異世界行って黒ネコに変身してしまった私の話。

しろっくま

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王宮編

84の2.モーソー!

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「隠れて遊んでたら、先輩に見つかってぇ……ちょっとした出来心ですからぁ。ごめんなさい」
「へえ、アンタも意外とやるじゃない。手先が器用なんて初めて知ったわ」

 ハムスターと彼女の作品を交互に見比べながら感心して呟いた。

「綺麗な糸がいっぱいあったから……勝手な行動してごめんなさい。クビは困るんです、罰は受けますから」

 おどおどした物言いは、最初に会った時のように、辞めさせられるかも、といった不安を滲ませる声を含んでいた。

「何をそんなにビクビクしてんの。ホントあんたってば小動物系よね。そんな小さな事でアンタがクビなら、忍者ごっこしてた私は今頃切腹させられてるわよ」
「せっ……はい?」

 切腹が通じなかったのか、ハムスターちゃんはキョトンとしたまま固まっている。

「ああ、なんでもないわ。でも、自分が『したい』って思ったことなんでしょ?   とことんまでやってみな。アンタ普段は自分から何かするのってサボることくらいじゃない。好きなものは好き、やりたいことは全力でやってみよう。応援するよ?」
「でも、お仕事じゃないです。お仕事じゃないことはやっちゃいけないって」

 しょんぼりとした表情で話しているのをみていると、この子に何かしてやらなければ、という決意みたいな気持ちが湧き上がる。

「誰が言った?   仕事じゃなくても仕事になれる仕事を探すのがアンタの仕事よ。それを見つけたんだから、これから刺繍入りの作品を作るのもアンタの仕事。ただし今までの仕事は疎かにしない。わかった?」

 言われたハムスターちゃんは、目を輝かせて何度も頷く。先ほどまでの、オドオドして人の顔いろを伺っていた子とは別人みたいな表情になり、嬉しそうにパタパタと奥の部屋へと消えていく。

「あの子もやっと人間らしい顔つきになったみたいですね。今まではどこか人形めいた虚ろな表情が多かったんですけど。寛大なご処置、ありがとうございます」
「いやいや、せっかくだからあなたも何かやりたいこと探してみたら?   応援するよ」

 ニッコリ笑顔の彼女から、今の仕事で十分だと言われ、この話しは終わりにした。

 明日のランチでラッセルに今日の話しをしてあげよう。
 そうだ、ハムスターちゃんの作品をフリマみたく展示販売するのはどうかな。

 ちょっと手の込んだ高級感溢れる作品は貴族のお嬢様に。小さな小物関係は侍女さんたちのために。

 最初はワゴンに何個か載せて、侍女さんの控え室とかに持っていけばいいよね。ある程度顔見知りになった子たちから、口コミで拡散してもらえるし。

 次は私がお呼ばれするお茶会で何個か販売することにしようか。プライドの高い貴族を満足させるものねぇ、手鏡カバーの可愛いヤツとかさ。

 何個も持ってるとステータス上がるとか言っちゃう?
 何とかシリーズみたいなヤツとかで、コレクター魂に火をつけるとかもアリよね。

 ハムスターちゃん印ってことでロゴか何かを入れれば、ブランド化だって夢じゃない。
 ちなみに私は販売元としてルートを王宮だけじゃなく拡げていくのもアリでしょ!

 地方の保養地なんかに分店したりしてさ。一躍富豪や豪商の仲間入りじゃん?
 私ってば、ハムスターちゃん印の刺繍で大当たり?

 うっきゃーっ!   夢は拡がるじゃないのよお。
 アラブの大富豪的な儲けになったらどんな遊びするかなぁ。
 ハーレム作ってウハウハ人生?   はべらすオトコはみなイケメンじゃあっ!
 はたまた、純金の湯船でバラの香りに包まれる?   かしずく美女に囲まれてぇ、おい、そこの姉ちゃん、パイがデカいんでないかい、うっひっひ。
 それともそれとも……

 いきなり、脳天に『ゴスっ』という音が響き、衝撃で現実世界に引き戻された。

「っだーーいいっ。アニすんだあーーっ!」
「何、キモい顔してんだよっ。目がイッてるし。あとそれな、ヨダレ、拭け。オマエはホントに女子かっ」

 ニタニタ笑いをしながら最大限まで妄想を膨らませていたらしい。日本じゃ寂しい地味子だったからな。反動がすごいんじゃい。

 たまたま戻ってきたルディに一発食らって本日の夢の時間は終了した。
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