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世界編
101の1.嵌められたっ!
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シンは世間話をするような口調で話した。
「僕と結婚して僕の子供を産んで」
ん? 僕の子? 産む?
いやいや、聞き間違いだったかな?
「サーラちゃん? 聞こえてる?」
「あ、ああ、ごめんなさい。なんか耳慣れない言葉が聞こえたみたいで。確認のためもう一回言ってくれる?」
一瞬ポカンとした表情になったシンは、クスクスと笑いながら瞬きをひとつして、もう一度私に向かって口を開いた。
「じゃあ、もう一度。よく聞いてくれる? 僕と結婚して僕の子供を産んで」
……うーん。聞き間違いではないようだ。
ただ、言葉を聞き取ることができただけで、頭が考えることを拒否している。頭も体も固まったまま全く動けない。
「サーラちゃん? 大事な約束だったよね。君が喋る言葉は何?」
「は……ぅええっ!」
なんてことだろう。
安請け合いしたさっきの簡単なやりとりが、まさかこんなところで自分の首を絞めるとは。
嵌められたっ。
巧みに話を進めながら、私と『約束』をして、必ず守らなければならない状況に追い込んできた。
ニコニコとした笑顔はさっきと変わらず、私に脅迫じみた雰囲気で迫ってくるでもなく、ただ笑っている。
さっきまでは人畜無害と思えたこの笑顔が、今は悪魔のほくそ笑みにしか思えない。
「お返事は?」
繋ぐ手をさらにキツく握られて、私に口を開くよう促してくる。
「は……い……」
「よし、いい子だ。素直な子は好きだよ。ここだとゆっくりできないから、君の部屋へ移動しようね」
「は? 私の部屋? そんな急に……まさか最初から……」
上機嫌になったシンは、私の言葉など完全無視の状況で、握った手をグイッと引き寄せると自らの懐に招き入れた。
「あっ……」
途端に周囲がグニャリとした感覚を覚え、軽く目を閉じた。再び目を開けると、先ほどとは全く違う場所に移動したのがわかった。
「……ここは?」
「うん、君専用の部屋だよ。何か不都合なことがあったら言ってね。すぐに改善するから」
不都合なこと? アリアリなんですけどっ!
親切で言っているのか、はたまたイヤミで言ってるのか。
「なら、お願いするのはひとつだけかしらね。アンタのものになるなんて、まっぴらだわっ! 私を元の場所に返してっ。今すぐにっ!」
噛み付くような勢いでシンに訴えると、彼は堪え切れない、とばかりに笑いだす。
「あははは。やっぱり言うと思った。サーラちゃんってばホント可愛いいね。僕が考えてるとおりの行動と言葉が返ってくる。ふふっ。なんて素直ないい子なんだろ……」
「お褒めにあずかり光栄ですわ。だから私の願いを聞いてくれるかしら?」
怒りに震える声を無理やり押さえつけながら、キツく睨んで訴える。怖がってみせたら負けだ。怯んだらツケ込まれるに決まってる。力負けして、なし崩しに体を弄ばれるのだけは勘弁だ。
「うーん。最終的には解放してあげられるけど、僕の希望を叶えてくれたらっていう交換条件かな?」
「……いい加減にしてっ。嫌なものは嫌よ」
どんなに凄んでも、シンが余裕の表情を崩すことはない。あまりの悔しさに、ヤツの顔を見ることも出来ず、俯いて歯噛みするしかない。
「そんな顔しないで? 君には似合わないな。時間が経てば気持ちも落ち着いてくると思うよ。今は納得できないだろうけど、考える時間ができてくると、自分の役割とか相手の立場が見えてくると思うから」
そう言って、私の髪を軽くすくい上げると、そのままその髪に軽くキスを落とし、ゆっくりと撫でてくる。
ラッセルとは違う撫で方なので違和感はあるが、シンはシンなりに、私を落ち着かせようとしてくれてるのがわかってしまい、邪険にすることもできなくなってしまった。
「そんなに悪い環境でもないと思うんだ。君的には不満かもしれないけど、暮らしてみるとだんだんと馴染んでくるかもよ?」
「そんなこと言っても……困る……」
嫌がらせや脅迫で無理やり従わせるような素振りがあるわけでもないので、完全な拒絶もできなくなってきている自分がいることに内心びっくりして、戸惑いの表情を隠せない。
「とりあえず座ってひと息入れようか。サーラちゃんが目覚めてから、ほとんど休んでいないものね」
そう言って私の手を取ると、綺麗な細工の施された調度品のひとつに座らせる。
どうしよう。このまま無理やり体を奪われてしまうんだろうか……
「僕と結婚して僕の子供を産んで」
ん? 僕の子? 産む?
