秘伝賜ります

紫南

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第二章 秘伝の当主

058 霊界でも調査中です

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2018. 6. 6

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雛柏教授から借り受けた資料の解読など、高耶はここ数日、ずっと屋内に閉じこもっていた。その成果もあり、ようやくその記述を見つけることができた。

ここまで資料を読んではそこに記載されている資料を探し、またそこに書かれた資料を探すという地味で気の遠くなるような作業を続けていたので、たった一つでも有力な情報を見つけられたことに満足していた。

「それで、じいさん。霊界の方で情報を得られたか?」

その記述を裏付けるために、充雪には霊界に行ってもらっていたのだ。

《いや、まだだ……霊界で口が利ける奴で、長生きしてんのはそうそう見つけられんくてな……》
「あ~……なるほど。簡単じゃなかったか」

そうそう上手くはいかないらしいと分かり、肩を落とす。

《けどよぉ。言われて思い出したんだが、霊界の中に封印された場所があるらしいんだ。そこが怪しいな》
「可能性としては高いな……そこが鬼の国か……」

資料から分かったのは、鬼が暮らす鬼だけの国が存在したということ。

その場所は、どこよりも美しい土地であり、夜が支配していたという。そして、鬼は愛らしい子どもの姿をしていたらしい。

「あの時解放された鬼は子どもの姿だった。あれが本来の姿ってことなのかもしれない」
《なら、どうやって国になるほど子どもを殖やしてたんだ?》
「鬼も妖だ。霊的な力が集まって自然発生するものってことだ」

特異な力の塊が生まれなければ鬼となることはないはずではあるが、人の中から生まれるような生まれ方はしない。

「資料の一つに『鬼は水晶から生まれる』というのがあった。それが一番、なんでか納得できた」

高耶は、幾度と見た夢の中で、クリスタルの輝く木を見た。だからかもしれない。とはいえ、ただの勘のようなもので、実際のところは分からない。

《ん? そんなら、鬼渡は?》

鬼渡家は鬼の血を引いている。

「恐らくだが……鬼の子どもを宿すクリスタル……水晶の代わりに女の体に宿ったんだろう。人の子が宿るように……そうして人と鬼が交わった。昔、霊界に異端者を追放する儀式があったらしくてな……多分、それだ」
《それは俺も知らねぇな……どんだけ昔だ?》
「少なくとも、秘伝家が参入する前だ」

これを知ってから、気になっている。鬼渡の目的とは何なのか。

異端者として霊界に送られたのなら、そうして送った相手は憎いだろう。もしかしたら、彼女達はこちら側の存在全てを憎んでいるかもしれない。

特に、彼女達が味方として鬼を封じている陰陽師達を憎むだろう。そして、鬼を殺し得る力を持つ高耶を知ったなら、真っ向から敵対するかもしれない。

「しばらくは鬼に手を出さないつもりだ。相手の事情も知らず、敵対するってのは、俺たちの主義に反する」
《だなっ。おっし、聞き込み行ってくらぁ》
「お、おい。門を開けなきゃならんだろうがっ」

充雪の空回りを止めながら、高耶も気合いを入れるのだった。

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読んでくださりありがとうございます◎


敵か味方かではなく
なぜ敵なのかまではっきりさせたいんです。


次回、水曜13日0時です。
よろしくお願いします◎
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