32 / 50
第2章
29話
しおりを挟む
「君たちが今日の護衛かな? よろしく頼むね」
第二王子のラスティ様が爽やかな笑顔で挨拶してくれる。何か期待してくれてるのかな、って感じに思えて「はいっ、こちらこそよろしくお願いしますっ!」とデカい声で言ってしまった。
クククッと小さな笑い声で「元気だね」と言われた。あ、ちょっとビックリさせちゃったかな? そこまで大きな声出さなくてもよかったのか、失敗失敗。張り切り過ぎてしまったことに気づき、ちょっと顔が赤くなった。
「スレイは久しぶりだね。なかなか私に会いに来てくれないから、寂しいよ。いつでも公爵の後を継いでくれて構わないんだけど?」
茶目っ気たっぷりにウインクをして、スレイ君に話しかけている。
ずいぶん親しいんだね。考えてみればスレイ君って、外交担当次官のラングダウン公爵様をお父様に持つ超エリートじゃないか。
「私には外交よりも、ジェイク様の下であれこれ動いている方が性に合っているんです。ラスティ様のことですから、有望株を見つけているんでしょ? 父から聞いております。その方を大切になさってください」
「そうか、残念。公爵も私も、いつでも待ってるから、気が変わったらおいで。ポストは準備してるからね。あとジェイクのこと、これからも頼むよ」
へえ、第六の仕事って意外と侮られがちなんだけど、スレイ君もラスティ様も団の立ち位置をしっかりと把握してるのね。
ラスティ様はジェイクのことを敵視するようなこともないみたい。
第二王子って立場からすれば、第三王子は自分の後釜を狙う存在、とか考えがちなんだけどね。周りの国でよく聞く、王座を狙うための暗躍とか野心丸出し、とかって雰囲気も微塵も感じないし。
いい兄弟じゃん、ほのぼのって感じ。
短いやりとりだったが、二人のジェイクに対する気遣いがわかって、ちょっと嬉しくなった。
何か私、この人のためだったら体張って護衛する気になるわぁ、頑張ろっと。
予定の時間となり、王子に付き添って会談の場へと赴いた。
アルベリアの使者は、抜け目のない顔つきの人だ。一緒にいる文官たちも、揃って隙のない顔つきをしている。
こわっ……とか思ってラスティ様とラングダウン公爵や他の文官さんたちを見ると、こちらも同様。
知らないうちに、私とスレイ君、向こうの護衛さん、併せて四人以外はみんな笑顔になってるが目だけ笑ってないという、空恐ろしい現場になっていたようだ。
外交って腹黒い人じゃないとやってけないね。みてるだけで胃が痛くなってくるし、何より心が寒い。
ラスティ様もスレイ君のお父様もすごいよ、感心しちゃうわ。私は剣術の方が好きだから、こんなとこは向いてないってすぐわかるよね。
会談という腹芸が終了、スレイ君をチラッと見ると、何やら難しい顔をしている。
今んとこ王子を狙うなんて、大胆な輩は存在しないので、そのままピッタリと王子に張り付いている。
次の予定は視察か。アルベリアは教育に力を入れ始める取り組みをしている、とかいう名目で、学校と美術館、博物館の訪問をするワケだ。
要は芸術家肌の使者が観光したいってことかな? ガヤガヤしたとこだと護衛も大変だから、正直助かる。これが市場見学とかだったら、狙われる確率大だよ。
視察の時間も問題なく過ぎ、無事王宮へと戻ってきた。ここまで警護したけど、アルベリアとの会談も視察も穏やかに済んだことだし、そんなに切迫した状況でもなさ気だよね。みんな気を使い過ぎじゃないの?