いやいや、聞き間違いだったかな?
「サーラちゃん? 聞こえてる?」
「あ、ああ、ごめんなさい。なんか耳慣れない言葉が聞こえたみたいで。確認のためもう一回言ってくれる?」
一瞬ポカンとした表情になったシンは、クスクスと笑いながら瞬きをひとつして、もう一度私に向かって口を開いた。
「じゃあ、もう一度。よく聞いてくれる? 僕と結婚して僕の子供を産んで」
……うーん。聞き間違いではないようだ。
ただ、言葉を聞き取ることができただけで、頭が考えることを拒否している。頭も体も固まったまま全く動けない。
「サーラちゃん? 大事な約束だったよね。君が喋る言葉は何?」
「は……ぅええっ!」
なんてことだろう。
安請け合いしたさっきの簡単なやりとりが、まさかこんなところで自分の首を絞めるとは。
嵌められたっ。
巧みに話を進めながら、私と『約束』をして、必ず守らなければならない状況に追い込んできた。
ニコニコとした笑顔はさっきと変わらず、私に脅迫じみた雰囲気で迫ってくるでもなく、ただ笑っている。
さっきまでは人畜無害と思えたこの笑顔が、今は悪魔のほくそ笑みにしか思えない。
「お返事は?」
繋ぐ手をさらにキツく握られて、私に口を開くよう促してくる。
「は……い……」
「よし、いい子だ。素直な子は好きだよ。ここだとゆっくりできないから、君の部屋へ移動しようね」
「は? 私の部屋? そんな急に……まさか最初から……」
上機嫌になったシンは、私の言葉など完全無視の状況で、握った手をグイッと引き寄せると自らの懐に招き入れた。
「あっ……」
途端に周囲がグニャリとした感覚を覚え、軽く目を閉じた。再び目を開けると、先ほどとは全く違う場所に移動したのがわかった。
「……ここは?」
「うん、君専用の部屋だよ。何か不都合なことがあったら言ってね。すぐに改善するから」
不都合なこと? アリアリなんですけどっ!
親切で言っているのか、はたまたイヤミで言ってるのか。
「なら、お願いするのはひとつだけかしらね。アンタのものになるなんて、まっぴらだわっ! 私を元の場所に返してっ。今すぐにっ!」
噛み付くような勢いでシンに訴えると、彼は堪え切れない、とばかりに笑いだす。
「あははは。やっぱり言うと思った。サーラちゃんってばホント可愛いいね。僕が考えてるとおりの行動と言葉が返ってくる。ふふっ。なんて素直ないい子なんだろ……」
「お褒めにあずかり光栄ですわ。だから私の願いを聞いてくれるかしら?」
怒りに震える声を無理やり押さえつけながら、キツく睨んで訴える。怖がってみせたら負けだ。怯んだらツケ込まれるに決まってる。力負けして、なし崩しに体を弄ばれるのだけは勘弁だ。
「うーん。最終的には解放してあげられるけど、僕の希望を叶えてくれたらっていう交換条件かな?」
「……いい加減にしてっ。嫌なものは嫌よ」
どんなに凄んでも、シンが余裕の表情を崩すことはない。あまりの悔しさに、ヤツの顔を見ることも出来ず、俯いて歯噛みするしかない。
「そんな顔しないで? 君には似合わないな。時間が経てば気持ちも落ち着いてくると思うよ。今は納得できないだろうけど、考える時間ができてくると、自分の役割とか相手の立場が見えてくると思うから」
そう言って、私の髪を軽くすくい上げると、そのままその髪に軽くキスを落とし、ゆっくりと撫でてくる。
ラッセルとは違う撫で方なので違和感はあるが、シンはシンなりに、私を落ち着かせようとしてくれてるのがわかってしまい、邪険にすることもできなくなってしまった。
「そんなに悪い環境でもないと思うんだ。君的には不満かもしれないけど、暮らしてみるとだんだんと馴染んでくるかもよ?」
「そんなこと言っても……困る……」
嫌がらせや脅迫で無理やり従わせるような素振りがあるわけでもないので、完全な拒絶もできなくなってきている自分がいることに内心びっくりして、戸惑いの表情を隠せない。
「とりあえず座ってひと息入れようか。サーラちゃんが目覚めてから、ほとんど休んでいないものね」
そう言って私の手を取ると、綺麗な細工の施された調度品のひとつに座らせる。
どうしよう。このまま無理やり体を奪われてしまうんだろうか……
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