第三王子のお守り騎士団

しろっくま

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第1章

9話

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「ニーーコラーーーースっ」

 相変わらずのお父様の絶叫だ。今日はかなりやらかしちゃったんだから疲れてんのよ。

「お父様、私はニコルです。ニコラスはフィオナちゃんとこでしょ?」
「ああ、そうだった……って違ーーうっ。お前だお前、ニコラス役のニコル。お前、今日備品倉庫から私の名前で持ち出ししただろ」

 何だそんなことか、こっちは明日っからのこと思うと憂鬱だってーのに。

「ああ、執務室が足の踏み場もなかったので、掃除のために必要だったのです。管理システムがよく解らなかったので、お父様の個人払いでお願いすることにしときました」
「何だとーーっ、そんなことをすれば私が目立つではないか!   芋づる式にお前やニコラスに縁談話しが舞い込んでくるのだぞ。ニコラスなど近衛なんかに入るからバカ王女に目をつけられる始末だし」

 は?   お父様が目立てば私に縁談?
 何だその、風が吹けばどこぞの店が儲かる的なワケのわからん論理は。

 不思議顔をしてたら、しっかりと説明された。
 私とニコラスは、この国の貴族の中ではかなり美形な部類に入るのだそうだ。加えて家柄。今は伯爵の地位にいるが、お祖父様から既に侯爵家を継ぐように言われているので、それが公になった場合、当家から婿や嫁を貰うことを画策する者たちも多く出てくるのだと言う。

 釣り合う相手が見つかるまでは目立たず騒がずで自分の存在を消し、私とニコラスを上流貴族の見合い相手から隠してきたんだそうだ。それもお母様の指示で。

 私たちの結婚相手になる人は、お母様がゴーサインを出した人に限られるんだそうだ。それがお母様がお父様と結婚する際の条件だったようで、守られなければ離婚の危機が訪れるらしい。自分を空気にすることで、有力貴族からのゴリ押しも回避できたのだと言う。

 お父様もお父様なりに知恵を絞って離婚危機を逃れていたのね、そりゃ頭も寂しくなるわな。

 お母様が気に入った人柄でなければ、パーティーやお茶会もダメ。
 だから貴族の男性がいるとこには、ほぼ出してもらえなかったんだ。

 なるほど、と思ったところでふと疑問が出る。ニコラスにはフィオナちゃんが既に婚約者としているじゃないか。たまらず聞いてみた。だって不公平じゃん?

「ああ、あの子たちが産まれる前からミレーユと親友の間で交わされた約束でな、性別が違ったら結婚するようになってたんだ」

 あらら、なら向こうに男の子が産まれてたら私には既に婚約者がいたってことか。ふうん。って、今だに私に婚約者がいないってことは、お母様が納得した人がいないってことよね。そこから導き出される答えは……

「お父様、私っていつになったら結婚できるんでしょうか?」
「ははは、それはミレーユの気分次第だなあ、私に権限はないよ」

 なぜそこで爽やかな笑顔ができる?
 途轍もない脱力感を感じ、部屋に戻ることにした。待ってるだけじゃ絶対に恋なんて訪れない。これだけはハッキリした。そしてかつてない程、神に祈った。

「お願い、どっかにいい男、転がしてくれ」

 切実な願いが届いたかどうかは分からないが、あくる日も清々しい朝が来てしまった。

 ああ、今日からパシりだっけ……一体何やらされるんだか。
 だいたい第六騎士団なんて、街の警備しか仕事ないはずなんだから、大して忙しくないと思うけどな。
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