第三王子のお守り騎士団

しろっくま

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第2章

30話

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 スレイ君は相変わらず難しい顔をしている。
 どうしたのか気になるのだが、今は任務中なので、話しかけるのもできない。
 とりあえず、次の会食会まで時間があるので、休憩の時にでも聞いてみよっと。

 アルベリアの使者たちを控え室に送り出したのを受けて、こちらも控え室で休憩の時間となった。

 小腹がすいた人は、簡単に摘めるような軽食やお茶、ワインなどがセッティングされている。すご~い、腹芸やってる分、一流のおもてなしは完備されてるワケだ。
 今日一日で感心ポイントがたくさんあるわ。やっぱ体験するべきだったのね。ニコラスには悪いけど、楽しい一日をありがとう。

 さてと、あとは会食会を残すだけか。
 あ、そうだ。スレイ君の難しい顔してた理由を聞きたかったんだよね……と、スレイ君どこだろ?

 グルっと見回すと、いたいた、何だ公爵と一緒か。でも二人とも厳しい顔だ。今は気軽に声がかけられないや、しょうがない。
 スレイ君の件は後回しにして、と。

 ん?   様子が変な侍女さんがいる。具合でも悪いのかしら?    声をかけて医務室にでも連れて行ってあげないと、倒れたら大変だもんね。

 そう思って、二、三歩歩き出そうとした時だった。

 先ほど様子のおかしかった侍女さんがスッとしゃがみ込んだのだ。ヤバい、貧血起こしたんじゃないの?    急がなきゃ。

 そちらを気にしつつ、人の間を縫ってなるべく早くたどり着こうとした。
 侍女さんは、再び立ち上がった。ああ、よかった、一瞬のめまいかな、やっぱり医務室行きだね、あの子。

 と、よく見ると、手元が光の反射を受けてキラリと光った。
 え?    ナイフ?     何で持ってるの?

 彼女は銀のトレイの陰にちょうど隠れるくらいのナイフを握り、ラスティ様目掛けて走り込んでくる。

 考えているヒマなんてなかった。
 勝手に体が動いて、ラスティ様と侍女の間に入り、自分の体でナイフの攻撃を受け留めた。

「……っうっ……ぐふっ」

 息ができない……目を見開き、口をハクハクさせながら膝から崩れ落ちる。

 スレイ君は少し離れた場所にいたので、こちらまでくるのに幾ばくかのタイムラグがあった。結果、侍女に飛びかかって取り押さえる方に回った。
 事務官に扮した護衛数人は、次々と王子をガード。あの様子だと王子は大丈夫だよね、よかった。

「……お嬢っ!     あー、もうっマズいっ、マズいぞ。お嬢っ!」

 捕まえた侍女をすぐさま別の人に引渡したスレイ君が、蒼い顔をしながら私を抱き起こし、間髪入れずに公爵に向かって叫ぶ。

「親父っ、とりあえずジェイクを呼んでくれっ、大至急だっ!」
「ス、レイ、君、だ、大丈夫、だか、ら……そんな、顔しな、いで……」

 私は震える手を彼の頬に当てニッコリと微笑んだ。
 こんなことでみんなとお別れするなんて、思いもよらなかったわ。やっぱりニコラスに怪我をさせたバチが当たっちゃったのかなぁ……
 でも王子が無事でよかった。スレイ君に言われた通り、体を張って守ったよ?

 ニコラスが復帰してからも褒められるよね。
 そうだよ、私の死はひっそりと隠されて、ニコラスが職場復帰するんだ。私の分までこれからのお仕事頑張って欲しいな、大丈夫、ニコラスならできる子だもん、問題ないね。

 ああ、ジェイクがやって来た。何か恐い顔してる……最後くらい笑った顔みせて欲しかったな。
 でもいいや、ちょっとでも見れたわけだし。
 安心して休むことができるわ……
 スレイ君の声が何となく遠くに聞こえてくる。

「おいっ、お嬢。ほら、目なんか瞑るんじゃないって。俺ひとりにするなって、お嬢っ!」

 もう『ひとりにするな』なんてセリフ、ジェイクならわかるけどさ……スレイ君まで寂しがり屋さんなんだから……でもお願い、ちょっと休ませて……

 私は、向こうからやってくるジェイクに笑いかけて、目を閉じた。
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