190 / 249
王宮編
96の1.ウソでしょ!
しおりを挟む
王宮の入り口付近は、びっくりするくらいの人数でごった返していた。本当にこの人数が王宮の中で生活しているのかしら? ちょっとしたイベント会場並みなんですけど。
ラッシュ時の駅構内を歩くように人の間を縫って、なんとか一行が見られる場所まで辿り着いた。
「それにしてもすごい人だよね。みんなの顔もなんか期待してるっぽい表情ばっかりだし。アンドリュー王子ってそんなに人気者だったの?」
「ああ、将来この国を背負って立つ人だからな。面倒見がよくて優しいんだ。貴族を上手く捌く力もあったらしいよ? 俺は政務に携わってる兄上を見たことがなかったからな。話しだけなんだけど」
ハルの表情は周りの人たちと同じで、期待を込めたような目がキラキラと輝いている。よっぽど好きなんだろうな、お兄さんのこと。
「曲がったことが大嫌いでさ、常に正直な人なんだ。なのに生真面目ってわけでもなくてさ、お茶目なところもあったりするし」
「ずっごく出来たお兄さんなのね……」
「うん、だから今回の病気だって、俺が事故起こして……兄上に負担とか迷惑とか、いっぱいかけちゃったからだと思うんだ」
少ししょんぼりして俯いて話す様子は、自分が事故にあったことを後悔しているように感じる。ハル本人は何も悪くないのに。ただ、たまたま運悪く、事故で落馬して昏睡になっただけだ。不可抗力以外の何者でもないではないか。それに、奇跡的に目覚めたのだ。素直に喜んでいいことだと思う。
私は元気づけるために背中をバンと叩いて、明るい声で励ましの言葉をかけた。
「ハルは事故から復活して、もう一度お兄さんに会えることに感謝してればいいのよ。仲の良いところを国民に見せることが、安心と安泰を抱かせると思うわよ?」
「そうか? そう言うもんなのかな。兄上に会うの……なんだかドキドキしてきたよ……」
後悔の表情は瞬く間に消え、お兄さんに会える喜びでいっぱいな顔をし始めた。私もそれを肯定するようにコクリと頷いて、入り口の方へと視線を向けた。
「あ、見えた。戻ってきたぞーっ、王太子だー、アンドリュー殿下ーっ!」
「お帰りなさーい、元気になられて良かったー!」
入り口近くの人々が、口々に歓待の声をあげ、王太子の復帰に華を添える。
周りの人の熱気が一段膨れ上がり、私とハルは体ごと後ろに追いやられた。怪我をしないように、自分をガードしながらハルを見た。
ハルは、半開きに口を開け、視線だけは王太子一行の方へと釘づけにして、揉みくちゃにされるがままになっている。まるで夢でも見てるような表情だ。
つまづきでもしたら危ない。注意して、現実に引き戻さないと。
「ハル、危ないから。それに、アンタのお兄さんなんでしょ? 近くに行って声をかけてあげなよ?」
私たちがそんなやり取りをしている間も、王太子一行はゆっくりと馬から降りて、出迎えてくれた皆さんに手を振って挨拶しているようだ。
そうして、同じように出迎えていた王様の前まで来ると、膝まづいて復帰の挨拶をした。
「父上、ただ今戻りました。長期の療養で不在にし、ご迷惑をおかけしました。これからは父上をお助けするべく、政務の補佐を務めます」
王様が頷くのと同時にまた歓声があがり、人々の喜びようが伝わってきた。
私が呆然としているハルの頬をペチペチと軽く叩くと、彼はハッと正気を取り戻し、徐々に私の顔に視点を合わせてくる。
「ああ、ごめん。緊張しすぎて頭がどっかに飛んだ。そうだな、兄上に俺の元気な姿も見せたいし。ちょっと行ってくる」
そう言って、私の手を引いて再び人の波を掻いくぐりながら一番前に陣取った。
「サーラはどうする? 一緒に挨拶するか?」
「ううん、ハルだけ行ってきて、そこは家族の場だよ?」
