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世界編
116の2.どうする、私!
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さ、酸素、酸素が欲しい……
「あと少しの絶望とこの世界を管理する力があれば、ここは私の望む理想郷となり得るはずなのに。この女が小賢しい真似をするから、余計な手間がかかってしまうではないか」
首を絞めている手を解こうと、無茶苦茶に暴れ、口は酸素を求めるあまりヨダレが溢れ出し、ヒクヒクと震える。
最初は思いっきり爪を立てて足掻いていたが、そんな力も根こそぎ奪われていった。
「まぁいいさ。この女と君の絶望を喰らい、あの男を倒せば済むことだ。あの、心のお優しい男のことだ。君たち二人に向けてなど、完全な力を解放することなどできないんだろう? つまり私が優位ということだな」
嘲笑うシャドウがチラリと視界に入るが、朦朧とした意識では反論することさえ難しい。
……ダメだ……意識が遠のく……
ブラックアウト寸前で、唐突に拘束が緩んだ。
「何を、なさっているのですっ、母上!」
怒りを含む声を発しながら、ラッセルは私の首を絞めている手を魔力をもって振り解いた。
死にものぐるいで求めていた酸素が、急速に駆け巡るのを頭で感じ、すぐには対応できない私の体は、耐えきれずにドサリとその場に崩れ落ちた。
た、助かった……
ガンガンする頭で考えられることはそれだけだった。
「エーデル? 我が息子よ。喜んでくれるかしら? あなたのお嬢さんが私たちの為に命を捨ててくれると言ってるのよ? 有り難く、その命をいただきましょう。そうすれば、この世界も安定を取り戻すわよ?」
「母上は何を言って……沙羅、本当か? 本気で言っているのか」
愕然としたラッセルの声に対して、彼の母を装ったシャドウは、畳み掛けるように話を続ける。
「このお嬢さんの中に、今まで私の中にいたシャドウが入り込んだのです。今、彼女を殺してしまえば、シャドウも消えてくれるでしょう。迷う必要などありませんよ?」
「ですが……」
マズい。
ラッセルはシャドウがお母さんを支配してるとは思ってもいないようだ。このままでは、お母さんの言葉を信じて私を殺しにかかってくる……
抗議の声を上げようと、痛む頭を抱えて口を開くが、思うように声帯が振るえてくれない。
無言のままの私に気をよくしたシャドウが、ラッセルをそそのかす。
「どうせこの女は異物だ。ちょうど良いではないか。さっさと殺ってしまえばいい」
ヤバいよ、こんな嘘に嵌められて死んじゃったら未練たらたらだって。シャドウにそそのかされたラッセルだって、あとから真実を知らされたならきっと悔やんでも悔やみきれないはず。
このままだと完全にシャドウの思うツボだわ。
頭はガンガンするけれど、こっちは生死がかかっているんだ、痛いなんて思ってるヒマなんてない。生きるためには必死にならないと。
ガバリと身を起こし……たかったが、シャドウに押さえつけられて、身動きが取れない。
ジタバタと暴れて拘束を逃れようとするも、シャドウがより強力な力で押さえつけてくる。
彼女の目が吊り上がり、苛立ちを交えた声色に変わる。
「うるさいっ、この小娘が。黙ってな。エーデル? あなたの剣を貸してくれないかしら? 私がこの命、奪ってあげようじゃないか」
シャドウの言葉使いが荒くなっているのに気づいてくれれば、多少の違和感から真実が見えてくるのかもしれないが、いかんせん喋っているのは彼の母なのだ。どちらを信じるかはラッセルの判断に任せるしかない。
ラッセルは無言と無表情のまま、腰の剣を抜きながら私たちに近づいてくる。
一歩、また一歩。
ラッセルの足音は確実な死の音を思わせ、恐怖のあまり顔から血の気が引くのを感じた。
ノドの奥がヒュッと鳴り、生唾を飲み込む。
何度か瞬きをするうちに、ラッセルの姿が大鎌を抱える死神とダブって見えてきた。
