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第六章 秘伝と知己の集い
346 信じられなくても
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久し振りに帰って来た息子に戸惑い、更には友人を連れてやって来たことに驚きながらも、槇の両親は彼らを家に上げた。
部屋に落ち着くと、すぐに母親はお茶の用意を済ませる。
そこで、母親は時島の事を思い出したらしい。
「どうぞ。あっ、あの……時島先生ですわよね? 小学校の時の先生……」
「先生?」
父親の方は覚えがないようだが、先生と聞いて驚きながらも少し警戒を解いたのが分かった。
槇は問題児として、呼び出しを受けることも多かった。よって、今回も何か問題を起こし、その責任を取るようにと訴えに来た人だと思っていたようだ。
一緒に居る満や嶺は、槇と問題を起こしたこともあるため、その顔は覚えており、余計に不安だったのだろう。
しかし、時島は嬉しそうに微笑んで挨拶をした。
「ええ。急に押しかけて申し訳ありません」
「いえっ。今日は……あっ、同窓会があったのでは?」
母親は、同窓会の手紙を知っており、満や嶺に家を出た槇へ連絡を取って誘ってくれるようにと頼んでいた。
「そうです。そこから来ました。少し、ご相談がありまして」
「相談……ですか……」
父親が不安そうに、一体何をしたのかと厳しい視線を槇に向けていた。
それを受けながらも、槇は口を開く。
「美紗の居場所が分かった」
「「っ!?」」
飛び上がりそうな様子で、目を丸くする両親へ、槇はまっすぐに目を向ける。
「一応、生きているらしい」
「っ、どこだっ。どこに居る!?」
「すぐに迎えにっ。迎えに行けるのよね!?」
身を乗り出し、半ば立ち上がりそうになりながら問いかけてくる。
その勢いに槇は押されかけていた。けれど、説明は難しい。
そこで、時島が口を開く。
「落ち着いてください。ご説明します」
「え、ええ……」
「あっ、申し訳ありません……」
逸る気持ちもわかる。だが、焦っても仕方がない。一時の突き動かされるような衝動的な感情ではなく、きちんと理解した上で答えを出さなくては後悔することになる問題なのだから。
「そうですね……先ず、お二人は神を信じますか?」
「「はい?」」
胡散臭いと思うのは当然の質問だった。けれど、一応は確認すべきことだ。
「ああ、信仰についての話ではなく、その存在を受け入れられるかどうかです。超常的な力を受け入れられますか?」
「……なんのお話ですか……」
父親の方が不機嫌な顔を見せる。しかし、時島もここで引くつもりはない。自身が胡散臭い者と見られても、これは伝えなくてはならないことなのだ。
槇だけでなく、満や嶺も不安そうに時島を見る。実際に高耶の力を見ていなければ、彼らも父親が向けているような目を時島に向けただろう。それが分かるから、時島を悪者のような立場にすることに申し訳なさを感じていた。
「先生……っ」
槇が堪らずに声をかけるが、時島は首を横に振った。
「気にしなくていい。これは貴重な体験だ。こうした思いを、蔦枝はずっと一人で耐えてきたのだと思えば、なんてことはない」
「っ……」
そうだと槇も気付く。正しいことを、事実を口にしているのに、信じてもらえないという経験を、高耶はずっとしてきたのだ。
「本当に……蔦枝には頭が下がるよ」
「っ……うん……」
そうして、時島だけでなく槇や満、嶺も覚悟を決めた。
「真実のみ、簡潔にお伝えします。娘さんは、神隠しに合い、この世界の狭間の空間に今も存在しているそうです」
「「……」」
眉根を寄せる両親を見つめながら、口を出される前にと一気に伝えてしまうことにする。
「そこでは、時間の流れが違い、今助け出しても行方不明になった頃の姿のままだそうです。それを受け入れられますか?」
「……意味が分からない……どんな冗談です……っ、教師ではなく詐欺師にでもなられたのか」
