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世界編
101の2.嵌められたっ!
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小さな不安がどんどん膨らんで、緊張で体がガチガチに固まって、次第に呼吸が浅くなってくる。
そんな私を見たシンは、クスリと小さく笑いながら一歩だけ私に近づいて、ゆるく片手をあげる。
触られる……思わずギュッと目を瞑り、体全体に力が入った。
「ごゆっくり」
「へ?」
間抜けな声をだして、思わず目を開けると、反転して先ほどあげた手を振るシンが扉に向かっていくところだった。
彼が部屋からいなくなると、同時に数人の女性たちが入室してきて、私の世話を始めた。
女性たちは頭皮や腕のマッサージ、さらには脚をお湯につけ、もみほぐすように手入れをしてくれる。
状況が飲み込めないうちに、されるがままにそれを受け入れていたが、マッサージが進むにつれて、先ほどぐちゃぐちゃ考えていたことがどうでもいいことのように感じ始めてきた。
「はぅ……気持ちいい……」
完全にリラックスして、全身を彼女らに預ける。
ひと通り身繕いを済ませる頃、再びシンが部屋の中へ入ってきた。
「お嬢さん、気分はどうかな?」
「ええ、最高ね。イライラがだいぶ収まったわ」
直前まで感じていた危機感などどこ吹く風、といった感じで答える。
日本で生活している時には、こんな手厚いケアなど受けることがなかった。だから本当にこの至れり尽くせりのサービスには満足の笑みがこぼれる。
豪華な衣装に身を包み、指先まで丁寧に手入れされ終わった私に、シンは優雅にお茶を差し出してくれた。
お礼を言って喉を潤した私に向かって、今度は何も持っていない自分の手を差し出す。
「ん?」
意味がよくわからなかったが、上機嫌な私は、とりあえず差し出された手を条件反射的に取ってしまった。
「また移動するけど、そんなに負担はかけないよ」
「はぁ、そうなの」
シンが手を繋いだまま、反対側の手で私の肩を抱き寄せると、グニャリと視界が歪んだ。その直後、眩しい光が一気に目の中に飛び込んできた。
「うっ……ま、ぶし」
反射的に目を押さえようとするが、片手が塞がっているので顔を下に向ける。それと同時に目の前にシンの胸を感じた。
「ああ、向こうの部屋が薄暗かったからね。急に明るくなるとビックリしちゃうよね、ごめんね?」
顔を覆うように緩くシンの胸に押し付けられたが、それに抵抗するように拳ひとつ分、腕を突張って距離をとった。反射的に瞑っていた目を、眩しさを感じなくなってからゆっくりと開けると、シンの顔がドアップで迫っていた。
「のぁっ……ちょっ、ちか、ぃ」
「ん? 僕たち夫婦になるんだし、このくらいいいと思うけどな。あー、もしかして、みんなの前じゃ恥ずかしいか」
ん? みんなの前?
もうシンの言葉が突飛過ぎて宇宙人と会話してるみたいだわ……
ようやく目が慣れて辺りの様子が見えてくると、私たちの立っている場所は周りよりも少し高い場所に設置されている、舞台みたいなとこだった。
舞台の下には、貴族らしき連中がずらりと並び、その後ろには侍女や警備の人たちも大勢控えているようだ。
みんなってのはこの人たちってこと?
「何、この人たち」
ビックリしてシンにすがりついた。その行動が彼には満足できるものだったらしく、ゆっくりと丁寧に頭を撫でてくる。
「これが僕の世界だよ?」
「王よ、そちらは?」
イカつい声をしたおじさんがシンに話しかける。
「ん、僕のお嫁さんになる人だ。サーラ・リンスター嬢さ。みんなよろしくね」
ん? 王?
