異世界行って黒ネコに変身してしまった私の話。

しろっくま

文字の大きさ
202 / 249
世界編

102の1.まだ何かっ!

しおりを挟む
 あー、なんでこんなことになっちゃったかなぁ。

 私はただの事務員さんで、平凡な人生の中、普通に結婚して普通に年取っていく予定だったのよ。
 なのに、なんでこんなことになっちゃったかなぁ。

 本気で大事なところだったんで、繰り返して確認してみました。

 今私がいる場所は、エンリィ国の王宮の一角にある小島だ。

 この国エンリィは、都市全体が水の中に浮いているような状態、つまり巨大な浮島となってひとつの国を構成しているのだ。

 例えば、王宮ひとつとってもブロックごとに島になった状態で、別のブロックを移動するのには移動魔法で各人が動くのが当たり前になっている。

 魔力のない私は当然移動することなどできず、力のある魔法使いに抱えられるか、小舟で移動するしか方法がない。

 浮島と言えば聞こえがいいが、国全体が巨大な牢獄のようになっていて、出入国する人間にとってはほぼ抜け道が無いような造りになっている、というのが私の見解だ。

「ここにいたんじゃあ息も詰まるわ……こんなことなら、人間よりネコの方がよっぽど楽だし……」

 所狭しと侍女たちがウジャウジャ動いて私のお世話をしてくれるモンだから、ほぼ体を動かすこともない。だからと言う訳ではないが、シンの言葉にうまいこと誘導されて、不本意ながらお妃候補としてなすすべもないままに無為な日々を過ごしている。

「サーラちゃん?   浮かない顔してるね。まだ僕のこと受け入れてくれないの?   いずれ夫婦になるのに、今からそんなに身構えられちゃ哀しくなっちゃう」

 背中の方から声が聞こえてくる。
 部屋に入ってきたであろうシンの声だが、素直に応対するのも腹立たしくて、振り返りもせず返事をする。

「人を断れない状況に追い込んで何を今更。何か用事あんの?   しかもその被害者ぶりっ子、やめなさい」
「ちょっと強気のサーラちゃんもシビれるねぇ。だんだん僕に従順になっていく君を見られるのが今から楽しみだよ」
「っ、この、変態っ!」

 噛みつくような会話も、彼には十分楽しめる材料になるらしく、私は諦め半分で解放してもらえるように真面目に交渉をしてみることにした。

「ねえ、アンタと私が結婚するって言っても、ルシーンには恋人がいるんです。あの人だって納得しないと思うわ?」
「ああ、ユーグレイ公のことかい?   なら大丈夫。彼にも今頃は、ドーン国を始め、いろんな貴族から縁談の申し込みがいっているはず。それに恋人とかいっても、正式に婚約したわけでもなかったろ?   前にも言ったとおり、少し時間を置いて、顔を合わせる機会が減ると自然に気持ちも変化するよ」

 ひどっ……なんで気持ちが冷めるなんてこと、シンにわかるのよ。例えラッセルにドーンからの縁談話があったとしても、彼ならば断ってくれるはず。だって彼には断われるくらいの権限もあるはずだもの。

「そう言えば、もうじきルシーンからの使者がやってくるよ。早速僕たちの婚約を聞きつけて来てくれたのかな。ちょうどいい機会だから、君も話しをするといい」
「えっ、誰?   誰が来たのっ?」
「ふふ、会ってからのお楽しみにしたら?」

 そう言ってシンは私に背を向けて、片手を上げながら去っていってしまった。

 全く……私にあんな意地悪して何が楽しいんだか。
 ため息まじりにアゴに手をかけていたら、すぐに名前を呼ばれ、侍女さんやら、従者さんやらがぞろぞろついての移動となった。

 この人もヒマよね。私なんかに付いているよりか、他の人の護衛とかがよっぽど仕事になると思うんだけど。

 そんなことを考えながら導かれるままに移動していると、この間の舞台みたいな場所に到着した。
 どうやらここが対外者との面会する、いわゆる謁見の間にあたる場所なんだろう。

 先に到着していたシンに呼ばれ、しぶしぶ隣へ座らされる。

 見下ろす先にいた人物は、ハルだった。

 周りにハル以外に親しい人たちがいないか確認したが、残念ながら誰もいない。半分嬉しく、半分ガッカリしながら、久しぶりにハルの声を聞く。

「……とルシーンの……ます。アレクサンドル・ヨハンダール・エンリィ国王におきましては……にありまして……」

 ん?   聞き慣れない名前がでたぞ?
 アレク……何だって?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

処理中です...