「っ、親父っ!」
「落ち着け」
「っ……」
厳しい視線を受けながらも、その視線から目を逸らすことなく、時島は真っ直ぐに父親を見ていた。
槇が殴りかかりそうになるのを止め、時島は続ける。
「どれほど心を痛めて来られたか、それを想像することしか出来ない私には分かりません。ですが、冗談でこのような事を言うほど無神経な人になったつもりもありません」
「……なら、なぜ……」
「私も、少し前ならば神やその他の存在を本当の意味で信じてはいなかった。ですが、実際に目にしてしまったら、受け入れるしかありません。もちろん、見えない事を見えると嘘を吐く者も居るでしょう。しかし、本当に見える者はいるのです」
「……」
時島も、これだけで信じてもらえるとは思っていない。
「今はそれを信じなくても構いません。なので、私を信じてついて来ていただけないでしょうか。確実に娘さんの事を説明できる方々の下にご案内します」
「……どこに……」
「来ていただけますか?」
「……おかしな事をすれば、すぐに警察に通報する」
「それで構いません。ケイタイもお持ちいただいて、戸締りだけしっかりとお願いします」
「……分かった……」
「私もっ。私も行きます」
「ええ。お願いします」
すぐに戸締りを確認し、出かける準備を始める。外に出て待っていると、五分とせずに二人は出て来た。
「では、行きましょう。こちらです」
「……そっちは……」
わけが分からないだろう。出かけると言っているのに、向かうのは狭い庭の方なのだ。
けれど、物置きの前で待つ俊哉と高耶と、コンテナの扉の向こう側に見えるあり得ない光景を見て、二人は歩みを止めた。
俊哉と高耶は、先にと靴を脱いでコンテナの中に入って行く。向こう側に広い部屋があること、コンテナの中ではあり得ないことに、呆然とするのは当たり前だろう。
そんな二人に、時島は説明する。
「あの扉を、別の場所に繋いでいるんです。本物の霊能者、能力者というのは、こんなことができるんですよ。さあ、どうぞ」
「っ……」
「っ……」
夫婦で顔を見合わせ、頷き合い、二人は意を決してそこに向かった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
部屋に落ち着くと、すぐに母親はお茶の用意を済ませる。
そこで、母親は時島の事を思い出したらしい。
「どうぞ。あっ、あの……時島先生ですわよね? 小学校の時の先生……」
「先生?」
父親の方は覚えがないようだが、先生と聞いて驚きながらも少し警戒を解いたのが分かった。
槇は問題児として、呼び出しを受けることも多かった。よって、今回も何か問題を起こし、その責任を取るようにと訴えに来た人だと思っていたようだ。
一緒に居る満や嶺は、槇と問題を起こしたこともあるため、その顔は覚えており、余計に不安だったのだろう。
しかし、時島は嬉しそうに微笑んで挨拶をした。
「ええ。急に押しかけて申し訳ありません」
「いえっ。今日は……あっ、同窓会があったのでは?」
母親は、同窓会の手紙を知っており、満や嶺に家を出た槇へ連絡を取って誘ってくれるようにと頼んでいた。
「そうです。そこから来ました。少し、ご相談がありまして」
「相談……ですか……」
父親が不安そうに、一体何をしたのかと厳しい視線を槇に向けていた。
それを受けながらも、槇は口を開く。
「美紗の居場所が分かった」
「「っ!?」」
飛び上がりそうな様子で、目を丸くする両親へ、槇はまっすぐに目を向ける。
「一応、生きているらしい」
「っ、どこだっ。どこに居る!?」
「すぐに迎えにっ。迎えに行けるのよね!?」
身を乗り出し、半ば立ち上がりそうになりながら問いかけてくる。
その勢いに槇は押されかけていた。けれど、説明は難しい。
そこで、時島が口を開く。
「落ち着いてください。ご説明します」
「え、ええ……」
「あっ、申し訳ありません……」
