第三王子のお守り騎士団

しろっくま

文字の大きさ
40 / 50
第2章

37話

しおりを挟む
 日付け変わって、明くる日の昼過ぎになってますの。

 ゆうべは変身するための細かい打ち合わせやら、いろんなとこへの根回しでバタバタしていたので、知らないうちに泊まり込んでいた、という結果になっていた。

 つまりは、ジェイクのお部屋に二泊してるのに、未だにピンクな夜は迎えていない、ということなワケ。

 私的には眠るまで彼の顔見てられるから嬉しいのだけれど、泊まられた当人にとっては納得できる状況ではなかったらしく、非常に不本意な表情をしっ放しだ。

「ジェイク~、どっか変になってない?」
「ああ、大丈夫だ、問題ない」

 疲れた顔をしながら投げやり感アリアリで、私に応えてくれる。
 なぜにそんな顔をする?    
 私はやる気満々なのに。しかも、ずーっと苦虫噛み潰したような顔であまり目を合わせようともしない。
 何よ、人が頑張ってる姿を後押しするのも団長の仕事でしょう。

 私、ジェイクからお願いされて、もう一度ニコラスになるミッションを敢行中ですから。
 いやぁ、上司からの命令じゃ断れないしね、しょうがなく潜入捜査頑張ろか、と思ってるワケですよ、あくまでもしょうがなくね。

 それというのも、内乱をさけるために、アルベリアの使者と密会していたもう一人の貴族が誰なのか、炙りださなければならないらしい。
 現場を目撃したのは私一人、しかし声しか聞いてない状況だ。
 そのため、今回開かれるアルベリアの使者たちをもてなすパーティーに潜入し、その中に居るであろう貴族を目視して特定する、というのがニコラスに変装して行うミッション内容だ。

 私はスレイ君の遠縁の親戚で、今回は王都見学の一環でパーティーに参加するっていう設定になってる。いいじゃん、その設定。キョロキョロする私のことを考慮してってのが丸わかりだけれどね。楽しめるから目を瞑ってあげるわ。

「いいか、絶対にスレイの側を離れるんじゃないぞ。貴族を見つけたらスレイにすぐ報告しろ、決して単独行動するなよ?」
「わかったってばぁ、それ耳にタコできるくらい聞いたから。全くジェイクったら心配性なのねぇ」

 本当はジェイクと一緒にいる方が都合がいいらしいが、アルベリアの使者にニコルとしての姿をみられたのと、ジェイクに不穏分子が接触を図ってきた場合のその後の対処にも影響が出る、ということで、今回はスレイ君とニコラスの格好で組むことになったのだ。

 私は張り切って家に遣いを出し、ニコラスに変身するべく、サーラを急遽王宮まで呼び寄せた。

 今回はパーティーに出席するので夜会服になるのだが……

 さすがサーラさん、今回もスチャッと一式披露してくれましたよ。部屋に入った時の彼女が、鼻の穴を膨らませて頬を上気させているのを見た時は、若干引き気味になったけどさ。

 ベッドの上に広がるニコル用のニコラス服(夜会服バージョン)をジェイクが見た時に、ガックリと肩を落としたのには笑ったが。

「お嬢~、準備は進んでるかぁ?」

 スレイ君が部屋に入ってきて、私の出来栄えを確認する。うん、スレイ君、二割増しカッコよしですがな。

「おー、やっぱりサーラ殿ってすげぇな。このボディ最高だぜ」

 そう言いながら、私の胸とお腹をペタペタ触ってく。ふふふ、すごいでしょ。なんてたってサーラの仕込みは完璧ですからっ!

「……おい、スレイ。お前何ニコルに触ってんだよ。言っとくが、これでも女だからな」

 ジェイクの無茶苦茶不機嫌なもの言いに、スレイ君が慌てて両手を上にあげながら飛び退く。

「悪かった悪かった。しかし、ひと回り大きくしたらホントニコラスだもんなぁ、遠目じゃ絶対わからんって。これはこれで、ちんまりして可愛い感じもするしなぁ」

 おいっ、これでもってなんだいっ、これでもって。あたしゃ完全に女の子ですからあっ!
 まあ、最終的には二人とも女の子扱いはしてくれてるってことだよね、微妙なラインだけどさ。

 さて、サーラの最終チェックも済んで、いざ、パーティー会場へと移りますか。
 私は自分でも鏡を見つめて、改めて気合いを入れ直した。

「俺は王族側にいるから早めに出るが、お前たちはできるだけパーティーが始まった後から動けよ?    人が動いている中に紛れた方がバレにくいからな」
「はーーい」「了解」

 ジェイクの指示に私とスレイ君が同時に返事をする。さあ、お仕事の時間だわ、頑張らなくちゃ。


 ******


 会場はご婦人たちの色とりどりのドレスと熱気で華やかな雰囲気を醸し出していた。

「んー、この中から探しだすのかぁ、至難の技だな。お嬢、見つかんなかったら見つかんないでもいいからな。無理する必要ないぞ」
「うん、ありがとね。思った以上に人がいてびっくりだわ」
「そうかぁ?    だいたいこんなモンだぞ、ってああ、お嬢はあんまりパーティーとか来ないんだっけ」
「うん……だからちょっとは楽しみにしてたんだけど……」

