泡影の異世界勇者《アウトサイダー》

吉銅ガト

文字の大きさ
29 / 74
第2章 王都フレンテと魔王の影

27話 マナーゼンの秘技

しおりを挟む
 ローガンさんの下で修行を始めてから早くも一週間が経過した。
 最初は街の外周を走っただけでヘトヘトだったのに、気がつけば難なくこなしてローガンさんの激しい訓練にもついてこられるようになっていた。この成長力といい回復力といい、やはりこの世界に来てから俺の体は明らかにおかしくなっていると思う。
 今日も外周を体感一時間と少しで走り終えて公園に戻ってくると、ローガンさんが杖を突いて待っていた。
「お疲れ様です。なかなか早くなってきましたな。その調子で今からの訓練も頑張りましょう」
 俺がローガンさんに師事する目的は、前回大敗を喫した巨大なカニの魔物”オーベルセルム”へのリベンジだ。今後食い扶持を稼ぐためにマナーゼンを続けるとなると、万が一再びそのような強力な魔物と遭遇してしまったときに対処できるだけの力を身につけたいと思ったのだ。その旨を伝えるとローガンさんは、よほど勝てなかったのが悔しかったのですな、と懐かしむような顔で俺に言った。なんでもローガンさんも若い頃は魔物にボコボコにやられて帰ってくることも多かったらしく、強くなるために先輩のマナーゼンの弟子として修行をしていたそうなのだ。今のローガンさんを見るとそんな頃があったという事実が信じられないが、その話を聞いて少しだけローガンさんの過去を垣間見れた気がしてなんとなく嬉しかった。
 お互い向き合って各々得物を構えると、心臓の鼓動が大きく聞こえてくるほどの静寂が流れる。じわりじわりと緊張の糸が張り詰めていき、臨界に達したその瞬間、強力な磁石が引き付けあうかのように俺たちは飛びかかった。木剣と杖が衝突し、受け流し、コンマ一秒たりとも隙のない組手が繰り広げられていく。
 トップスピードで剣を振り続け、戦いの中に一瞬の油断が出来た時、俺の脇腹にローガンさんの稲妻のような速さの突きが刺さった。今になって気づいたことだが、最初のローガンさんとの組手の時、彼はかなり手加減していたらしい。修行をしていくたびにどんどんローガンさんの攻撃の苛烈さが増していったが、しかし次第に目が慣れて太刀筋ならぬ杖筋が目視できるようになってきたのだから自分のことながら成長速度が恐ろしい。
「今日もありがとうございました」
 痛撃された脇腹をさすりつつ木剣を腰の鞘に納めてローガンさんに言う。ローガンさんの修行の組手は、どちらかの武器が相手に入れば終了するというルールになっているが、俺は始まってから一度もローガンさんに攻撃を見舞うことができていない。つまりはローガンさんに一撃を決められて毎回終わってしまっている。何とかしてローガンさんに一矢報いたいと思ってはいるものの、どれだけ変則的な攻め方をしてもローガンさんには通用しないのだから、毎度毎度ぐぬぬといったところだ。
 そんなしょげている俺を見て、ローガンさんはいつものようにほっほと笑う。
「落ち込むことはありませんぞ。ソーマさんもかなり出来つようになってきてはいますが、ワシにも矜持というもんがありますからの。まだまだ負けるわけにはいきませんわい」
「俺自信無くしちゃいそうですよ……」
「ほっほ、大丈夫です。明日、ソーマさんにマナーゼンの秘技をお教えいたしましょう。その技をものにできればさらなる成長が出来ますぞ。楽しみにしておいてくださいな」
 気になる言葉を残して去っていくローガンさんの後ろ姿を、俺はぼーっと見つめていた。マナーゼンの秘技とは一体……。俺の心の好奇心の膨れ上がりに比例するように、昼前の空には巨大な入道雲がそそり立っていた。

 次の日。
 毎朝恒例のランニングを済ませた後公園に向かうと、いつものようにローガンさんが立っていた。しかし一つだけいつもと違うところがある。ローガンさんの代名詞ともいえる杖をなんと今日は持っていないのだ。
「おはようございます。今日は杖を持ってこられていないんですか?」
 俺はそのままに疑問を口にするとローガンさんが静かに口を開いた。
「今日の稽古は組手ではないですからの。ソーマさんも今日は木剣はわきに置いておいてくださいな」
 とりあえず言われたままに木剣を鞘ごと腰のベルトから外して少し遠くに置いて戻ると、ローガンさんが頷いて話をし始めた。
「今日はソーマさんにマナーゼンの秘技をお教えいたしましょう。まず、ソーマさんは魔法の心得はありますな?」
「そんなに上手いっていうわけではないですけど一応使えますね」
「ならばコツをつかむのも早いでしょう。というのも今から教えるのは体内のマナを利用した技術なのです。ひとまず手本をお見せいたしましょう」
 そうしてローガンさんは一歩後方に下がると、精神を統一するように深呼吸をする。何が始まるのかとドキドキしながら待っていると、いきなりハァッ!! というローガンさんから出たとは思えない気迫の籠った一声が響き、尋常ではない超速度で上段蹴りが繰り出された。もはや人体でなせる行為には到底思えないその蹴りによって発生した風が数メートル離れたこちらにも吹き付けてくる。よく見ると振り上げられた足が描いた軌跡が青く光っており、足が元の位置に戻るとその青い光も倣って次第に消えていった。
 唖然としている俺に向かってローガンさんが言う。
「これがワシらマナーゼンの秘技にして体術と魔法の合わせ技、”まとい”です」

「まあまずは仕組みを解説したほうが理解しやすいですかの」
 先ほど俺の目の前でとんでもない超常現象を引き起こした張本人であるローガンさんはいつもの調子に戻って話し始めた。
「”纏い”というのはその昔マナーゼンによって編み出された技術です。マナを纏うので”纏い”という名になったそうですが、後に分かったその原理は、纏うという表現とは少々異なるようですな。そもそも体内にあるマナというのは、人間の活動の中で力の源が蓄えられた状態になっております。魔法というのはその蓄えを変換するものですから、これは納得できますな?」
 確かにライさんからもらった教本の中に書いてあったのを覚えている。力の源というのがいわゆるエネルギー的な物なのだろう。どうやらマナというのは、体内でADPからATPを創り出してエネルギーを貯蔵するような仕組みを同じく採っているらしい。つまりはエネルギーを持っていない”何か”に体内でエネルギーを与えることによってマナという形になるということだ。
 俺がふむふむと頷くと、ローガンさんも満足そうに頷いて話を続ける。
「マナは限定的ではありますが魔法の詠唱なしで力に変換できるのです。無論魔法ほどの効率は出せませんがな。先ほどの蹴りは”纏い”でさらに速度を増したということですな」
「なるほど、そういうことなんですね……。じゃあさっき蹴りが青く光っていたのはなんでなんですか?」
「ああ、あれは魔法適性の高い属性に対応した色の光が、動きの力に変換しきれなかった分として零れておるのですよ。ワシが水属性に適性があることがばれてしまいましたな、ほっほ」
 ローガンさんが相変わらず呑気に笑う。
 とりあえずなんとなくの原理は理解できたような気はするが、実際に自分がそれをやるとなると何をどうすればいいのか全く見当もつかない。体内のマナを扱うのだから魔法に近い感覚なのだろうか?
「それでは実際にやっていきましょうかの。段階的にいきますぞ。まずはそうですな……、右手にマナを集めてくださいな」
 いわれるがままに俺は意識を集中させてマナを右手に集めようと試みる。毎朝欠かさず朝一番に魔法の練習をしているのでこれくらいならまさに朝飯前だ。ある程度マナが集まったことをローガンさんに伝えると次の指示が来る。
「ここからがなかなか難しいですぞ。まずはマナを右手に集めたまま正面を殴ってみてください」
「この状態でですか!?」
 マナを集めている状態は常に意識を集中させている状態なので、マナの集中をキープしたまま激しく動くのはかなり難しい。それでも無理やり拳を突き出すと、案の定せっかく集めたマナは拡散していってしまった。ぐぬぬと再びマナを集めてはパンチ、集めてはパンチを繰り返していると段々と殴った後も右手に残っているマナが増えてきた。
 傍からマナは見えないので何やら難しそうな顔をして虚空を殴っている奇妙な男にしか見えないだろうが、新たな技術を手に入れるためなのだ、致し方ない。
「いい感じになってきましたな。それではこの感覚を忘れずに、次の段階へと参りますぞ。ソーマさん、魔法を使った時のマナが失われていく感覚、というかマナを消費している感覚はなんとなくわかりますか?」
「ああ、あの何とも言えない……。心のお腹が空いているみたいな感じ、ですかね……?」
 俺の表現にローガンさんは微妙な顔をして頷く。はて、俺の感覚はそんなにおかしかっただろうか。
「まあ良いでしょう。そうしたら先ほどの拳を振り出す瞬間にその感覚を起こしてみてください。拳の進む方向に力を加えるという意識をすると成功しやすいと言いますな」
「は、はあ……。やってみます」
 なんというか急にアバウトな指示が来たものだ。つまりは腕をさらに押すイメージをしながら腕を振ればいいのだろう。さっきまでのようにマナを集めてパンチしてみるが、悲しいほどに何も変化がない。汗だくで何度も空中に腕を振り出す俺を見かねてローガンさんが声をかける。
「すぐにはできるようなものではありませんから心配する必要なありませんぞ。暇な時があったら練習してください。いつか急にできるようになるものですからの。今日はここまでにしておきましょう」
 俺を励ますとローガンさんは去っていった。そういえば今日は杖をどこに置いているんだろうかと、どうでもよい詮索が疲弊した頭の中を巡る。いかんいかんと頭を振って、今日はここで練習を切り上げて俺は昼食にすることにした。

 公園を後にした俺は、初めて王都を訪れた時に寄った焼き物料理の出店に向かった。もはや顔馴染みになった店主のやたらガチムチな大男に代金を払ってお気に入りの包み焼き料理パエーゼを買うと、熱々のそれに勢いよく齧り付きながらギルドに向かって歩き出した。少々マナーがなっていないというか、あまり褒められた行為ではないかもしれないが、元の世界に帰るために時間を節約しながら行動したいのでご勘弁いただきたい。
 しばらくうだるような暑さの中を歩いてようやくマナーゼンのギルドまでやって来た。若干涼しいギルド内に入り屈強な男たちが並ぶカウンター待ちの列に俺も加わった。
 数分待つと俺の順番になり、エナセラさんにいつものように狩りに行くことを伝えて剣の貸し出しもお願いした。オーベルセルムとの戦いで獲物を二本とも失ってしまったので、仮に出るには料金を支払って剣を借りなければならないのだ。いつか新しいものを買いに行かないとなあと思いつつ貸し出された剣を受け取ると、俺はギルドを出て街の外にある森に向かった。

 まだ修行中であるのにまたオーベルセルムのような凶悪な魔物に出くわすわけにはいかないので、俺はあの日のように無謀なことはせず森の浅いエリアで魔物を探している。しばらく草木をかき分け歩き回っていると、正面から自分が立てているものとは異なる音が聞こえてくる。比較的小さなこの足音は恐らく──。息をひそめて木の陰に隠れて待っていると、カサカサと音を立てて草むらからウサギほどの生き物が飛び出してきた。この魔物は”ホッペン”。魔物にしては珍しい草食の魔物で、初心者でも簡単に狩ることが出来ると言われている。だがそれは”この世界のネイティブなマナーゼンにおいては”という話であって、ちょろちょろと逃げ回るこの魔物に俺は毎度毎度手を焼かされていたのだった。しかし攻撃がなかなか当たりにくいのなら、逆に纏いの練習台になるかもしれない。
 ホッペンがこちらに近づいてくるのを木陰に潜んで待っていると、不意に振り向いたホッペンとばっちり目が合った。その瞬間、俺とホッペンは恋に落ちる──なんてことは起こることは当然ながらなく、驚きの鳴き声を上げたと思えばすぐにその小柄な体躯を活かして反対向きに方向転換して走り出していた。
「ちょっ、待て!」
 俺がホッペンを追いかけ始めたころには、すでにそいつは前方十メートルほど先を疾走していた。参った、走っても恐らく追いつけはしないだろう。何か対抗策はないかと考えあぐねながら追いかけていると、俺の頭にふと化け物ガニとの戦いの記憶がよみがえってきた。逃走した俺に向かって大ガニの魔物オーベルセルムは自らの鋏を発射して攻撃してきた。確かに遠距離の相手でも物を投げつければ命中させて足止めくらいならできるかもしれない。そうだ、ここで纏いを使えばさらなる攻撃力の上昇が見込めるかもしれない。
 俺はホッペンを追随しながら足元も見回して手ごろな石を拾い上げると、マナを右手に込めて思い切り振りかぶった。しかし纏いは発動されることなく、飛んでいった石もホッペンの走る方向とは異なる方へ転がる。午前中の訓練では単に拳を突き出すだけでもまともに纏いを発動できなかったのだ、さらに投げるなんてモーションを追加されてしまっては成功しないのも至極当然と言えるだろう。
 そこから先は何とも間抜けな狩りになってしまった。ホッペンを追いかけては投げる、追いかけては投げると繰り返し、俺とホッペンは森を縦横無尽に走り抜けていく。始めてから一時間ほど経った頃だろうか、もう何度目かわからない石を投げつけることになった時、俺は纏いを発動するためのイメージを少し変えてみることにした。要するにもっと具体的な力が加わる現象を考えてみればよいのだ。一番身近なイメージ……、落下だ。身近すぎて忘れそうになるが、落下という現象も地球の万有引力によって地球の中心方向に引き付けられているはずだ。
 かなり疲弊してきた右手に再びのマナを集中させる。狙うは遥か先の小さな魔物。頭の中で目標へと向かう直線に近い放物線をイメージして左足を踏み込む。そして、投げる動作とまっすぐ放物線の向かう方向へ落下するイメージを重ね合わせた瞬間。
「うわあッ!!」
 腕が頭の上あたりに到達したところで、石を握る右手の中でバチリと何かが弾けるような感覚が発生した。その未知の感覚の到来に、ついに来たかと心臓がドキリと跳ねた途端に右手からおびただしい紫の光が溢れ出し、まるで自由落下しているかのように加速していく。紫の帯を引きながら振り抜かれた右手から飛び出した石は、弾丸を思わせる速度で森の中をほぼ直線に飛び出していく。そのまま正面のつるや枝を粉砕しながらホッペンに迫り、不自然なほどきれいに奴の胴体を撃ち抜いた。
「え? マジで……?」
 紫の光の軌跡がフェードアウトしていく。限界を超えた速度で振られたことによる右腕の疼痛と魔法行使時とよく似たマナの欠損の感覚を覚えながら、俺は茫然とその光景を眺めていた。この時、俺はついに纏いを発動できたのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

世界最強の七賢者がお世話係の俺にだけはデレデレすぎる件

Y.
恋愛
国の頂点に君臨し、神にも等しい力を持つ『七賢者』。 火・水・風・土・光・闇・氷の属性を極めた彼女たちは、畏怖の対象として国民から崇められていた。 ――だが、その「聖域」の扉を一枚隔てた先では、とんでもない光景が広がっていた。 「アルトぉ、この服脱がせてー。熱いから魔法で燃やしちゃった」 「……アルトが隣にいないと、私、一生布団から出ないから」 「いいじゃない、減るもんじゃないし。さあ、私と混ざり合いましょう?」 彼女たちの正体は、私生活が壊滅的にポンコツで、特定の一人に依存しきったデレデレな美少女たちだった! 魔法の才能ゼロの雑用係・アルトは、世界で唯一「彼女たちの暴走魔力に耐えられる」という理由で、24時間体制の身の回りのお世話をすることに。 着替え、食事の介助、添い寝(!?)まで……。 世界最強の7人に取り合われ、振り回され、いじり倒される。 胃袋と心根をガッチリ掴んだお世話係と、愛が重すぎる最強ヒロインたちによる、至福の異世界ハーレムラブコメ、開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依
ファンタジー
 氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。  死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。  大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...