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第1章
2話
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その瞬間、お母様の顔がしてやったり、という顔に変わっていたようだ。私はお母様から視線を外していたので判らなかったのだが、サーラからはバッチリ見えていたらしい。サーラですら震えがくるほどの黒い笑みだというそのお顔。その顔を見ていたならば、こんなバカな誘惑には負けなかったのに……
本当にそうなのか?
例えお母様からの誘惑がなかったとしても、もしかしたら私はこの話に乗っていたのかもしれない。というか、ニコラスからの話を聞いた時点で私の心はすでに傾いていたのだろう。
認めるわ、私の負けよ……
それからというもの、お母様とサーラは、お互いに目配せし合い、いそいそと何かの準備に取り掛かり始める。
何をしてるのかと覗きこんだら、第六騎士団とその他の騎士団の情報がザックリと書き込まれた書類だった。
「ニコル、あなたもしっかりとこの内容を頭に叩き込みなさい。これから一週間、この人たちと一緒に過ごすのです。勤務内容は街の見回りと執務室での書類整理なのね。拘束時間もそんなに長い訳ではなさそうだし……夜勤もない。これで一週間ならチョロいモンですって」
なんでこんな書類が今私の手元にあるんだ?
しかもこんな短時間でまた、よくもこれだけ……
絶対に私が騎士団に紛れ込むことを前提とした書類っしょうに。
……どう考えても私よりも楽しんでるよね?
とりあえず手渡された書類をため息吐きながら目を通した。
ふぅん、巡回は二人一組なのね。話が合う人なら意外に平気かも。
問題は執務室だよね。何てったって、王子様を騙すワケだからさ。あ、でも考えようによっちゃあ、大人しく与えられた仕事を淡々とこなせば十分隠れてられるし、上手くいけば王子様に会うこともないまま過ごせそう。そう考えると案外大丈夫かな。
第六騎士団ってのは基本、大事なことは何も任されないって噂のお飾り団だったはず。
第三王子の仕事場所を確保するための便宜上の騎士団だ。
最低限の仕事をしておけば、怠けてるだの、もっと真剣にやれだのは言われないと思う……うん、そんな気がする。
「サーラ、お母様、私何とか誤魔化してやっていけそうですわ。たった一週間ですもの、見事にニコラスに成り切って見せますっ!」
「きゃーっ、ニコルちゃんってば男前よー。後は言葉遣いと髪の毛をどうにかしないとね。それから、制服もちょっとは手直ししないと。さすがにニコラスと同じ体型ってワケにいかないしね」
え……髪の毛は切りたくないなぁ、結構気に入ってるんだけど、このサラサラストレート。
私は髪を一房摘んでチラッとサーラをみた。
サーラはすかさず後ろ手に回した手を、私の前にかざして見せ、自慢気に語り出した。
「ニコル様、サーラ渾身のオーダーウイッグです。今の髪をキッチリ縛って中に入れ込めば、ハイこの通り。見事にニコラス様ヘアーに早変わりです」
心なしか鼻の穴が膨らみ気味に話すのも自信の表れなんだろな。勢いに気圧されつつ、顔を引きつらせながらコクコクと頷いた。
二人とも、頑張るところはそこじゃないから……
私はその場で今日何度目かのため息を吐き出した。
本当にそうなのか?
例えお母様からの誘惑がなかったとしても、もしかしたら私はこの話に乗っていたのかもしれない。というか、ニコラスからの話を聞いた時点で私の心はすでに傾いていたのだろう。
認めるわ、私の負けよ……
それからというもの、お母様とサーラは、お互いに目配せし合い、いそいそと何かの準備に取り掛かり始める。
何をしてるのかと覗きこんだら、第六騎士団とその他の騎士団の情報がザックリと書き込まれた書類だった。
「ニコル、あなたもしっかりとこの内容を頭に叩き込みなさい。これから一週間、この人たちと一緒に過ごすのです。勤務内容は街の見回りと執務室での書類整理なのね。拘束時間もそんなに長い訳ではなさそうだし……夜勤もない。これで一週間ならチョロいモンですって」
なんでこんな書類が今私の手元にあるんだ?
しかもこんな短時間でまた、よくもこれだけ……
絶対に私が騎士団に紛れ込むことを前提とした書類っしょうに。
……どう考えても私よりも楽しんでるよね?
とりあえず手渡された書類をため息吐きながら目を通した。
ふぅん、巡回は二人一組なのね。話が合う人なら意外に平気かも。
問題は執務室だよね。何てったって、王子様を騙すワケだからさ。あ、でも考えようによっちゃあ、大人しく与えられた仕事を淡々とこなせば十分隠れてられるし、上手くいけば王子様に会うこともないまま過ごせそう。そう考えると案外大丈夫かな。
第六騎士団ってのは基本、大事なことは何も任されないって噂のお飾り団だったはず。
第三王子の仕事場所を確保するための便宜上の騎士団だ。
最低限の仕事をしておけば、怠けてるだの、もっと真剣にやれだのは言われないと思う……うん、そんな気がする。
「サーラ、お母様、私何とか誤魔化してやっていけそうですわ。たった一週間ですもの、見事にニコラスに成り切って見せますっ!」
「きゃーっ、ニコルちゃんってば男前よー。後は言葉遣いと髪の毛をどうにかしないとね。それから、制服もちょっとは手直ししないと。さすがにニコラスと同じ体型ってワケにいかないしね」
え……髪の毛は切りたくないなぁ、結構気に入ってるんだけど、このサラサラストレート。
私は髪を一房摘んでチラッとサーラをみた。
サーラはすかさず後ろ手に回した手を、私の前にかざして見せ、自慢気に語り出した。
「ニコル様、サーラ渾身のオーダーウイッグです。今の髪をキッチリ縛って中に入れ込めば、ハイこの通り。見事にニコラス様ヘアーに早変わりです」
心なしか鼻の穴が膨らみ気味に話すのも自信の表れなんだろな。勢いに気圧されつつ、顔を引きつらせながらコクコクと頷いた。
二人とも、頑張るところはそこじゃないから……
私はその場で今日何度目かのため息を吐き出した。
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