トンと背中を押して、ハルをその先の、王様と王太子の側へと送り出した。
ラッシュ時の駅構内を歩くように人の間を縫って、なんとか一行が見られる場所まで辿り着いた。
「それにしてもすごい人だよね。みんなの顔もなんか期待してるっぽい表情ばっかりだし。アンドリュー王子ってそんなに人気者だったの?」
「ああ、将来この国を背負って立つ人だからな。面倒見がよくて優しいんだ。貴族を上手く捌く力もあったらしいよ? 俺は政務に携わってる兄上を見たことがなかったからな。話しだけなんだけど」
ハルの表情は周りの人たちと同じで、期待を込めたような目がキラキラと輝いている。よっぽど好きなんだろうな、お兄さんのこと。
「曲がったことが大嫌いでさ、常に正直な人なんだ。なのに生真面目ってわけでもなくてさ、お茶目なところもあったりするし」
「ずっごく出来たお兄さんなのね……」
「うん、だから今回の病気だって、俺が事故起こして……兄上に負担とか迷惑とか、いっぱいかけちゃったからだと思うんだ」
少ししょんぼりして俯いて話す様子は、自分が事故にあったことを後悔しているように感じる。ハル本人は何も悪くないのに。ただ、たまたま運悪く、事故で落馬して昏睡になっただけだ。不可抗力以外の何者でもないではないか。それに、奇跡的に目覚めたのだ。素直に喜んでいいことだと思う。
私は元気づけるために背中をバンと叩いて、明るい声で励ましの言葉をかけた。
「ハルは事故から復活して、もう一度お兄さんに会えることに感謝してればいいのよ。仲の良いところを国民に見せることが、安心と安泰を抱かせると思うわよ?」
「そうか? そう言うもんなのかな。兄上に会うの……なんだかドキドキしてきたよ……」
後悔の表情は瞬く間に消え、お兄さんに会える喜びでいっぱいな顔をし始めた。私もそれを肯定するようにコクリと頷いて、入り口の方へと視線を向けた。
「あ、見えた。戻ってきたぞーっ、王太子だー、アンドリュー殿下ーっ!」
「お帰りなさーい、元気になられて良かったー!」
入り口近くの人々が、口々に歓待の声をあげ、王太子の復帰に華を添える。
周りの人の熱気が一段膨れ上がり、私とハルは体ごと後ろに追いやられた。怪我をしないように、自分をガードしながらハルを見た。
ハルは、半開きに口を開け、視線だけは王太子一行の方へと釘づけにして、揉みくちゃにされるがままになっている。まるで夢でも見てるような表情だ。
つまづきでもしたら危ない。注意して、現実に引き戻さないと。
「ハル、危ないから。それに、アンタのお兄さんなんでしょ? 近くに行って声をかけてあげなよ?」
私たちがそんなやり取りをしている間も、王太子一行はゆっくりと馬から降りて、出迎えてくれた皆さんに手を振って挨拶しているようだ。
そうして、同じように出迎えていた王様の前まで来ると、膝まづいて復帰の挨拶をした。
「父上、ただ今戻りました。長期の療養で不在にし、ご迷惑をおかけしました。これからは父上をお助けするべく、政務の補佐を務めます」
王様が頷くのと同時にまた歓声があがり、人々の喜びようが伝わってきた。
私が呆然としているハルの頬をペチペチと軽く叩くと、彼はハッと正気を取り戻し、徐々に私の顔に視点を合わせてくる。
「ああ、ごめん。緊張しすぎて頭がどっかに飛んだ。そうだな、兄上に俺の元気な姿も見せたいし。ちょっと行ってくる」
そう言って、私の手を引いて再び人の波を掻いくぐりながら一番前に陣取った。
「サーラはどうする? 一緒に挨拶するか?」
「ううん、ハルだけ行ってきて、そこは家族の場だよ?」
トンと背中を押して、ハルをその先の、王様と王太子の側へと送り出した。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる