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高校三年になった一心の傍に、朔はいない。
朔は中学三年になる前に、東京へ越していった。
それでも、数ヶ月は、文通をしていた。
言い出しっぺは、朔だった。
どうやって、自分達の繋がりを保とうか、と考えていた際、当時、携帯電話を持たず、パソコンのキーボードもまともに打てなかった一心が、落ち着いてやりとりできる方法が、手紙しかなかったため、朔が合わせてくれたのだ。
お互いの安否と近況報告、そして、いつか会いたいという、お決まりのフレーズ。
受験勉強の手をとめ、一心は手紙を書いた。
何通目かで、「どうして、です・ます調なんだよ」と指摘され、それからは、だ・である調で書いた。
夏期講習を終え、休む暇も与えられず、冬期講習へ突入し、手紙を書く頻度が減った。
年賀状は出した。
朔からは、寒中見舞いが届いた。
葉書には、パソコンで打たれた定型文がのっていた。
思い返せば、今、世界を蝕んでいる奇病も、この頃からテレビで見聞きするようになっていた。
当時から、母は「怖いわね」と眉を歪ませていたが、発症者が片手で足りるほどの人数であったため、一心は怖さを実感できなかった。
それに、たとえ、奇病が恐ろしくとも、受験は免除されない。
一心は自分にかされた課題を、やり切ることに集中した。
そして、きっと、朔も、受験勉強で忙しいのだ、と、無味乾燥な葉書に、一心なりの理由をこじつけた。
ことが変わったのは、受験まで一週間を切ったときだった。
奇病にかかる人の数が、一気に増えたのだ。
今まで、芸能人のあら探しに明け暮れていたメディアが、いっせいに、奇病の報道へと舵を切った。
そんな渦中であったにも関わらず、奇病は人から人へ移ることはない、との専門家の見解で、受験は日程もそのままに行われた。
試験の自己採点は、まずまずだった。
帰りの電車で、窓の外をぼんやり見つめながら、一心は朔に手紙を書こうと思った。
お決まりのフレーズに、少し言葉をつけたそう、と思いつく。
会おう。いつ、会える?
だけど、いくら待っても、朔から返事はこなかった。
朔は自分の周囲が変わったことで、気持ちも変化し、一心を友だちの枠から排除したのかもしれんあい。
直接、朔から言われた訳でもなく、自己解釈の域を出ないのに、心臓が鈍く痛んだことを覚えている。
それは一心にとって、懐かしい感覚だった。
そして、今では、遠い日の幻のような感覚になった。
朔は中学三年になる前に、東京へ越していった。
それでも、数ヶ月は、文通をしていた。
言い出しっぺは、朔だった。
どうやって、自分達の繋がりを保とうか、と考えていた際、当時、携帯電話を持たず、パソコンのキーボードもまともに打てなかった一心が、落ち着いてやりとりできる方法が、手紙しかなかったため、朔が合わせてくれたのだ。
お互いの安否と近況報告、そして、いつか会いたいという、お決まりのフレーズ。
受験勉強の手をとめ、一心は手紙を書いた。
何通目かで、「どうして、です・ます調なんだよ」と指摘され、それからは、だ・である調で書いた。
夏期講習を終え、休む暇も与えられず、冬期講習へ突入し、手紙を書く頻度が減った。
年賀状は出した。
朔からは、寒中見舞いが届いた。
葉書には、パソコンで打たれた定型文がのっていた。
思い返せば、今、世界を蝕んでいる奇病も、この頃からテレビで見聞きするようになっていた。
当時から、母は「怖いわね」と眉を歪ませていたが、発症者が片手で足りるほどの人数であったため、一心は怖さを実感できなかった。
それに、たとえ、奇病が恐ろしくとも、受験は免除されない。
一心は自分にかされた課題を、やり切ることに集中した。
そして、きっと、朔も、受験勉強で忙しいのだ、と、無味乾燥な葉書に、一心なりの理由をこじつけた。
ことが変わったのは、受験まで一週間を切ったときだった。
奇病にかかる人の数が、一気に増えたのだ。
今まで、芸能人のあら探しに明け暮れていたメディアが、いっせいに、奇病の報道へと舵を切った。
そんな渦中であったにも関わらず、奇病は人から人へ移ることはない、との専門家の見解で、受験は日程もそのままに行われた。
試験の自己採点は、まずまずだった。
帰りの電車で、窓の外をぼんやり見つめながら、一心は朔に手紙を書こうと思った。
お決まりのフレーズに、少し言葉をつけたそう、と思いつく。
会おう。いつ、会える?
だけど、いくら待っても、朔から返事はこなかった。
朔は自分の周囲が変わったことで、気持ちも変化し、一心を友だちの枠から排除したのかもしれんあい。
直接、朔から言われた訳でもなく、自己解釈の域を出ないのに、心臓が鈍く痛んだことを覚えている。
それは一心にとって、懐かしい感覚だった。
そして、今では、遠い日の幻のような感覚になった。
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