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第1章
8話
しおりを挟むヒクッ……瞬間、顔が引きつり目が座った。
ゆっくりと首だけで振り返り「あん? 何だと?」
言っとくが私は正真正銘の女だ、ごるぁっ!
口には出さなかったが心で叫んだ。
「いやあ、昨日のスリを捕まえた時のお前、なかなか本気モードの女装だったからなあ、俺らも騙されちまった。特にスレイなんか惚れちまうくらいいい女だったって言ってたからなぁ」
「昨日?」
「そ、会っただろ? 声かけたのがスレイ、俺はコソ泥の方を捕縛してたから遠目にしか見えなかったけどな」
おお、あの爽やかイケメン君はスレイという名前か。私をいい女っていうんだから、やっぱポイント高いわ。んで、コイツはもう一人の方な、オッケー。自分なりに納得したところで、ハッと気がついた。
ヤバい、今の私はニコラスだ、ニコルで動いてた昨日と比べれば、女装と言われるのも仕方ないか……
「ああ、昨日街にいたのは二歳年上で姉のニコルだ。同じ顔だからよく間違えられるんだが、さすがに女装は姉に失礼だろ。それに」
振り向きざまにヤツの腹に一発拳をいれてやった。グフッと唸り体を『く』の字に曲げるヤツに向かって一言。
「俺は女に間違われるのが一番嫌いだ」
手をパンパンと払いながら、捨て台詞のように宣言した。
決まった!
と、同時に廊下からドヤドヤと人の気配が近づいてきた。ん? と顔を向けると、入り口付近で昨日の爽やかイケメン他数名があんぐりと口を開けて固まっている。
なんだ、私の勇姿に惚れたか?
しかし、爽やかイケメンことスレイ君から出た言葉は非常に恐ろしいものだった。
「……団長、あんたまた知らない小僧から絡まれて……しかも何で殴られてるんスか?」
「い、いや……ちょっとした行き違いでな」
へ? 君、今なんて言ったかな?
団長、とか聞いたけど……まさかね。
「しかも今日は昼から集合なんスよねぇ、今いるってことは、また街の連中にどっか連れ出されてここ泊まったんでしょ。後で文句つけときますよ」
ええ! 今日って昼からなの? 着任日だから定時だと思ってたんだけど。
焦って辞令に再度目を通す。あ……
「諸手続きと顔合わせを兼ねて、当日は特別に午後のみの勤務となる予定……うわあーーーー!」
書面を両手で握りしめながら絶叫した。
どうするよ、私。上司殴り倒しちゃったんですけど。しかも勤務時間間違えた上に、上から目線で上司に向かって伝言係頼んじゃってるし。
目の焦点が合わない状態で呆然としていると、どこからともなく、クスクスと忍び笑いが聞こえてきて、やがてみんなが腹を抱えて笑い始めた。ひどいことに笑い涙を流したりする者までいる始末。
「あー、笑った。お前可愛い顔してんのに根性あるな、団長に挑むなんて。気に入った、街の見回りは俺と組もうぜ。弄りがいありそー」
「いや、組むのは俺でいこう。上司の俺に手をあげた罰で一カ月間専用のパシり決定」
えー、パシりなんかやりたくないんだけど。不満顔で団長を見ると既に痛くもないであろう腹をさすりながら言い放つ。
「うう……腹が痛むなあ……」
それ言われると何も言い返せないじゃない。歯噛みして両手を握りしめていると、団長が私に向かって手を差し出してくる。ジッとそれを見ていると、無理やり握手させられた。
「改めまして、私がこの第六騎士団を纏めています、ジェイク・グリフォードと申します。よろしく『ニコラス・テイラード』君」
そして、と言いながら、入り口にいるみなさんを自分の後ろに控えさせて、紹介してくれた。
「ようこそ、我が『第三王子のお守り騎士団』へ」
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