 




 お母様の指示によって、私は社交の場には滅多に顔を出さない人間になっている。結果的には、ジェイクの花嫁として最も理想的な存在になっているのだが、そこまで計算して私を育ててきたのか、その部分は謎に包まれている。

 本当にそんなことを考えていたなら、お母様は真の魔女ってことなのかもしれないわ。
 お母様のニヤリとした顔が脳裏に浮かんで、思わずブルッと身震いしてしまった。

 しかし、人慣れしてない弊害だろうか、社交界からかなり遠い位置に置かれてる私には、この人数が波のように押し寄せてくる感じがして、もう既に人酔いしそうになっている。

「スレイ君、適当に歩き回って当たりをつけよう。早くしないと私、人に酔って倒れそう」
「おいおい、大丈夫かよ、わかった。あまり無理するな、急ぐぞ」

 スレイ君はご婦人やら紳士やらに挨拶しながら、少しずつ移動していく。私はその後からピッタリとくっついて、一応の愛想を振りまいてみた。
 半分くらい廻ってみたが、未だに収穫なし。
 ふうっとため息をついたところで、少し先にいるラスティ様と目が合った。向こうからこちらにやって来てくれるみたいだ。

「スレイ、先日は迷惑かけたね。こちらは私の命の恩人さんかな?    本当にありがとう。君がいなかったら、今私はここに居ないと思うよ。刺されたと思ったけど平気なの?」
「こんばんは、ラスティ様。私、ちょっとした細工をしてましたので、全然大丈夫です。お気遣いありがとうございます。仕事ですのでお礼はいりませんよ?」

 私はラスティ様からお礼を言われて恐縮して答えた。
 スレイ君がニコニコしながら私を紹介してくれる。ただし、隠したい内容なので小声で。

「こんばんは、ラスティ様。こちらニコル・テイラード嬢。訳あって今は弟の格好をさせてます。先日もこの格好でしたね。ジェイク様の婚約者になります」
「ああ、君なのか。ジェイクもなかなか面白い子を見つけたねぇ。しかも婚約者殿に命を救われるなんて、私は彼に頭があがらないよ」

 冗談混じりに話されて、余計に恐縮してしまい、カチコチに固まってしまった。
 しばらくラスティ様と雑談し、内偵を続ける旨伝えて、移動した。

 まずは飲みものでひと息ついて、仕切り直ししよう、と言うことで、スレイ君に取りに行ってもらった。

 ラスティ様に会った緊張と人混みから抜けだすために、私はなるべく外気に触れようと窓辺に移動した。

 その時だった。この間聞いた声が、近くから聞こえて来たのだ。どこかの紳士と雑談している様子だ。近づいてもう一度確認してみよう。

「……ですな。ルートルード殿も人がお悪い、ガハハハ……」
「いやいや、ロンダード殿こそ、隅に置けませんなぁ」
「では、ご一緒しますか?    ガハハ」

 うん、間違いない。ロンダードって人がこの間の貴族だ。確か伯爵だっけ、子爵?      かなんかだっけ?       あーん、貴族名鑑、もっと読み込んどくんだったぁ。貴族っていっぱいいて覚えらんないもの。適当に開いてたのを今になって後悔するなんて。

 スレイ君に知らせなきゃ。
 ヤバいよ、なんか移動するっぽい。ここで逃したら逢えるかどうかわかんないし……
 単独行動は止められてるけど、しょうがないよね、少し後を尾けて、すぐ引き返して報告することにしよう。

 自分では名案に思えたこの行動が、敵の張ったワナにまんまとハマりに行くことになってしまうとは考えもつかず、ノコノコと尾行を開始した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる

若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ! 数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。 跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。 両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。 ――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう! エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。 彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。 ――結婚の約束、しただろう? 昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。 (わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?) 記憶がない。記憶にない。 姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない! 都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。 若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。 後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。 (そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?) ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。 エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。 だから。 この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し? 弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに? ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。

ガネット・フォルンは愛されたい

アズやっこ
恋愛
私はガネット・フォルンと申します。 子供も産めない役立たずの私は愛しておりました元旦那様の嫁を他の方へお譲りし、友との約束の為、辺境へ侍女としてやって参りました。 元旦那様と離縁し、傷物になった私が一人で生きていく為には侍女になるしかありませんでした。 それでも時々思うのです。私も愛されたかったと。私だけを愛してくれる男性が現れる事を夢に見るのです。 私も誰かに一途に愛されたかった。 ❈ 旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。の作品のガネットの話です。 ❈ ガネットにも幸せを…と、作者の自己満足作品です。

[完結]7回も人生やってたら無双になるって

紅月
恋愛
「またですか」 アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。 驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。 だけど今回は違う。 強力な仲間が居る。 アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

処理中です...