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第1章
20話
しおりを挟む「あなた最高だわ。ニコルちゃんったら箱入りのお嬢様だと思ったけど、かなりの筋金入りね。笑えるわぁ、誰も教えてくれなかったの? その歳になるまで?」
コクコクと首を縦に振るだけで、まだ衝撃は去ってくれない。旅に出ようと決心した日の、あの心細さは何だったんだろう。
全くの勘違いだったと解って、嬉しいやら情けないやら……
手元のお茶をグイッと飲み干した後には、勉強になりました、とニッコリ笑える余裕ができたけど。気持ちの不安も解消されたことだし、あとは、お給料をもらえるくらいお仕事頑張って、お家に帰るとしよう。
早起きがまたまだ辛いが、薬草の仕分けに少しは慣れてきたな、と感じる頃、ミラーさんのお供で隣村まで往診について行けることになった。
嬉しくて、ロレーヌさんとミラーさんに抱きついてから、早速出かける準備を始めた。
薬草とお茶用のポットと茶碗、包帯少しをカゴに入れ準備完了。ロレーヌさんに手を振ってミラーさんと一緒に歩く。隣村まではすぐに着いた。老人がいる家を個別訪問、薬草茶とマッサージで今日の仕事は終了。
帰り支度をしていると、早いうちから酔っ払った変なおじさん二人が誰かに絡んでいた。みんな助けようとするのだが、酔っ払いの迫力に押されて、なかなか事態が収束しない。
しょうがないので私が割って入った。案の定、酔っ払いが私に焦点を切り替える。後ろ手で逃げるように指示して、その場を収めようとした。が、やはり無理だったようだ。ナイフを取り出し、私を脅しにかかってきた。
前にもこんなピンチあったけど、今度は平気。ナイフ野郎への対処法はスレイ君からしっかり伝授されていたからね。
その時に女性がゴロツキを一発で撃退する方法ってのを教わったから、ちょうど実戦で試せるわ。
事前に近くの家から火かき棒をお借りしてた。チラつくナイフの方が有利と思っているのか、私めがけて何度か振りかざしてくる。
よし、今だっ!
最初に目潰し、長い棒で鳩尾、関節をガンガン攻めて、最後に急所を蹴り上げる。
綺麗に決まったところで酔っ払いは失神していたから、後は村の方々にお任せしても大丈夫でしょ。
まばらな拍手に手を振って、診療所に帰りついた。
疲れてぐっすり眠った次の日から、診療所の女の子は見かけによらず豪傑、と噂されるようになってたってのは、ここを離れる時に初めて聞かされた。
実は、その日から、若い男性はみんなキッチリ両足を揃えて診療所に来てくれるようになってたのだ。
礼儀正しい作法を覚えたのね、と感心してたんだけど、理由があったなんてことは最後まで知らなかったわ。
そんな騒動があってから何日か経った日。
毎朝の日課になった水汲みを終えてひと息ついたところだった。
少し遠くから、もの凄い勢いで駆けてくる馬が三頭、旅人を乗せてこちらに向かっているように見受けられた。
急ぎの病人がいるのかと考え、ロレーヌさんに連絡、病室の準備を急いで済ませ、入り口で待機した。
馬から降りて来た人を確認してビックリ、そこにはなぜか、不機嫌丸出しの団長の顔があった。
あんぐりと口を開けて固まっていると、その顔がどんどんこちらに向かってくる。
引きつりながらも何か言わなければ、と考えて絞り出した言葉がこれだった。
「いい、いらっしゃいませ……ほ、ほ、本日はお日柄もよく……」
ビキリっとこめかみに青筋を立てた団長から、その瞬間に大音声の怒号が響き渡った。
「この馬鹿者がーーーーっ!」
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