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世界編
102の1.まだ何かっ!
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あー、なんでこんなことになっちゃったかなぁ。
私はただの事務員さんで、平凡な人生の中、普通に結婚して普通に年取っていく予定だったのよ。
なのに、なんでこんなことになっちゃったかなぁ。
本気で大事なところだったんで、繰り返して確認してみました。
今私がいる場所は、エンリィ国の王宮の一角にある小島だ。
この国エンリィは、都市全体が水の中に浮いているような状態、つまり巨大な浮島となってひとつの国を構成しているのだ。
例えば、王宮ひとつとってもブロックごとに島になった状態で、別のブロックを移動するのには移動魔法で各人が動くのが当たり前になっている。
魔力のない私は当然移動することなどできず、力のある魔法使いに抱えられるか、小舟で移動するしか方法がない。
浮島と言えば聞こえがいいが、国全体が巨大な牢獄のようになっていて、出入国する人間にとってはほぼ抜け道が無いような造りになっている、というのが私の見解だ。
「ここにいたんじゃあ息も詰まるわ……こんなことなら、人間よりネコの方がよっぽど楽だし……」
所狭しと侍女たちがウジャウジャ動いて私のお世話をしてくれるモンだから、ほぼ体を動かすこともない。だからと言う訳ではないが、シンの言葉にうまいこと誘導されて、不本意ながらお妃候補としてなすすべもないままに無為な日々を過ごしている。
「サーラちゃん? 浮かない顔してるね。まだ僕のこと受け入れてくれないの? いずれ夫婦になるのに、今からそんなに身構えられちゃ哀しくなっちゃう」
背中の方から声が聞こえてくる。
部屋に入ってきたであろうシンの声だが、素直に応対するのも腹立たしくて、振り返りもせず返事をする。
「人を断れない状況に追い込んで何を今更。何か用事あんの? しかもその被害者ぶりっ子、やめなさい」
「ちょっと強気のサーラちゃんもシビれるねぇ。だんだん僕に従順になっていく君を見られるのが今から楽しみだよ」
「っ、この、変態っ!」
噛みつくような会話も、彼には十分楽しめる材料になるらしく、私は諦め半分で解放してもらえるように真面目に交渉をしてみることにした。
「ねえ、アンタと私が結婚するって言っても、ルシーンには恋人がいるんです。あの人だって納得しないと思うわ?」
「ああ、ユーグレイ公のことかい? なら大丈夫。彼にも今頃は、ドーン国を始め、いろんな貴族から縁談の申し込みがいっているはず。それに恋人とかいっても、正式に婚約したわけでもなかったろ? 前にも言ったとおり、少し時間を置いて、顔を合わせる機会が減ると自然に気持ちも変化するよ」
ひどっ……なんで気持ちが冷めるなんてこと、シンにわかるのよ。例えラッセルにドーンからの縁談話があったとしても、彼ならば断ってくれるはず。だって彼には断われるくらいの権限もあるはずだもの。
「そう言えば、もうじきルシーンからの使者がやってくるよ。早速僕たちの婚約を聞きつけて来てくれたのかな。ちょうどいい機会だから、君も話しをするといい」
「えっ、誰? 誰が来たのっ?」
「ふふ、会ってからのお楽しみにしたら?」
そう言ってシンは私に背を向けて、片手を上げながら去っていってしまった。
全く……私にあんな意地悪して何が楽しいんだか。
ため息まじりにアゴに手をかけていたら、すぐに名前を呼ばれ、侍女さんやら、従者さんやらがぞろぞろついての移動となった。
この人もヒマよね。私なんかに付いているよりか、他の人の護衛とかがよっぽど仕事になると思うんだけど。
そんなことを考えながら導かれるままに移動していると、この間の舞台みたいな場所に到着した。
どうやらここが対外者との面会する、いわゆる謁見の間にあたる場所なんだろう。
先に到着していたシンに呼ばれ、しぶしぶ隣へ座らされる。
見下ろす先にいた人物は、ハルだった。
周りにハル以外に親しい人たちがいないか確認したが、残念ながら誰もいない。半分嬉しく、半分ガッカリしながら、久しぶりにハルの声を聞く。
「……とルシーンの……ます。アレクサンドル・ヨハンダール・エンリィ国王におきましては……にありまして……」
ん? 聞き慣れない名前がでたぞ?
