324 / 463
第六章 秘伝と知己の集い
324 憎まれにくい性格
しおりを挟む
同窓会の開始の十五分前。
参加者達のほとんどが前日には到着しているということ、会場が滞在する同じ旅館内ということで、開始ギリギリの時間が集合時間となっていた。
ちょっと忘れ物と思っても、部屋にすぐ戻れば良いだけなので気楽なものだ。
中には、温泉に浸かってから来たという者もおり、とてもリラックスした様子での集合となった。
「うわっ。めっちゃみんな着飾ってんじゃん」
「部屋あるから、着替えやすいもんな~」
結婚式の二次会のような雰囲気にはなる。女性は特に華やかに着飾っていた。お化粧も着替えも、部屋が用意されているのでやりやすいだろう。
慣れないヒールで自宅から離れた会場に向かうということもないのだ。遠慮なく着飾れるというものだった。
「こうして見ると、泊まりって正解かもな」
「確かに」
そんな話を満と嶺が席について話していた。
そこへ、最終の確認として部屋ごと、机ごとでまとまっている人数をチェックしに来た露子が同意する。
「本当にそうよね。終わったらすぐ化粧落として、温泉に直行。それで即寝落ちすることが出来るもの」
食事も出て来るし、布団も敷いてもらえる。至れり尽くせりで楽しめる。何より、着飾るというのは、意外と疲れるものだ。オシャレには我慢も必要。それを家まで帰るまで我慢する必要がないのは有り難いというわけだ。
「喋り過ぎてとか、気疲れする子もいるだろうし、会場をここにして本当に正解だったわっ。和泉の思い付きも、たまには本気で聞いてみるものよね」
「え……和泉の……?」
槇が目を丸くした。
「そうよ? 同窓会をしたいって言うのは、瀬良さんとか、女子の方で考えてたんだけど、場所の選定が面倒でね……大学生だし、あの辺、大学とか近くにないし、結構地元から出て行ってる。けど、そっちに気を使って、都会の方でとかなると、それ以外の負担が大きいし、何より、店が大きいと高いのよ。駐車場も困るし」
交通の弁も良く、店が多くなる都心では、それほど大くの人数を受け入れてもらえない。駐車場に困ったりもする。
コインパーキングの値段も馬鹿にならない。公共交通機関を使って来る人の事を考えれば、駅の近くだ。そうなると余計に駐車場は割高になる。
「先生達は自家用車で来るんじゃないかなって思うと、駐車場でお金払ってもらうのもねえ。まあ、ケチらないだろうけど、イヤらしいじゃない?」
気にしないかもしれないが、こちらとしては気になる。教師はご招待。お金もこちら持ちだ。けれど駐車場代はかかりますよと言うのは気分的に良くないだろう。
「用意するこっちとしても、車で来たかったし」
ゲームをすることで出す景品も運ばなくてはならない。それらを考えると中々開催に踏み出せなかったらしい。
「だから、和泉が夫馬君に連絡取って、ここでってなった時はびっくりしたわ。駅からの送迎バスもあるし、駐車場にお金もかからない。けどまさか、旅館一つ貸し切ろうなんてね。アホかと思ったわ」
「「「確かに……」」」
「……」
突然『なら、旅館貸し切ろうぜ~』なんて言ったのだろう。俊哉ならやるかもしれないと、満、嶺、高耶、それと槇は思った。突然の意外な提案をするところは、小学生の頃から変わっていない。
「まあ、結果的にすっごい理想的で、出席率も高くなったんだけどね。あいつが生徒会長じゃなくて良かったわ……」
「「「「確かに……」」」」
全員同意する。彰彦も頷いていた。
露子は笑いながら、手元の名簿にチェック印をつける。
「けど、アイツが居なきゃ、実現しなかったわ。情報網がエグいのよ。アイツ一人で三分の二以上の連絡が取れたからね。まあ楽しんで行ってよ。蔦枝君もね。修学旅行のやり直し。楽しんで」
「ああ……」
俊哉の一番の目的はコレだろう。武雄の旅館を使えると聞いて、高耶と修学旅行のやり直しができると本気になったらしい。
思えば、気難しい蓮次郎までもいつの間にか期待している。補佐役として使えると思われている俊哉だ。情報網など、情報収集の能力も高いのだろう。
そして、あの性格は憎まれにくい。
「俊哉ってすげえわ……」
「あんな落ち着きないのにな……」
ここでも落ち着きがないという評価を受ける俊哉。けれど、それでいいのだろう。それも個性だ。
高耶が何気なく忙しなく準備に駆け回る俊哉を見ていれば、不意に入口の方を見て彼ら顔を顰めて見せた。とはいえ、一瞬だ。
それが気になって、俊哉の視線の先に目を向けると、高耶も思わず眉根を寄せた。
女子達を引き連れながら、入ってきた白いスーツの男が、顔に特大の口灯蛾をくっ付けていたのだ。
そして、その男は会場を見回し、真っ直ぐにこちらのテーブルの方へと向かってきた。
槇が腰を浮かせたのを見て、目的はここかと始まる直前の面倒事の予感に、頭を抱えたくなったのは仕方がない。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
参加者達のほとんどが前日には到着しているということ、会場が滞在する同じ旅館内ということで、開始ギリギリの時間が集合時間となっていた。
ちょっと忘れ物と思っても、部屋にすぐ戻れば良いだけなので気楽なものだ。
中には、温泉に浸かってから来たという者もおり、とてもリラックスした様子での集合となった。
「うわっ。めっちゃみんな着飾ってんじゃん」
「部屋あるから、着替えやすいもんな~」
結婚式の二次会のような雰囲気にはなる。女性は特に華やかに着飾っていた。お化粧も着替えも、部屋が用意されているのでやりやすいだろう。
慣れないヒールで自宅から離れた会場に向かうということもないのだ。遠慮なく着飾れるというものだった。
「こうして見ると、泊まりって正解かもな」
「確かに」
そんな話を満と嶺が席について話していた。
