泡影の異世界勇者《アウトサイダー》

吉銅ガト

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第2章 王都フレンテと魔王の影

18話 新天地、王都フレンテ

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 馬とトカゲの中間のような姿をした四足歩行の魔物キャルーから降りた俺は、立派な門の前に立つ衛兵らしき人物に接近した。こそこそ黙って門を通ることも考えたが、まず間違いなくこの男に止められるだろうと考え、素直に話しかけることにしたのだ。まだ午前中とはいえやはり炎天下で全身鎧は暑いのか、衛兵は顔を汗まみれにして籠手を着けた重そうな手で仰いでいる。
「すみません、ここは王都で合ってますか?」
「ああ、そうだ。ここがフレントーラ王国随一の魔法の都にして王の住まう都市、”フレンテ”だ。お前は……、見た感じ商人って見た目ではないし、さしずめ田舎からの出稼ぎってところか。それにしちゃあ随分と貧相な装備だが……。まあいい。すまないが所持しているものをすべて見させてもらう。煩わしいだろうが新しくできたここの決まりでね」
 そういって門番の男は俺とキャルーの持ち物をチェックし始めた。服の仲間で検査する厳しい検査ぶりには少々驚いたが、それだけセキュリティの整った都ということなのだろう。
「……よし、大丈夫そうだな。協力感謝する。……ごほん、ようこそフレンテへ! せいぜいこの街で余計な面倒は起こさないようにな」
 よかった、ひとまずフレンテの中に入ることは可能になったようだ。まずはキャルーを貸してくれた夫婦の知り合いの元へ、こいつを届けに行かなければならないので、この衛兵にキャルーの厩舎のある場所を尋ねてみることにしよう。
「厩舎ならこの街にはいくつかあるが、ちょっとそのキャルーを見せてみろ」
 そう言って衛兵はキャルーの鞍についている札を見た。何やらマークが描かれたそれを見てしばらく思い出すように首をひねった後、ああ、と声を漏らした。
「確かその札は北東にある厩舎のものだったな。あの辺は建物もあまりないし、門から入って少し東のほうに歩けば見えてくるはずだ」
「なるほど、北東ですね。ありがとうございます。……ではこれで失礼します」
「ああ、お前の滞在が良いものになることを願っているよ」
 親切な門番に頭を下げて、俺は大きな門をくぐって王都フレンテに足を踏み入れた。

 城壁都市的な街並みを、俺はキャルーを引いて歩き始めた。採光の観点からだろうか、壁付近にはあまり家が建っておらず、代わりに細い石畳の道がぐるりと壁の近くを通っている。
 しばらく歩いていると、右手に見えていた建物が次第に遠くに離れていき大きな草原が見えてきた。……いや、草原ではない。目を凝らすとあちらこちらにキャルーの姿が見える。つまりはここがキャルーの牧場なのだろうか。ひとまずここを目的地だと当たりをつけて、俺は草むらの反対側にある厩舎らしき建物に向かって歩き出した。
 午前中の日差しが差し込む厩舎に近づいていくと、中にしゃがみこんで何やら作業をしている男の姿が見えた。服装はグレン村の村人たちが着ていたような民族的衣装で、こちらに背を向けているので顔は見えないが、雰囲気だけで判断するに年齢は五十歳くらいだろうか。
「すみません、グレン村のキャルーを預けに来たんですが……」
 俺の声を聞いてその男はゆっくりとこちらを振り返った。ちょび髭が愛嬌ある優しげな表情をしたおじさんだ。
「おお、グレン村のオウェナさんとこのキャルーだね。うん? 確か預かりは一か月後じゃなかったかね?」
 麦わら帽子的なものを脱いで立ち上がると、彼は俺とキャルーに歩み寄った。しゃがんでいた時にはわからなかったが、このおじさん、かなり身長が低い。ちょうど頭のてっぺんの位置にキャルーの口当たりが来るのでそのくるくるの髪の毛がもしゃもしゃやられないか少し心配だ。
 そういえば俺がキャルーを借りたのはオウェナさんという人だったということを今ここで初めて知った。名前を聞くこともなく出てきてしまったのだから、俺もオウェナさんたちも相当にいっぱいいっぱいだったらしい。
「えっと、多分それで合っていると思うんですけど、俺が王都に行くためにオウェナさんにこの子を貸していただいたんです」
「おお、そういうことかい。しっかしグレン村なんて遠くからキャルーに乗ってくるとはなあ……。私なら一日で音を上げてしまいそうだよ、ははは」
 陽気に笑うおじさんを見て俺はフェルテルを思い出していた。もうフェルテルはいないとわかっていてもあの太陽のような笑顔をまた見たいと思ってしまう。感傷に浸って複雑な表情になる俺を見て彼は不思議そうな顔をした。
「大丈夫かね? なんだか悲しげな顔をしているが……」
「いえ! 大丈夫です。考え事をしていただけです。……そういえばお互い名乗っていませんでしたね。上木壮真といいます」
「私の名前はレンドだ。よろしく頼むよ、ウェキソーマ君」
 ……なんとなくレンドさんの復唱した俺の名前に違和感を覚える。この人うぇきそーまと言わなかったか? 
「えっと、すみません。俺の名前は”うえきそうま”です。上木が名字で、壮真が名前ですね」
 するとレンドさんは驚いた顔を作った。どこに驚く要素があったのか全く見当もつかないので、俺はとりあえず彼の返答を待つことにした。
「君は貴族か何かなのかね? 名字を持っているのはこの国では貴族くらいなものだよ」
 なるほど、俺に名字があることに驚いていたのか。確かにグレン村でも自己紹介をしたときには村の人はみな名字を名乗らなかったし、俺自身もそれに合わせて名字を名乗っていなかった。やはりこのフレントーラという国は日本とはかなり異なる文化を持っているようだ。
 俺は貴族だということにしておけば権力を振りかざすような真似はできるかもしれないが、それは道徳的にアウトな気がするので、ひとまずはレンドさんの誤解を解くとしよう。
「いやいや、俺は貴族なんかじゃないですよ。しがない旅人です。俺の故郷の国ではどんな人でも名字を持っているんですよ」
「へえ! そんな国があるのかい、面白いもんだ。……私はキャルーを貸し出す仕事をしているんだが、やはり旅人たちの冒険譚は聞いていて飽きないよ。いつかは私も……、いや、今のは忘れてくれ」
 そう言ってレンドさんはしみじみとした顔でキャルーのいる草むらの方を見やった。彼は今はキャルーを貸す仕事をしているが、実際には自分が乗って旅をしたいんのではないだろうか。
 ひとまず名字の話は置いておいて、俺は荷鞍から必要な物をすべて取り出すと、四日間ともに王都を目指した相棒をレンドさんに預けた。厳しい旅をともにしたキャルーに俺はいつしか友情のようなものを感じるようになっていたので、ここでお別れになるのは少々寂しいというのが事実だが、ずっとこいつを連れ歩き続けるわけにもいかないので仕方がない。
 レンドさんに連れられていくキャルーをその場で立ち尽くして眺めていると、おもむろにキャルーがこちらに振り向いた。そしてレンドさんから離れて俺のそばまでやってくると、その長めの頭部を俺の胸に優しくぶつけてきゅるる、と悲しげな声で鳴いた後、再びレンドさんの元に戻っていった。今起こったことだけで判断するのは早計であるかもしれないが、あいつも多少は俺に心を開いていてくれていたのかもしれないなとすこし嬉しくなった。いつかまたキャルーを借りなければならなくなったら、絶対にあいつを選ぼう。俺はそう硬く決意した。
「ありがとうございました! では失礼します!」
 俺は牧場の方へ去っていくレンドさんの背中に大声で礼を言うと、王都の内部に向けて歩き出した。

 俺が王都を訪れた目的は日本、ないし元の世界に帰る方法に関する情報を集めるためだ。というわけでここで俺はどうにかして情報を収集しなければならないのだが、見知らぬ文化圏の見知らぬ街でいかにして情報を集めるべきだろうか。
 う~ん、と思案を巡らせながらひっそりとした細道を歩いていると不意にお腹が情けない悲鳴を上げた。そういえば今日は朝から何も食べていないし、もう時間は正午になろうとしている。ひとまずは何かを食べて腹を満たしてから今後の方針を立てるとしよう。と、そんな作戦を立てたところでグレン村でもフェルテルと同じようなやり取りをしていたことを思い出し、またもや心にチクリと鋭い棘が刺さった。なんでもフェルテルにつなげて立ち直ることなく自分勝手に落ち込んでしまう自分がなんとも情けない。前方からこちらに歩いてきた初の通行人に変な目で見られないように、俺は平静を装って道を急いだ。
 やがて俺が歩いてきた細道は一本の大きな道につながった。道路を右に左に行き交う人、道端に並ぶ様々な出店、そして一回に店舗が入った三階建ての建造物の群れ。グレン村ではまず見られない光景に見入ってしまう。これがこのフレントーラなる国の王都か。心の中のワクワクに促されるまま俺は細道を抜けて大通りを散策することにした。

 大通りに出てとりあえず周囲を観察してみる。道行く人々の服装は俺やレンドさんと同じようなもので、この民族的と言っていいのかわからない服が一般的な服だと再確認した。また、大通りを走っていく馬車のような乗り物も見えた。てっきりキャルーが馬の役割を完全に置換していると思っていたのだが、どうやら馬にもしっかり職場が与えられているようだ。恐らくはキャルーと馬の間には何らかの違いがあるのだろう。そんなことを考えつつ、俺は観察を終了して出店を覗いてみることにした。

 最初に訪れた出店にはアクセサリーらしきものが売られていた。大小さまざまな宝石がはめ込まれた指輪やらネックレスやらは見ていて飽きが来ない。少し気になりはしたが、別にアクセサリーを持ったとて見せるような相手は存在しないので必要ないか、と考えて俺はここらで物色を中断してアクセサリーショップを出た。

 最初の出店から離れた後、歩行者の波に流されるままにたどり着いたのは料理の出店だった。やけに巨漢な店主の背後にはピザ窯のようなものが置いてあり、今まさにその中で食べ物がおいしそうな香りを辺りに振りまきながら焼かれている。途端に再び空腹感がこみ上げてきて、俺は我慢できずにこの店で昼食をとることに決めた。まだ少しノルト村長からもらった保存食が残っているが、あれはもしもの時のために取っておくとしようと強引に理性を納得させた。
 どんなメニューがあるのかと出店を見回すと、受け渡し用のカウンターの上にメニューの書かれた木の板が置いてあるのが見えた。さて何を食べようかと見てみるが、当然メニューは日本語などではなくフレントーラ語とやらで書かれているので、数日前に覚えた記憶を必死に引き出しながら読むしかない。これから情報収集していくなら勉強して読み書きくらいはできるようにならなければと心に留めてメニューを解読していくと、なんとか最初に書かれているメニューが”パエーゼ”なるものであることが分かった。恐らく元の世界にはない料理なので全くもって見た目や味の見当はつかないが、メニュー表の中でひときわ目立つように大きな字で書かれているので多分この店の名物なのではないだろうか。警戒心よりも好奇心が勝った俺はこのパエーゼを頼むことにした。
 かなりの時間ああでもないこうでもないとじっとメニュー表を睨みつけていた俺に若干胡散臭そうな顔をしている店主に、パエーゼ一つください! と喧騒に負けないように大声で注文する。それを聞いた店主はおう! ちょっと待ってな! と負けないくらいの声で返答して後ろにある窯に向かった。窯の中にある肉的なものをずらして、淡い褐色の塊をその隙間に放り込む。数分後、こんなもんかな、と一言つぶやいて店主は巨大なヘラのような道具で先ほど入れた塊を取り出した。入れる前に比べて一回りほど大きくなったそれを慣れた手つきで紙袋に包んでいく。窯から出したばかりなのに熱くないのだろうかと少し心配になりながら見ていると、
「はいよ、六十レカだ」
という声とともに紙袋に包まれたパエーゼ──一見するとやや茶色いパンにしか見えない──が俺の前に置かれた。レカなる単位に全く聞き覚えはないが、食べ物を買ったということは代金を要求されるはずなので、恐らくお金の単位なのだろう。俺は持っていた荷物をがさがさと探して硬貨の入った袋を取り出して袋の口を開いた。中には何種類かのコインが入っているが、複数の貨幣単位を持つ国でない限りは、この表面にフレントーラ語の数字の一と零の印字がある鈍色の硬貨が十レカだろう。確かによく見ると下方に小さくレカと書いてある。俺は十レカ硬貨を六枚袋から取り出すと、差し出された店主のたくましい手に慎重に載せた。毎度! という威勢のいい声とともに再び窯の番に戻っていった店主を見送って、俺はパエーゼをカウンターから拾い上げて店を後にした。余談になるが、店主が涼しい顔で包んでいたパエーゼは信じられないほど熱かった。
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