血の契約

琉玖

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出会い

無気力少女

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「あ、大丈夫大丈夫。気にしないで」

 
 唖然としている俺を差し置いて、目の前の謎の少女は言う。

「あれ、あ、ここ…六枚目っ!?」

 目の前の少女は何を言っているんだ。少しだけ落ち着いた俺にはそれを考えるほどに正気が戻ってきた。

「六枚目って、一体なんだ…?てかお前は…?」


 案外スラスラ出てくる言葉に驚きつつ、返答を待つ。すると少女は、あっ、と思い出した顔で言った。

「その前に、まずは名乗ってから。

自分の名前は露月 紫苑ツユツキ シオン。紫苑って呼んでねー。純血の吸血鬼及び日本人。人じゃないってツッコミには反応しませーん」

 
「きゅ、吸血鬼…!?」
 
既におかしなことが起こっているせいか、驚き過ぎてひっくり返るなんてことは無いが、やはり言葉は失ってしまうもの。日本で一般的に知られる類の生物でまだ理解が早く助かった。

「あ、俺は崎野 慎夜サキノ シンヤ。それで、六枚目って…?」

 
紫苑は、面倒臭そうに首を回して、地面にぺたりと座り込んで話し始めた。


「まず、この世界には違う惑星が存在するとか、次元が違うところに存在するとか、そういうのじゃないんだよね。同じ世界に色々な生物が生きている世界がある。一枚目の世界にいれば他の世界は見えないし、二枚目の世界にいれば他の世界はもちろん見えない。一枚目には私達人型の生物。二枚目には動物型の生物。三枚目と四枚目は何もなくて、五枚目は獣人。いずれも住んでる者は魔力があるね。六枚目は人間。魔力がない永遠のワーストナンバーワンだね。」

 
眠そうに話す紫苑の瞼は、今にも落ちそうだ。

「つまり、同じ時に同じ場所にいても他の枚数にいれば認識出来ない、ってこと?」

 
そういうことだよ。なんて言った紫苑は、勢いよく立ち上がった。そのまま羽を広げて、紫色の魔法陣のようなものを手から出した。

 
「そして、一番の重要事項。ほかの枚数の世界に行っても魔法の力は変わらない。つまり、魔力を使える者がいない六枚目に、魔力が使える一、二、五枚目の者が大量に来てしまえば、この六枚目は滅びるってことだ。自分は三枚目に誰かが無断で住み着いていないか点検しようと思ったら間違えて六枚目に来てしまったって感じだね。あと補足。一枚目の中でも一番の地位は吸血鬼。自分はそこの王様の娘。すごい偉いんだよ」

 



 
 驚いた。驚きすぎたのと同時に、ドヤ顔でいう紫苑に無性にイラつきを覚えた。


 
「まぁでも、六枚目にも魔力を持った者が入り込んでないか、ついでに見てみようかな…。ねぇ、崎野慎夜さん。良かったら力を貸してくれない?」

 今度は何を言っているんだこいつは。
 先程言われた通り、魔力がないんだから自分ができることなんてないのではないか。

「大丈夫大丈夫血をくれるだけでいいからさ!」





…は。
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