そこへ、最終の確認として部屋ごと、机ごとでまとまっている人数をチェックしに来た露子が同意する。
「本当にそうよね。終わったらすぐ化粧落として、温泉に直行。それで即寝落ちすることが出来るもの」
食事も出て来るし、布団も敷いてもらえる。至れり尽くせりで楽しめる。何より、着飾るというのは、意外と疲れるものだ。オシャレには我慢も必要。それを家まで帰るまで我慢する必要がないのは有り難いというわけだ。
「喋り過ぎてとか、気疲れする子もいるだろうし、会場をここにして本当に正解だったわっ。和泉の思い付きも、たまには本気で聞いてみるものよね」
「え……和泉の……?」
槇が目を丸くした。
「そうよ? 同窓会をしたいって言うのは、瀬良さんとか、女子の方で考えてたんだけど、場所の選定が面倒でね……大学生だし、あの辺、大学とか近くにないし、結構地元から出て行ってる。けど、そっちに気を使って、都会の方でとかなると、それ以外の負担が大きいし、何より、店が大きいと高いのよ。駐車場も困るし」
交通の弁も良く、店が多くなる都心では、それほど大くの人数を受け入れてもらえない。駐車場に困ったりもする。
コインパーキングの値段も馬鹿にならない。公共交通機関を使って来る人の事を考えれば、駅の近くだ。そうなると余計に駐車場は割高になる。
「先生達は自家用車で来るんじゃないかなって思うと、駐車場でお金払ってもらうのもねえ。まあ、ケチらないだろうけど、イヤらしいじゃない?」
気にしないかもしれないが、こちらとしては気になる。教師はご招待。お金もこちら持ちだ。けれど駐車場代はかかりますよと言うのは気分的に良くないだろう。
「用意するこっちとしても、車で来たかったし」
ゲームをすることで出す景品も運ばなくてはならない。それらを考えると中々開催に踏み出せなかったらしい。
「だから、和泉が夫馬君に連絡取って、ここでってなった時はびっくりしたわ。駅からの送迎バスもあるし、駐車場にお金もかからない。けどまさか、旅館一つ貸し切ろうなんてね。アホかと思ったわ」
「「「確かに……」」」
「……」
突然『なら、旅館貸し切ろうぜ~』なんて言ったのだろう。俊哉ならやるかもしれないと、満、嶺、高耶、それと槇は思った。突然の意外な提案をするところは、小学生の頃から変わっていない。
「まあ、結果的にすっごい理想的で、出席率も高くなったんだけどね。あいつが生徒会長じゃなくて良かったわ……」
「「「「確かに……」」」」
全員同意する。彰彦も頷いていた。
露子は笑いながら、手元の名簿にチェック印をつける。
「けど、アイツが居なきゃ、実現しなかったわ。情報網がエグいのよ。アイツ一人で三分の二以上の連絡が取れたからね。まあ楽しんで行ってよ。蔦枝君もね。修学旅行のやり直し。楽しんで」
「ああ……」
俊哉の一番の目的はコレだろう。武雄の旅館を使えると聞いて、高耶と修学旅行のやり直しができると本気になったらしい。
思えば、気難しい蓮次郎までもいつの間にか期待している。補佐役として使えると思われている俊哉だ。情報網など、情報収集の能力も高いのだろう。
そして、あの性格は憎まれにくい。
「俊哉ってすげえわ……」
「あんな落ち着きないのにな……」
ここでも落ち着きがないという評価を受ける俊哉。けれど、それでいいのだろう。それも個性だ。
高耶が何気なく忙しなく準備に駆け回る俊哉を見ていれば、不意に入口の方を見て彼ら顔を顰めて見せた。とはいえ、一瞬だ。
それが気になって、俊哉の視線の先に目を向けると、高耶も思わず眉根を寄せた。
女子達を引き連れながら、入ってきた白いスーツの男が、顔に特大の口灯蛾をくっ付けていたのだ。
そして、その男は会場を見回し、真っ直ぐにこちらのテーブルの方へと向かってきた。
槇が腰を浮かせたのを見て、目的はここかと始まる直前の面倒事の予感に、頭を抱えたくなったのは仕方がない。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
256
あなたにおすすめの小説
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」
魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。
――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。
「ここ……どこ?」
現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。
救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。
「ほら、食え」
「……いいの?」
焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。
行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。
旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。
「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」
「ウチの子は天才か!?」
ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。
これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。
※若干の百合風味を含みます。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
義務ですもの。
あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる