異世界行って黒ネコに変身してしまった私の話。

しろっくま

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転移編

14の2.どうやって会うのさっ!

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「二番目はサランディア様さ。もっとも、第二王子との婚約が破談になってから田舎に引っ込んだって話しだったよなあ。あン人は美人だった、ボン、キュッ、ボーンってな。王家ゆかりの令嬢だから血筋は確かだし、魔力もかなり強いって話しだったしな。学校や師団に入る前から既に魔力を操れたって話も聞こえたよ。前途洋々だったのにな、ホントもったいねぇ」

 おじちゃんはニヤニヤしながら、体型を両手で表現して、嬉しそうに説明してくれる。
 それをみたおばちゃんは、呆れたようにおじちゃんの頭をパコンと叩く。

 サランディアさん……いい人だったよね。それなりの魔法使い?   魔術師?   だと思ってたけど、学校いく前から魔力操れるってすごくね?
 にしても、おばあちゃんで婚約者?   半世紀をかけた恋、みたいな感じかな。いや、違うな。確か二十歳って言ってたような……それとも同じ名前で全然別人か?   んー、わからん。

 パズルのボードとピースはあるのに、バラバラで、何をどこに嵌めればいいのか、全く手がつけられないような感覚だ。

「お前さんも美人にゃ鼻の下伸びるねぇ。今はサランディア様よりも、現副師団長のコークス様だろ。サランディア様は王家に逆らった、とかで魔女扱いされちまってるしね。コークス様はサランディア様に次ぐ魔力の持ち主だって噂だし、こっちも美形だよ」

 ん?   コークス?
 どっかで聞いたような……ああ、フィルって確かコークスだったよね。知り合いかな、もし知り合いなら紹介してもらうのもいいね。

 よしよし、今日はかなりの収穫があったぞ。
 あとは今日の情報をまとめて、問題点を二人に相談して、早いうちに魔術師に会える算段をつけるってことで。

 意外とトントン拍子で日本に帰れちゃうかも。
 ちょっと希望が見えてきたことで、気持ちも前向きになれたような気がする。
 やっぱり、漠然と帰れないかも、という不安を抱えて生きるのと、帰れる可能性があるかも、と思いながら生きるのでは、モチベーションの差がかなりある。

 このファンタジー世界も面白いかもしれないと感じるのだが、別世界から飛ばされてきた私には、所詮自分が生きる場所はここには無いのだ、と頭の隅で考えてしまうのだ。

 田舎の両親、小さな頃から知っている隣のおばさんや近所のお兄ちゃん。東京の大学や会社に就職してからできた友達や先輩社員。そんなに懇意にはしていなかったが、やはり私を知ってくれてる人たちがいる、あの世界に戻りたい、と本能が訴えている。

 還るーーそれが自然な流れなのだ。

 時間もそろそろ日暮れに片手がかかる時間になってきた。
 話しを聞いたおばちゃんとおじちゃんに、丁寧に挨拶し、街の出入り口に向かった。

 一向に迎えにこない私のことを心配して、迎えが来るまで店で預かる、とまで申し出てくれたのだが、時間切れでネコに戻るのを目撃されても、気味悪がられるだけだと思い、丁重に断って店を後にした。

 街を出て、少し脇にある木の陰でネコに戻った。そのまま何も考えずにひたすら走り、寮の部屋にいるハルの隣にストンと座り、ふう、と大きな息を吐いた。

「お帰り」と優しく頭を撫でてくれるハルを見上げながら、にっこりと笑い返す。

 この場所もまた私の帰る場所になってきてる。仮初かりそめとは言え、ハルの手の中は暖かいいし、優しく包んでくれている、という安心感がある。

 今はまだ、この手の平で満足しておこう。
 異世界から来た異物の私を、嫌うことなく包んでくれる、この手の平に感謝。

 ゆったりとした眠気の波に身を委ね「ただいま、そしてありがとう」と何度も繰り返した。
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