異世界行って黒ネコに変身してしまった私の話。

しろっくま

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王宮編

77の2.チェーンジッ!

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 最初は休憩までの短時間、約三十分くらいかなと思える時間から始めてみた。

 魔術練習と言ってしまった手前、ハルには一応会いに行くつもりけどさ、一番最後でいいよね。だって、あれだけ傷つけといて、今さらどんな顔して会えばいいんだろう……
 気不味きまずい雰囲気になるのは予測されている。今は考えず、の先送りを決め込もう。

 まずは潜入の練習だわ。違和感なく溶け込めるように、少しずつ周りに馴染んでいって、侍女さんたちからも情報収集できるように抜かりなく頑張らなくっちゃ!


    ※ ※ ※ ※ ※ ※


「こんにちは、今日はもう上がりなの?」

 背後から声をかけられ、振り向いてみると最近仲良くなった二人の侍女さんがいた。

 彼女たちは、元々サモナール男爵令嬢の部屋で働いていた人たちだ。令嬢が亡くなってからはエラン伯爵令嬢の部屋やハルの部屋など、人手が足りない部屋にヘルプで付いている状態らしい。いずれは専属の部屋を割り振られるだろうが、今は新人と同じく、持ちまわりで各部屋を回っているのだそうだ。

 私も新人侍女ということにして、いろいろな部屋にヘルプに行っている、という設定にしている。
 ヘルプの人間だとわかればガードもゆるく、気さくに情報を流してくれるだろうからね。専属侍女の場合、貴族の派閥やら何やらでウカツなことは喋られない決まりになっているんだって。なるほど、あげ足を取られないように、侍女連中まで警戒の根回しをしてるワケだね。

「お疲れさま。私は一旦休憩なの。あなたたちは?   今日はどこのお部屋だったの?」
「私らも休憩。えっと、私はエラン伯爵令嬢で彼女はユーグレイ公のところだったわ。次はどこかしらね。あなたは?」

 何気なく聞いたところに『ユーグレイ公』というキーワードを聞いて、ドキッと心臓が跳ねる。動揺を顔に出さないように笑顔を張り付けて、会話を進めた。

「私はリンスター子爵令嬢のお部屋よ。最近多いの。ところでユーグレイ公のお部屋ってどんな感じなの?」

 自分の部屋だけど、そこに通ってるって話しにしとけば、仮に探りを入れられてもある程度は躱せるからさ。ついでにラッセルが侍女さんたちにどんな対応してるのか知りたくなって、軽く探りを入れてみた。気になっちゃうのは……しょうがないよね?

「あら、あなたも興味あるのね?   でもねぇ、どんな感じも何も……」

 なんだか浮かない表情をしている侍女さんに、どうしたことかと尋ねてみた。
 それによると、彼の部屋はまるで生活感がないのだそうだ。というか、彼自身に会うことが滅多になりらしい。書類や資料は山ほど積んであるが、人の動きがないため、チリボコリひとつみかけないという。ほぼほぼ仕事がないことから、その侍女さんいわく『お世話のし甲斐がない』方なのだそうだ。

 まあそうなるよね。あの人の生活拠点は別の場所にあるし、ラッセルの性格からして、自分のパーソナルスペースに人を入れたくないんだろな、と想像もついたりして、ちょっと笑ってしまった。

 エラン伯爵令嬢の方は相変わらずで、ご令嬢とのお茶会や噂話しに余念がないそうだ。最近は結婚相手の対象をハルからラッセルにまで手を拡げたらしく、お友達や侍女たちから情報を集めまくっているらしい。
 あのお嬢様も逞しいわね。そのくらいのバイタリティがないと貴族社会は渡っていけないのかしらね。

「ところで」

 一旦言葉を切ってから、三人で屈むようにして周りに気づかれないように小声で話しを続けた。

「サモナールのお嬢様の件、何か進展はあった?」
「えっとね、前にどっかの魔術師集団の一人と一緒にお亡くなりになった話しはしたよね?」

 そう言った侍女さんは、もう一人と目配せすると、お互いに何かを決心したような目つきになり、私に顔を向ける。
 そんな決死の表情を見た私は、コクコク頷きながら次の言葉を待った。

「ウチのお嬢様、実は亡くなる少し前に、エラン伯爵のお部屋であの魔術師に初めて会ったらしいの。で、お互いが一目惚れだったらしく、結婚のお約束までしちゃってたらしいのよ」
「ええっ!」
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