秘伝賜ります

紫南

文字の大きさ
114 / 463
第三章 秘伝の弟子

114 やる気があるようなので

しおりを挟む
小学校での騒動から数日が経った。

統二も色々と経験したことで術者としての自覚が強くなったらしい。

今までよりも陰陽術の修行を本気でやると決意し、学校が終わってから夕食までの時間、術の特訓をしていた。

「焦ってはいけませんよ。継続させることが大事です」
「はいっ」

高耶はずっと付いていられないので、先生役はもっぱら瑶迦だ。彼女の中で弟子にすることは決定していたので、特に問題はなかった。

「ヨウカねえっ。トウジおにいちゃんっ。ごはんできたよ~」
「あら。では今日はここまでですね」
「ありがとうございました」

統二に付き合って、学校が終わったら優希も瑶迦の家で宿題をして夕食を一緒に取る。

まだ統二はドアを繋げるというのが得意ではない。なので、自宅の物置のドアと瑶迦の屋敷のドアを高耶が固定したのだ。

この術はかなり高度で術式がとてつもなく面倒くさいのだが、やる気になっている統二のためにと頑張った高耶だ。

夕食はこうして高耶の家族がこちら側へ来て瑶迦と取るようになった。瑶迦がとても嬉しそうにするので、もっと早くやれば良かったなと少しばかり反省した。

《統二。体も鍛えんといかんぞ》
「はいっ。充雪様。頑張りますっ」
《うむうむ。素直な若者は良いなあ。なあ、高耶。お前には昔っからこういう『ぴゅあ』さが欠けておるぞ》
「はいはい。ピュアな。俺がああなったら気色悪いだろ」
《……っ、うぇっ》
「そんなにかっ!」

瑶迦の所と高耶の家では、充雪が視えるようになっている。優希がお喋りしたがるので、充雪も嬉しそうだ。

ついでに統二という新しい弟子ができたとはしゃいでいる感もある。

当主として充雪を視えるのは、相性と素質の問題だ。なので、統二が次の当主というわけではない。視えるという環境を与えたため、資格云々の話にはならないのだ。

「まあまあ、でもそうですねえ……高耶さんの小さい時はちょっと余裕がありませんでしたし、統二さんの反応は新鮮で良いですわ」
《だなあ。というか高耶は教えたらすぐものにするし……ちっとは悩んでこっちを頼ってくれれば可愛げもあったのになあ》
「教え甲斐はありますけど、やっぱり教える身としては物足りないですわよね?」
「……」

なぜ今更ダメ出しされているのだろう。教えられたことを真面目に習得したのに文句を言われるとは理不尽だ。

「何でもできてしまうというのも面白くないんですよ? なので、統二さんはいっぱい悩んで、いっぱい頼ってくださいね」
「えっと……はいっ。精一杯努力します」
「っ~、はあっ、可愛いわっ」
《こっちも頼れよ~っ》

統二が大人気だった。

「おにいちゃん。かわいくない子どもだったの?」
「どうなんだろうな……」
「でも、おにいちゃんはカッコいいからだいじょうぶだよっ」
「……ありがとうな……」

優希に慰められながら屋敷に戻ると、父母が既に席に着いていた。

「父さん、母さんお帰り」
「ただいま~。いやあ、ここに来るとやっぱり癒されるね~。こんばんは、瑶迦さん」
「こんばんは、樹さん、美咲さん。お仕事お疲れ様です」
「瑶迦さんにそう言われると、なんだが今日も頑張った甲斐があったって気がするわっ」
「ふふ。それは良かったですわ」

二人も仕事が終わったらとりあえずこちらへ来て夕食を一緒に取るという日課に慣れてきたようだ。

この後、お風呂にも入ってから自宅へ戻る。そうして、また一日を過ごすというサイクルが完全にできてしまっていた。

食事をしながら、今日あったことを話し、週末の予定を話し合う。それが瑶迦には楽しくて仕方がないらしい。

「今度のお休み、高耶さんはお仕事だったかしら。統二さんも連れて行かれるのよね?」
「ええ。経験しておくのは良いかと」

統二は積極的に高耶の仕事を手伝いたがっている。とはいえ、高耶が請け負う仕事は難しいものも多い。そこは、現役の首領として任される仕事内容だ。これに連れて行ったところで統二も何をやっているかわからないだろう。なので、連れて行けるのはそういった仕事ではない時だけだ。

「秘伝の仕事ですか?」

秘伝の方の仕事ならば、統二も連れて行っている。だが、今回は違った。

「いいや。この間の落ち武者がいた場所の調査だ」
「……そういえば、あれは他の場所から連れて来られたんですよね……」

現れた小学校からはかなり離れた土地に眠っていた亡霊達。それがごっそり移動したのだ。元居た場所にも何らかの影響があるはずだった。

「ああ。あれだけのものが浄化されずにいたってことは、神が鎮めてくれていたんだろう。その神の様子を見てくる必要がある」
「神様ですか……本当に僕が付いて行っても……」

統二は、小学校で土地神と対面した時、その力に当てられて気分が悪くなった。少し苦手意識があるようだ。まだ自分には早いのだと思っている。そんな自分を連れて行くことで、高耶の迷惑になってはいけないと考えているのだ。

「今回も源龍さんがついてきてくれるし、俺もいるんだ。心配するな」
「……分かりました。お願いしますっ」
「ああ」

前向きになっている今だからこそ、統二には頑張ってもらいたい。

「そういえば、二葉君が兄さんに話したいことがあるみたいでしたよ」
「ん? そうか。メールはまだ入ってないが?」
「何か探してから連絡するって言ってました」
「分かった。それにしても……仲良くなったのか?」

雰囲気的には、統二が苦手にしそうな子だという印象だった。

「う~ん……どうかな? 前よりちゃんと会話できるようにはなったとは思います」
「そ、そうか……」

統二が軽く言うので問題はないのだろうが、以前までは会話にならなかったというのが気にはなった。だが、今大丈夫ならば良いのだろう。

「メールが来たら、すぐに会えるようにしておくよ」
「はい。お願いします」

再会してから格段に明るくなった統二に、高耶も嬉しく思うのだった。

**********
読んでくださりありがとうございます◎
2019. 5. 29
しおりを挟む
感想 675

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」 魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。 ――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。 「ここ……どこ?」 現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。 救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。 「ほら、食え」 「……いいの?」 焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。 行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。 旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。 「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」 「ウチの子は天才か!?」 ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。 これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。 ※若干の百合風味を含みます。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

義務ですもの。

あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。

処理中です...