無言のまま振り上げるラッセルの剣がギラリと光った。
「あと少しの絶望とこの世界を管理する力があれば、ここは私の望む理想郷となり得るはずなのに。この女が小賢しい真似をするから、余計な手間がかかってしまうではないか」
首を絞めている手を解こうと、無茶苦茶に暴れ、口は酸素を求めるあまりヨダレが溢れ出し、ヒクヒクと震える。
最初は思いっきり爪を立てて足掻いていたが、そんな力も根こそぎ奪われていった。
「まぁいいさ。この女と君の絶望を喰らい、あの男を倒せば済むことだ。あの、心のお優しい男のことだ。君たち二人に向けてなど、完全な力を解放することなどできないんだろう? つまり私が優位ということだな」
嘲笑うシャドウがチラリと視界に入るが、朦朧とした意識では反論することさえ難しい。
……ダメだ……意識が遠のく……
ブラックアウト寸前で、唐突に拘束が緩んだ。
「何を、なさっているのですっ、母上!」
怒りを含む声を発しながら、ラッセルは私の首を絞めている手を魔力をもって振り解いた。
死にものぐるいで求めていた酸素が、急速に駆け巡るのを頭で感じ、すぐには対応できない私の体は、耐えきれずにドサリとその場に崩れ落ちた。
た、助かった……
ガンガンする頭で考えられることはそれだけだった。
「エーデル? 我が息子よ。喜んでくれるかしら? あなたのお嬢さんが私たちの為に命を捨ててくれると言ってるのよ? 有り難く、その命をいただきましょう。そうすれば、この世界も安定を取り戻すわよ?」
「母上は何を言って……沙羅、本当か? 本気で言っているのか」
愕然としたラッセルの声に対して、彼の母を装ったシャドウは、畳み掛けるように話を続ける。
「このお嬢さんの中に、今まで私の中にいたシャドウが入り込んだのです。今、彼女を殺してしまえば、シャドウも消えてくれるでしょう。迷う必要などありませんよ?」
「ですが……」
マズい。
ラッセルはシャドウがお母さんを支配してるとは思ってもいないようだ。このままでは、お母さんの言葉を信じて私を殺しにかかってくる……
抗議の声を上げようと、痛む頭を抱えて口を開くが、思うように声帯が振るえてくれない。
無言のままの私に気をよくしたシャドウが、ラッセルをそそのかす。
「どうせこの女は異物だ。ちょうど良いではないか。さっさと殺ってしまえばいい」
ヤバいよ、こんな嘘に嵌められて死んじゃったら未練たらたらだって。シャドウにそそのかされたラッセルだって、あとから真実を知らされたならきっと悔やんでも悔やみきれないはず。
このままだと完全にシャドウの思うツボだわ。
頭はガンガンするけれど、こっちは生死がかかっているんだ、痛いなんて思ってるヒマなんてない。生きるためには必死にならないと。
ガバリと身を起こし……たかったが、シャドウに押さえつけられて、身動きが取れない。
ジタバタと暴れて拘束を逃れようとするも、シャドウがより強力な力で押さえつけてくる。
彼女の目が吊り上がり、苛立ちを交えた声色に変わる。
「うるさいっ、この小娘が。黙ってな。エーデル? あなたの剣を貸してくれないかしら? 私がこの命、奪ってあげようじゃないか」
シャドウの言葉使いが荒くなっているのに気づいてくれれば、多少の違和感から真実が見えてくるのかもしれないが、いかんせん喋っているのは彼の母なのだ。どちらを信じるかはラッセルの判断に任せるしかない。
ラッセルは無言と無表情のまま、腰の剣を抜きながら私たちに近づいてくる。
一歩、また一歩。
ラッセルの足音は確実な死の音を思わせ、恐怖のあまり顔から血の気が引くのを感じた。
ノドの奥がヒュッと鳴り、生唾を飲み込む。
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無言のまま振り上げるラッセルの剣がギラリと光った。
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