逸る気持ちもわかる。だが、焦っても仕方がない。一時の突き動かされるような衝動的な感情ではなく、きちんと理解した上で答えを出さなくては後悔することになる問題なのだから。
「そうですね……先ず、お二人は神を信じますか?」
「「はい?」」
胡散臭いと思うのは当然の質問だった。けれど、一応は確認すべきことだ。
「ああ、信仰についての話ではなく、その存在を受け入れられるかどうかです。超常的な力を受け入れられますか?」
「……なんのお話ですか……」
父親の方が不機嫌な顔を見せる。しかし、時島もここで引くつもりはない。自身が胡散臭い者と見られても、これは伝えなくてはならないことなのだ。
槇だけでなく、満や嶺も不安そうに時島を見る。実際に高耶の力を見ていなければ、彼らも父親が向けているような目を時島に向けただろう。それが分かるから、時島を悪者のような立場にすることに申し訳なさを感じていた。
「先生……っ」
槇が堪らずに声をかけるが、時島は首を横に振った。
「気にしなくていい。これは貴重な体験だ。こうした思いを、蔦枝はずっと一人で耐えてきたのだと思えば、なんてことはない」
「っ……」
そうだと槇も気付く。正しいことを、事実を口にしているのに、信じてもらえないという経験を、高耶はずっとしてきたのだ。
「本当に……蔦枝には頭が下がるよ」
「っ……うん……」
そうして、時島だけでなく槇や満、嶺も覚悟を決めた。
「真実のみ、簡潔にお伝えします。娘さんは、神隠しに合い、この世界の狭間の空間に今も存在しているそうです」
「「……」」
眉根を寄せる両親を見つめながら、口を出される前にと一気に伝えてしまうことにする。
「そこでは、時間の流れが違い、今助け出しても行方不明になった頃の姿のままだそうです。それを受け入れられますか?」
「……意味が分からない……どんな冗談です……っ、教師ではなく詐欺師にでもなられたのか」
「っ、親父っ!」
「落ち着け」
「っ……」
厳しい視線を受けながらも、その視線から目を逸らすことなく、時島は真っ直ぐに父親を見ていた。
槇が殴りかかりそうになるのを止め、時島は続ける。
「どれほど心を痛めて来られたか、それを想像することしか出来ない私には分かりません。ですが、冗談でこのような事を言うほど無神経な人になったつもりもありません」
「……なら、なぜ……」
「私も、少し前ならば神やその他の存在を本当の意味で信じてはいなかった。ですが、実際に目にしてしまったら、受け入れるしかありません。もちろん、見えない事を見えると嘘を吐く者も居るでしょう。しかし、本当に見える者はいるのです」
「……」
時島も、これだけで信じてもらえるとは思っていない。
「今はそれを信じなくても構いません。なので、私を信じてついて来ていただけないでしょうか。確実に娘さんの事を説明できる方々の下にご案内します」
「……どこに……」
「来ていただけますか?」
「……おかしな事をすれば、すぐに警察に通報する」
「それで構いません。ケイタイもお持ちいただいて、戸締りだけしっかりとお願いします」
「……分かった……」
「私もっ。私も行きます」
「ええ。お願いします」
すぐに戸締りを確認し、出かける準備を始める。外に出て待っていると、五分とせずに二人は出て来た。
「では、行きましょう。こちらです」
「……そっちは……」
わけが分からないだろう。出かけると言っているのに、向かうのは狭い庭の方なのだ。
けれど、物置きの前で待つ俊哉と高耶と、コンテナの扉の向こう側に見えるあり得ない光景を見て、二人は歩みを止めた。
俊哉と高耶は、先にと靴を脱いでコンテナの中に入って行く。向こう側に広い部屋があること、コンテナの中ではあり得ないことに、呆然とするのは当たり前だろう。
そんな二人に、時島は説明する。
「あの扉を、別の場所に繋いでいるんです。本物の霊能者、能力者というのは、こんなことができるんですよ。さあ、どうぞ」
「っ……」
「っ……」
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