アレク……何だって?
私はただの事務員さんで、平凡な人生の中、普通に結婚して普通に年取っていく予定だったのよ。
なのに、なんでこんなことになっちゃったかなぁ。
本気で大事なところだったんで、繰り返して確認してみました。
今私がいる場所は、エンリィ国の王宮の一角にある小島だ。
この国エンリィは、都市全体が水の中に浮いているような状態、つまり巨大な浮島となってひとつの国を構成しているのだ。
例えば、王宮ひとつとってもブロックごとに島になった状態で、別のブロックを移動するのには移動魔法で各人が動くのが当たり前になっている。
魔力のない私は当然移動することなどできず、力のある魔法使いに抱えられるか、小舟で移動するしか方法がない。
浮島と言えば聞こえがいいが、国全体が巨大な牢獄のようになっていて、出入国する人間にとってはほぼ抜け道が無いような造りになっている、というのが私の見解だ。
「ここにいたんじゃあ息も詰まるわ……こんなことなら、人間よりネコの方がよっぽど楽だし……」
所狭しと侍女たちがウジャウジャ動いて私のお世話をしてくれるモンだから、ほぼ体を動かすこともない。だからと言う訳ではないが、シンの言葉にうまいこと誘導されて、不本意ながらお妃候補としてなすすべもないままに無為な日々を過ごしている。
「サーラちゃん? 浮かない顔してるね。まだ僕のこと受け入れてくれないの? いずれ夫婦になるのに、今からそんなに身構えられちゃ哀しくなっちゃう」
背中の方から声が聞こえてくる。
部屋に入ってきたであろうシンの声だが、素直に応対するのも腹立たしくて、振り返りもせず返事をする。
「人を断れない状況に追い込んで何を今更。何か用事あんの? しかもその被害者ぶりっ子、やめなさい」
「ちょっと強気のサーラちゃんもシビれるねぇ。だんだん僕に従順になっていく君を見られるのが今から楽しみだよ」
「っ、この、変態っ!」
噛みつくような会話も、彼には十分楽しめる材料になるらしく、私は諦め半分で解放してもらえるように真面目に交渉をしてみることにした。
「ねえ、アンタと私が結婚するって言っても、ルシーンには恋人がいるんです。あの人だって納得しないと思うわ?」
「ああ、ユーグレイ公のことかい? なら大丈夫。彼にも今頃は、ドーン国を始め、いろんな貴族から縁談の申し込みがいっているはず。それに恋人とかいっても、正式に婚約したわけでもなかったろ? 前にも言ったとおり、少し時間を置いて、顔を合わせる機会が減ると自然に気持ちも変化するよ」
ひどっ……なんで気持ちが冷めるなんてこと、シンにわかるのよ。例えラッセルにドーンからの縁談話があったとしても、彼ならば断ってくれるはず。だって彼には断われるくらいの権限もあるはずだもの。
「そう言えば、もうじきルシーンからの使者がやってくるよ。早速僕たちの婚約を聞きつけて来てくれたのかな。ちょうどいい機会だから、君も話しをするといい」
「えっ、誰? 誰が来たのっ?」
「ふふ、会ってからのお楽しみにしたら?」
そう言ってシンは私に背を向けて、片手を上げながら去っていってしまった。
全く……私にあんな意地悪して何が楽しいんだか。
ため息まじりにアゴに手をかけていたら、すぐに名前を呼ばれ、侍女さんやら、従者さんやらがぞろぞろついての移動となった。
この人もヒマよね。私なんかに付いているよりか、他の人の護衛とかがよっぽど仕事になると思うんだけど。
そんなことを考えながら導かれるままに移動していると、この間の舞台みたいな場所に到着した。
どうやらここが対外者との面会する、いわゆる謁見の間にあたる場所なんだろう。
先に到着していたシンに呼ばれ、しぶしぶ隣へ座らされる。
見下ろす先にいた人物は、ハルだった。
周りにハル以外に親しい人たちがいないか確認したが、残念ながら誰もいない。半分嬉しく、半分ガッカリしながら、久しぶりにハルの声を聞く。
「……とルシーンの……ます。アレクサンドル・ヨハンダール・エンリィ国王におきましては……にありまして……」
ん? 聞き慣れない名前がでたぞ?
アレク……何だって?
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