私は、情勢が不安な国を相手にしてることと、経験のない近衛の仕事ってことで、張り付いているだけなのに、エラく緊張しきってたようだ。王宮までの道のり、何ごともなかったことに安心し、ホッと肩の力を抜いた。
第二王子のラスティ様が爽やかな笑顔で挨拶してくれる。何か期待してくれてるのかな、って感じに思えて「はいっ、こちらこそよろしくお願いしますっ!」とデカい声で言ってしまった。
クククッと小さな笑い声で「元気だね」と言われた。あ、ちょっとビックリさせちゃったかな? そこまで大きな声出さなくてもよかったのか、失敗失敗。張り切り過ぎてしまったことに気づき、ちょっと顔が赤くなった。
「スレイは久しぶりだね。なかなか私に会いに来てくれないから、寂しいよ。いつでも公爵の後を継いでくれて構わないんだけど?」
茶目っ気たっぷりにウインクをして、スレイ君に話しかけている。
ずいぶん親しいんだね。考えてみればスレイ君って、外交担当次官のラングダウン公爵様をお父様に持つ超エリートじゃないか。
「私には外交よりも、ジェイク様の下であれこれ動いている方が性に合っているんです。ラスティ様のことですから、有望株を見つけているんでしょ? 父から聞いております。その方を大切になさってください」
「そうか、残念。公爵も私も、いつでも待ってるから、気が変わったらおいで。ポストは準備してるからね。あとジェイクのこと、これからも頼むよ」
へえ、第六の仕事って意外と侮られがちなんだけど、スレイ君もラスティ様も団の立ち位置をしっかりと把握してるのね。
ラスティ様はジェイクのことを敵視するようなこともないみたい。
第二王子って立場からすれば、第三王子は自分の後釜を狙う存在、とか考えがちなんだけどね。周りの国でよく聞く、王座を狙うための暗躍とか野心丸出し、とかって雰囲気も微塵も感じないし。
いい兄弟じゃん、ほのぼのって感じ。
短いやりとりだったが、二人のジェイクに対する気遣いがわかって、ちょっと嬉しくなった。
何か私、この人のためだったら体張って護衛する気になるわぁ、頑張ろっと。
予定の時間となり、王子に付き添って会談の場へと赴いた。
アルベリアの使者は、抜け目のない顔つきの人だ。一緒にいる文官たちも、揃って隙のない顔つきをしている。
こわっ……とか思ってラスティ様とラングダウン公爵や他の文官さんたちを見ると、こちらも同様。
知らないうちに、私とスレイ君、向こうの護衛さん、併せて四人以外はみんな笑顔になってるが目だけ笑ってないという、空恐ろしい現場になっていたようだ。
外交って腹黒い人じゃないとやってけないね。みてるだけで胃が痛くなってくるし、何より心が寒い。
ラスティ様もスレイ君のお父様もすごいよ、感心しちゃうわ。私は剣術の方が好きだから、こんなとこは向いてないってすぐわかるよね。
会談という腹芸が終了、スレイ君をチラッと見ると、何やら難しい顔をしている。
今んとこ王子を狙うなんて、大胆な輩は存在しないので、そのままピッタリと王子に張り付いている。
次の予定は視察か。アルベリアは教育に力を入れ始める取り組みをしている、とかいう名目で、学校と美術館、博物館の訪問をするワケだ。
要は芸術家肌の使者が観光したいってことかな? ガヤガヤしたとこだと護衛も大変だから、正直助かる。これが市場見学とかだったら、狙われる確率大だよ。
視察の時間も問題なく過ぎ、無事王宮へと戻ってきた。ここまで警護したけど、アルベリアとの会談も視察も穏やかに済んだことだし、そんなに切迫した状況でもなさ気だよね。みんな気を使い過ぎじゃないの?
私は、情勢が不安な国を相手にしてることと、経験のない近衛の仕事ってことで、張り付いているだけなのに、エラく緊張しきってたようだ。王宮までの道のり、何ごともなかったことに安心し、ホッと肩の力を抜いた。
0
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
ガネット・フォルンは愛されたい
アズやっこ
恋愛
私はガネット・フォルンと申します。
子供も産めない役立たずの私は愛しておりました元旦那様の嫁を他の方へお譲りし、友との約束の為、辺境へ侍女としてやって参りました。
元旦那様と離縁し、傷物になった私が一人で生きていく為には侍女になるしかありませんでした。
それでも時々思うのです。私も愛されたかったと。私だけを愛してくれる男性が現れる事を夢に見るのです。
私も誰かに一途に愛されたかった。
❈ 旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。の作品のガネットの話です。
❈ ガネットにも幸せを…と、作者の自己満足作品です。
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる