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第四章 秘伝と導く音色
166 こっちの依頼は大丈夫
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高耶は壁の向こう側に意識を向ける。すると、気付いた家守りが近付いてきたようだ。
《……何用や?》
「っ?」
エリーゼと同じような訛りを感じて、とっさに高耶は答えられなかった。気を取り直して心の中で告げる。
(手書きの楽譜を探しております)
《……さよか》
(捜索にご協力願えないでしょうか)
ここで中に入れてくれと頼むのは良くない。高耶は慎重に言葉を選んだ。
《わっちに何の得があるん?》
(そうですね……)
かなり警戒しているのが感じられた。恐らく、綺翔や黒艶の気配もずっと感じていたのだろう。何百年と生きてきた家守りであっても、高耶と契約している式達には勝つことができないのだから。
(しばらくすると、家の改装工事が始まります。私ならば口添えすることが可能ですが、いかがですか?)
《……》
改装をすることで、この隠されてしまった場所をも壊してしまうかもしれない。昔と違い、リフォームも柱だけの状態にしてから行うことが増えているのだ。そうなれば、家守りが留まっていられる可能性はかなり低くなる。
(現代では家の改築に柱以外を全て取り払う方法が使われます……耐えられますか?)
家守りが本当に力を付け、家の主人との関係も強い場合。大黒柱さえ無事ならば憑いていられると聞いたことがある。だが、それが現代では難しい。
(家主との関係を持たない状態では、あなたは……っ)
その時、威圧を感じた。怒ったのだ。
《家主はおる! ここに! わっちと共に居る!》
「……まさか……」
高耶はふと感じたもう一つの気配に目を見開いた。
「っ、高耶君……今、すごい力を……」
源龍だけでなく、様子を見るのについてきていた陽達まで顔色を失くしていた。何歩か下がったようだ。
「あ、すみません。少々怒らせたようです」
「大丈夫なのかい?」
「ええ……」
高耶は立ち上がって息を整える。
「少し過去視をします」
その言葉で、源龍達は静かに口を閉じた。
「……これは……っ」
視たのは今の家になる随分前の過去。目の前の壁の向こうはまだ廊下が続いていた。その奥は主人の部屋なのだろう。
「……墓にしたのか……」
何かの役割を持つ一族だったのだろう。その最後の当主が亡くなった後、神のように祀られ、ここを社として手をつけることを禁じた。
「……修さん。少し時間をいただけますか?」
「え? あ、もちろん。今日中に無理かなとは思ってたからね」
「いえ、依頼の楽譜はこちらではなく、こっちの壁に……」
この場所で改めて過去視をしたことで、楽譜がこの奥ではなく手前の地下にあることが分かった。
高耶は小さな絵画の飾られていた右手の壁に手を突く。絵画を少し持ち上げると、壁が動いた。
「あ、隠し扉っ」
「そんなところに……」
「すごいっ」
陽は本当に隠し扉があったと驚き、修は呆然とする。仁は目を輝かせていた。
それらの反応に苦笑しながら高耶が足を踏み出そうとした時。黒艶が待ったをかけた。
《奥の影響が出ておる。主は入らぬ方がいい。生身の体では不調を来す。浄化は奥のものが片付いてからの方が良かろう。我が取ってきてやる》
「そうか……わかった。頼む」
《うむっ。任せるといい!》
黒艶は嬉しそうに中へ入っていく。その手にはエリーゼを掴んだままだ。
《え、ウチも!? ちょっ、いつ離してくれるん!?》
《さあな》
《ひぃぃぃ》
「……」
あれは面白がっているなと黒艶の背中を見送った。
楽譜はあっさり見つかった。高耶が確認して間違いないと頷く。その間に黒艶が扉を閉じた。封印も施したようだ。
「これです」
「あ、か、確認させてもらうよ」
修は最初の数小節だけのものをポケットに持っていたらしく、それと見比べた。
「ま、間違いないよ……ありがとうっ。本当にありがとうっ」
「いえ。ただ、あと数小節が書かれていません。リビングに戻ってその部分がないか過去視で確認しましょう」
「お願いするよっ」
とりあえずピアノのあった部屋に戻っていく。
「奥のはいいのかい?」
陽に尋ねられ、高耶は表情を曇らせる。
「この場所にあった一族の記録を照会してもらう必要があります。手をつけるのはその後です。ただ、社というか、当主の墓のようなものになっているようなので……人を何人か呼ぶと思います。修さん。いいでしょうか」
改めて修へ尋ねる。
「……このまま工事をはじめたら良くないとか?」
修は、エリーゼを見てから確認した。
「ええ。恐らく事故も起きるでしょう。奥にいる家守りは力が変質化しているようです。呪われることも……ないとは言えません」
「っ……頼んでもいいのかな」
「はい。依頼料とかも気にしなくていいですよ。こちらの業界の不始末になりますから」
「……お願いします」
約束は取り付けた。
************
読んでくださりありがとうございます◎
《……何用や?》
「っ?」
エリーゼと同じような訛りを感じて、とっさに高耶は答えられなかった。気を取り直して心の中で告げる。
(手書きの楽譜を探しております)
《……さよか》
(捜索にご協力願えないでしょうか)
ここで中に入れてくれと頼むのは良くない。高耶は慎重に言葉を選んだ。
《わっちに何の得があるん?》
(そうですね……)
かなり警戒しているのが感じられた。恐らく、綺翔や黒艶の気配もずっと感じていたのだろう。何百年と生きてきた家守りであっても、高耶と契約している式達には勝つことができないのだから。
(しばらくすると、家の改装工事が始まります。私ならば口添えすることが可能ですが、いかがですか?)
《……》
改装をすることで、この隠されてしまった場所をも壊してしまうかもしれない。昔と違い、リフォームも柱だけの状態にしてから行うことが増えているのだ。そうなれば、家守りが留まっていられる可能性はかなり低くなる。
(現代では家の改築に柱以外を全て取り払う方法が使われます……耐えられますか?)
家守りが本当に力を付け、家の主人との関係も強い場合。大黒柱さえ無事ならば憑いていられると聞いたことがある。だが、それが現代では難しい。
(家主との関係を持たない状態では、あなたは……っ)
その時、威圧を感じた。怒ったのだ。
《家主はおる! ここに! わっちと共に居る!》
「……まさか……」
高耶はふと感じたもう一つの気配に目を見開いた。
「っ、高耶君……今、すごい力を……」
源龍だけでなく、様子を見るのについてきていた陽達まで顔色を失くしていた。何歩か下がったようだ。
「あ、すみません。少々怒らせたようです」
「大丈夫なのかい?」
「ええ……」
高耶は立ち上がって息を整える。
「少し過去視をします」
その言葉で、源龍達は静かに口を閉じた。
「……これは……っ」
視たのは今の家になる随分前の過去。目の前の壁の向こうはまだ廊下が続いていた。その奥は主人の部屋なのだろう。
「……墓にしたのか……」
何かの役割を持つ一族だったのだろう。その最後の当主が亡くなった後、神のように祀られ、ここを社として手をつけることを禁じた。
「……修さん。少し時間をいただけますか?」
「え? あ、もちろん。今日中に無理かなとは思ってたからね」
「いえ、依頼の楽譜はこちらではなく、こっちの壁に……」
この場所で改めて過去視をしたことで、楽譜がこの奥ではなく手前の地下にあることが分かった。
高耶は小さな絵画の飾られていた右手の壁に手を突く。絵画を少し持ち上げると、壁が動いた。
「あ、隠し扉っ」
「そんなところに……」
「すごいっ」
陽は本当に隠し扉があったと驚き、修は呆然とする。仁は目を輝かせていた。
それらの反応に苦笑しながら高耶が足を踏み出そうとした時。黒艶が待ったをかけた。
《奥の影響が出ておる。主は入らぬ方がいい。生身の体では不調を来す。浄化は奥のものが片付いてからの方が良かろう。我が取ってきてやる》
「そうか……わかった。頼む」
《うむっ。任せるといい!》
黒艶は嬉しそうに中へ入っていく。その手にはエリーゼを掴んだままだ。
《え、ウチも!? ちょっ、いつ離してくれるん!?》
《さあな》
《ひぃぃぃ》
「……」
あれは面白がっているなと黒艶の背中を見送った。
楽譜はあっさり見つかった。高耶が確認して間違いないと頷く。その間に黒艶が扉を閉じた。封印も施したようだ。
「これです」
「あ、か、確認させてもらうよ」
修は最初の数小節だけのものをポケットに持っていたらしく、それと見比べた。
「ま、間違いないよ……ありがとうっ。本当にありがとうっ」
「いえ。ただ、あと数小節が書かれていません。リビングに戻ってその部分がないか過去視で確認しましょう」
「お願いするよっ」
とりあえずピアノのあった部屋に戻っていく。
「奥のはいいのかい?」
陽に尋ねられ、高耶は表情を曇らせる。
「この場所にあった一族の記録を照会してもらう必要があります。手をつけるのはその後です。ただ、社というか、当主の墓のようなものになっているようなので……人を何人か呼ぶと思います。修さん。いいでしょうか」
改めて修へ尋ねる。
「……このまま工事をはじめたら良くないとか?」
修は、エリーゼを見てから確認した。
「ええ。恐らく事故も起きるでしょう。奥にいる家守りは力が変質化しているようです。呪われることも……ないとは言えません」
「っ……頼んでもいいのかな」
「はい。依頼料とかも気にしなくていいですよ。こちらの業界の不始末になりますから」
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約束は取り付けた。
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