。

「君の声は美しいというよりも愛らしい声だったと感じたが?」
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