異世界行って黒ネコに変身してしまった私の話。

しろっくま

文字の大きさ
163 / 249
王宮編

82の2.いいじゃん!

しおりを挟む
 ち、近、い……しかも、目が、目が恐いぃ。
 恐怖から逃れようとする為か、少しでも距離を取ろうと、仰け反りながらプルプルと首を横に振る。

 答えを聞いたラッセルは、しばらく私を見つめていたあと、はあっと大きなため息を吐いた。それからグイッと私を自分の腕の中に抱き入れ、まるで時間が止まったかのように、しばらくそのまま動かなかった。

「あ、あのー……バレてますよねぇ……たぶん」

 もしかしたらバレてないかも。そんな考えもチラッとよぎり、上目遣いで覗きみると、更に眉をひそめてギッと睨まれた。

 ひえ……マジギレしてるしぃ……

「君が部屋に入ってきた段階で把握していた。使い魔の魔力が感じとれるからな。しかし、敵のターゲットは君なのだぞ?   なぜ部屋から出ている。これでは狙ってくださいと言っているようなものだ」
「わかってるわ。ハルにも言われたもの。でももう無理。限界なのよ!」

 こっちだって充分我慢したんだ。
 毎日毎日、やることといったら身支度と少しの勉強。繰り返し練習し、既に飽きているダンスの足さばき。
 暇つぶしなら読書か刺繍?   たまに引き出しを開けると、もらった万華鏡もあるけれど、それだって何時間も見れるワケじゃない。もうヤダよ……

 なのになんで責めるの?   私以外の人たちは、仕事とはいえどっかに出歩いて、何だかんだ言いながらも違う空気を吸えている。なのになんで私だけ……私だけ……

 そう思っていたらどんどん自分が可哀想になってきて涙が溢れてくる。頭のどこかでカチリとスイッチが入るような気分に切り替わる。

「わ、私は。ア、アンタに会ってる時が……会えることが唯一の楽しみだったのに。たまに二人で会える日に食事して話せば、変わり映えのない平坦な毎日だっていくらでも我慢していられたのに」

 言いつけを破ったのは私なのに、都合の悪さを隠すためにわめき散らし、誤魔化しているのはわかっているのだ。ただ、口に出してしまった言葉に酔いしれてしまってる今、自分のしてることに歯止めが効かない。哀しみのヒロインを気取っている表面上の私は、ここぞとばかりに弱い女を前面に出してラッセルに食ってかかった。

「なのに、私がどんなに時間を合わせようとしても、アンタは私に会ってくれなくなった。避けられ始めたのならしょうがないって諦めるわ!   その気持ちを消化するために、部屋から抜け出て何が悪いのよ!」

 放って置かれたのは寂しいとは思ってたけど。
 これじゃあ逆ギレしてヒステリックに叫んでるアホ女やないかい。

 そんなことを思いつつも、不満が口をついて出てきたら、もう止まらない。湧き出るように哀しみが漏れてきて、悔し涙が溢れ出す。

「こんなこと言うつもりなんてなかった……ずっと我慢してればよかったのかもしれないけど。私はただ単に自由が欲しかっただけ。行動を制限されるなんて、ストレス以外の何ものでもないわ。こんな牢獄みたいな王宮に住むこと自体、間違いだったのよ」

 私は深く息を吸い込んで、低く押し殺すような声で呟いた。

「私は、日本にいた頃のような、つまらない人生は送りたくない。戻れないってわかった段階で、人生楽しむことに決めたからね。ここにいても意味ないと感じたら、すぐにでも出ていくわ」

 キッチリとした私の宣言に、ラッセルは何とも言えない表情で返してくる。

「私も悪かった。機嫌を直してくれ。君には良い知らせを持って行きたかったから、結果が出ないうちは会いに行く勇気がなかった。その間に君がそんなに寂しがっているとは想定外だった。これは私の失敗だ、申し訳ない」

 素直に謝まられると、逆ギレしていた自分がなんだか情け無くなってきて、怒りも哀しみもゆっくりと引いてくる。やがて涙も止まり、時おり私がしゃくりあげる音だけが部屋の中に響いている。

「落ち着いたか?」

 俯いたままコクリと頷き、自分の腕を突っ張って、ラッセルが囲う腕の中から離れる。

「いい知らせって何?   それがうまくいかなかったの?」

 私の問いに無言で頷くも、あまり覇気のない笑顔でためらいがちに口を開いた。

「君にとって、というより、私にとって、という意味合いだったのだが……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

処理中です...