第三王子のお守り騎士団

しろっくま

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第2章

36話

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 これ以上お近づきになりたくない私と正反対に、アルベリアの使者は私に興味を持ってきている。マズい、どうにかしてここから逃げたいんですけどぉっ!     誰か助けて~。

「ニコル、どこ隠れてるんだ、帰るぞ」

 うっわぁ、最悪……なんでジェイクが来んのよ。それこそ誤魔化さないと、私がジェイクの身内ってバレちゃう。さっきの話しぶりだと、ジェイクの関係者だと知れると利用される率が高いと思われるし。スレイ君と一緒の時にも、私の存在は周りにバレると危険だって言われたしね。

 なんとか他人のフリしないと。

「ああ、ジェイク様、王宮があまりに広くて迷っておりましたたら、こちらの紳士からお声掛けいただきまして。私に侍女の仕事は無理でしたので、こちらに伺うこともないと申し上げていたところです」

 私が自分なりに設定した状況を瞬時に理解してくれたようで、ジェイクも適当に話しを合わせてくれる。

「おお、これはアルベリアの使者殿でしたか。私の連れが失礼しました。やはり田舎者には王宮は華やか過ぎたようでして。私の屋敷に連れて帰るところでした」
「あなたは確か……第三王子。あなたの知り合いでしたか。よろしければ、そちらの者をお譲り頂ければ、私がアルベリアで仕事の世話でもしてやるかと思っていたところです。いかがでしょうか」

 嫌ーーっ、私アルベリアに売られちゃうーーっ。すかさずジェイクがフォローに入った。

「いえ、このような粗忽者、使者殿に申し訳がない」 

 ん?    なんか落とされてるんだけど。粗忽者ってどーよ。ちょっとカチンときたけど、まずは逃げることしなきゃいけないからね、我慢するか。

「その代わりにもっと見目良いご婦人を紹介しますよ、使者殿には洗練された女性の方がお似合いだ。東屋あずまやにてお待ち下さればすぐにでも。お茶を用意しておきますよ? それではまた後ほど」

 ジェイクは私の手を引き、その場を強引に離れた。
 さっきまでいた部屋まで戻り、完全に扉が閉まった瞬間、ギンッと睨まれ先ほどの状況説明を求められた。

「……お前はなんでこうも次から次へと。俺が行かなきゃ拉致されていたぞ、頼むから寿命を縮ませないでくれ」

 焦ったような、安堵したような、そんな顔をして強く抱きしめられた。その表情にドキドキして頰が赤くなる。ちょっとぉ、いつもの怒ってる方の顔してよ。私の心臓こそ持たないわよ。

 俯きがちに顔を隠していたら微妙に不機嫌な声で「あの野郎にどこ触られた?」と尋ねてくる。

「いや、髪の毛をひとすくい触られただけですからっ。気にしない、気にしない」

 そこにキスされたなんて言ったら、髪の毛剃られるかもしれない。焦りながらそれだけだ、と必死になって言い張った。
 一生懸命に髪の毛に息を吹きかけ、汚れを払ってる様子に思わずクスッと笑ってしまった。

「他にないか?」と問われるが、プルプルと首を横に振って、何もなかったことにする。なんとなく疑いの目でジッと見つめてくるので、慌てて話題を切り替えた。

「たまたま散策してたら出逢っちゃったのよ。不可抗力だから。それよりもね」

 私は先ほどのアルベリアの使者とどっかの貴族との密会の報告をした。

 話しを聞いたジェイクは、ものすごく難しい顔をしてる。
 しばらく唸り声を出して、ウロウロしてから「あー、クソーーっ」と苛立った声を上げる。

 何がどうなってるのかわからず、しばらく彼の行動を眺めてると、私をチラッとみながら、深く深ーくため息をついた。
 そして、その口から驚きの言葉が飛び出してきた。

「ニコル、お前、もう一度ニコラスになってみるか?」
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