いったい今日は、何回頭にハテナマークをつけたんだろう。
またまた理解不能な言葉が飛び出している。もう頭がいっぱいいっぱいになって考える回転速度がずいぶん遅いので、聞いた言葉に反応できなくなっている。
「それはそれは。誠に喜ばしいことですな。おめでとうございます」
おじさんの声を合図に、周りの皆さんがより一層深く頭を下げている。
その眺めは圧巻で、自分が舞台の主人公にでもなった気分。
おじさんは私の方に顔を向けニッコリと笑う。
イカつい声とはかけ離れたように優しい目つきで、笑うと目尻のシワが思いのほか可愛いく映る。
そのおじさんが、ゆっくりと、そしてはっきりと喋りかけてくる。
「はじめまして、サーラ嬢。我らが王のこと、よろしく頼みましたぞ」
「はい? 誰が……王?」
なんとなく嫌な予感がして、恐る恐る斜め上を見上げると、シンが極上の笑顔で私を見つめてる。
「うん、僕。王様なんだ」
「はあぁ?」
繋いでいる手を一度離してから両手を広げ、彼らを背にした格好のままシンは私にこう言った。
「水の加護を受けし国『エンリィ』僕の国へようこそ、サーラちゃん」
そんな私を見たシンは、クスリと小さく笑いながら一歩だけ私に近づいて、ゆるく片手をあげる。
触られる……思わずギュッと目を瞑り、体全体に力が入った。
「ごゆっくり」
「へ?」
間抜けな声をだして、思わず目を開けると、反転して先ほどあげた手を振るシンが扉に向かっていくところだった。
彼が部屋からいなくなると、同時に数人の女性たちが入室してきて、私の世話を始めた。
女性たちは頭皮や腕のマッサージ、さらには脚をお湯につけ、もみほぐすように手入れをしてくれる。
状況が飲み込めないうちに、されるがままにそれを受け入れていたが、マッサージが進むにつれて、先ほどぐちゃぐちゃ考えていたことがどうでもいいことのように感じ始めてきた。
「はぅ……気持ちいい……」
完全にリラックスして、全身を彼女らに預ける。
ひと通り身繕いを済ませる頃、再びシンが部屋の中へ入ってきた。
「お嬢さん、気分はどうかな?」
「ええ、最高ね。イライラがだいぶ収まったわ」
直前まで感じていた危機感などどこ吹く風、といった感じで答える。
日本で生活している時には、こんな手厚いケアなど受けることがなかった。だから本当にこの至れり尽くせりのサービスには満足の笑みがこぼれる。
豪華な衣装に身を包み、指先まで丁寧に手入れされ終わった私に、シンは優雅にお茶を差し出してくれた。
お礼を言って喉を潤した私に向かって、今度は何も持っていない自分の手を差し出す。
「ん?」
意味がよくわからなかったが、上機嫌な私は、とりあえず差し出された手を条件反射的に取ってしまった。
「また移動するけど、そんなに負担はかけないよ」
「はぁ、そうなの」
シンが手を繋いだまま、反対側の手で私の肩を抱き寄せると、グニャリと視界が歪んだ。その直後、眩しい光が一気に目の中に飛び込んできた。
「うっ……ま、ぶし」
反射的に目を押さえようとするが、片手が塞がっているので顔を下に向ける。それと同時に目の前にシンの胸を感じた。
「ああ、向こうの部屋が薄暗かったからね。急に明るくなるとビックリしちゃうよね、ごめんね?」
顔を覆うように緩くシンの胸に押し付けられたが、それに抵抗するように拳ひとつ分、腕を突張って距離をとった。反射的に瞑っていた目を、眩しさを感じなくなってからゆっくりと開けると、シンの顔がドアップで迫っていた。
「のぁっ……ちょっ、ちか、ぃ」
「ん? 僕たち夫婦になるんだし、このくらいいいと思うけどな。あー、もしかして、みんなの前じゃ恥ずかしいか」
ん? みんなの前?
もうシンの言葉が突飛過ぎて宇宙人と会話してるみたいだわ……
ようやく目が慣れて辺りの様子が見えてくると、私たちの立っている場所は周りよりも少し高い場所に設置されている、舞台みたいなとこだった。
舞台の下には、貴族らしき連中がずらりと並び、その後ろには侍女や警備の人たちも大勢控えているようだ。
みんなってのはこの人たちってこと?
「何、この人たち」
ビックリしてシンにすがりついた。その行動が彼には満足できるものだったらしく、ゆっくりと丁寧に頭を撫でてくる。
「これが僕の世界だよ?」
「王よ、そちらは?」
イカつい声をしたおじさんがシンに話しかける。
「ん、僕のお嫁さんになる人だ。サーラ・リンスター嬢さ。みんなよろしくね」
ん? 王?
いったい今日は、何回頭にハテナマークをつけたんだろう。
またまた理解不能な言葉が飛び出している。もう頭がいっぱいいっぱいになって考える回転速度がずいぶん遅いので、聞いた言葉に反応できなくなっている。
「それはそれは。誠に喜ばしいことですな。おめでとうございます」
おじさんの声を合図に、周りの皆さんがより一層深く頭を下げている。
その眺めは圧巻で、自分が舞台の主人公にでもなった気分。
おじさんは私の方に顔を向けニッコリと笑う。
イカつい声とはかけ離れたように優しい目つきで、笑うと目尻のシワが思いのほか可愛いく映る。
そのおじさんが、ゆっくりと、そしてはっきりと喋りかけてくる。
「はじめまして、サーラ嬢。我らが王のこと、よろしく頼みましたぞ」
「はい? 誰が……王?」
なんとなく嫌な予感がして、恐る恐る斜め上を見上げると、シンが極上の笑顔で私を見つめてる。
「うん、僕。王様なんだ」
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