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 カーテンの隙間から夕日が差し込んでくる。
 赤い光だ。
 火のように赤い。
 相手が差し出してくれた舌を、時間をかけてあやし続ける。
 強張っていた舌が、反応を返してくるようになってようやく、肌を撫でた。

「平気か?」
「たぶん」

 服を脱がし、唇を這わしていく。

「ツッ! 林、やっぱり、俺、こんなこと。俺達はこんなことをしちゃ、駄目だ!」

 向井は体を起こし、俺をどかそうとした。

「今だけ全部忘れろ。今だけは俺を好きになれ」

 首を横に振る向井を、抱き寄せる。

「俺も忘れる」
「無理だ!」

 それは悲鳴だった。
 ベッドに倒れ、体を丸めてボロボロと泣き出す。

「俺は、お前のことが、好きだよ」

 向井がハッとして顔を上げた。

「誰よりも、大切だ」

 真っ青になって、逃げようとする向井を、抱きすくめる。

「好きだ」

 向井は顔を引きつらせながら、耳を塞いだ。

「好きだ。俺を好きになれ」
「口が軽いっていうのは、後悔のもとだぞ。相手への優しさは自分への優しさであって、エゴだ。そして、そのエゴに押されたなら、林は俺を軽蔑する」
「しねえよ」

 向井は嘲笑した。

「タガが外れれば、楽になれるのにな」
「外せばいい。簡単だろ? 女も男も関係ない」
「そうじゃない。林は何も分かっていない」

 俺は頭を掻き、相手を組み敷いた。
 男を見つめた同級生の顔に、唾を呑み込む。
 暗がりの部屋で、そいつは陶酔するように、俺を見つめていた。
 その手が頬に当てられる。

「向井?」
「林は俺の」

 そこで言葉を切ると、向井は腰を浮かし、荒々しく息を吐いた。

「来て……」 

 俺は必死だった。
 今までしてきたどんなセックスよりも、神経を使って、相手の快楽を煽り、継続させ、頂点へと導いていった。
 正直、誰かのイク顔とか悶える顔とか、二の次のセックスしか、知らなかった。
 俺さえ気持ち良くなれれば、それでよかった。
 それはつまり、心がなくても、体の相性がよければ、良しとしてきたってことだ。
 俺は特定の子を抱きたいって、一度も思ったことがなかった。
 俺の心は、セックスで変化しなかった。
 体の付き合いだけで良い、と迫ってきた子も、最後には俺の抱き方を貶した。
 心も渡して欲しいんなら、最初から、そう前置きをすりゃあ、良いじゃないか。
 そんな俺の言い分は、女どもに通用せず、逆に、彼女達の感情を逆なでしてしまう。

「私はあなたみたいに冷淡になれない。こういうことって、二人でするものでしょ!」

 ジェンダーの違いなど、くそ食らえだ。
 男は一人でも満足できるんだよ。
 だけど、今日、俺はセックスによって起こる、心の化学反応って奴を、知った。

 
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