秘伝賜ります

紫南

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第六章 秘伝と知己の集い

347 頼ってみました

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脱いだ靴を持って、コンテナの中に入った槇の両親は、部屋を見回していた。

「……本当に、違う場所……?」
「外が……山だわ……」

どんなふざけたことに付き合わさられるのかと、苛つきながらも、責められる所があれば責めようとアラ探しをしようと気を引き締めていた。

「……どこだ……ここ……」

振り向くと、コンテナの中から見えるだろう家の庭が、襖の隣にある。その奇妙さが、逆に現実だと知らしめることになる。

「家からなら、ここまで車で三時間かかる場所だ」
「……」
「……」

両親が窓辺まで行って外を確認したり、襖の反対側を覗いたりするのを、槇は黙って見つめていた。

自分も散々確認したしなと納得してもいるようだ。

「先生、どこまで話されましたか?」
「ああ、娘さんが神隠しに遭ったということで、怪しまれたから、そのまま連れて来たんだよ」
「そうですか。分かりました。では、引き継ぎます」
「すまんなあ。だが……お前の苦労が分かったよ」
「はあ……」

しみじみと時島が言うが、高耶は何がと首を傾げただけだった。

「では、白木さん。初めまして。秘伝高耶と申します。陰陽武道を継承している一族の者です」
「……はあ……」

理解できていなさそうな声が出ていたが、気にせずに続ける。

「今回、白木槇さんから、妹さんの居場所についての話が出ましたので、それについてどうされるかをご両親と相談すべきと思いまして、ご訪問し、お呼びしました」
「……」
「信じられないと思われるならば、仕方がありません。娘さんは、あと何十年と放置されても、特に今と変化はありません。好きなだけ悩んでください」
「「え……」」
「「ん?」」

槇の両親の方は言われた言葉が理解しきれず戸惑う声を上げた。それと同時に、時島と俊哉が驚いたように高耶を見る。

「ん?」

時島と俊哉にどうしたのかと問うようにすれば、俊哉が高耶の肩に手を置いた。

「いやいや。どうした。いつもの高耶なら、一生懸命、見えない人にも、理解してもらえるような説明するだろう?」
「そうだ。蔦枝。どうした?」
「え? ああ……いえ、今回は緊急性はないので」

時島が少し考えて納得する。

「……なるほど……というか、本当に数年? 数十年と大丈夫ということか?」
「ええ。問題ないです。それに、時間が経った方が、それこそ、槇の娘ってことで誤魔化せますしね」
「高耶はそれオシなんだ」
「一番面倒がない。ただ……槇の結婚相手には悪いが」
「考えた事ないから良い」

槇が真面目な顔でそう答えた。

そんなことを話している間に、両親は冷静になったようだ。

「あ、その……いいだろうか」
「ええ」

その目を見て、高耶は面倒が一つ減ったと思った。理解しようとする人の目だったのだ。信じられないものを怪しんでいるような、絶対に信じないぞと思っているような人の目ではなかった。

「申し訳ない……詳しい話を聞かせてもらえないだろうか……」
「分かりました。ただ、その……私は若いですし、不安もあるでしょうから、よろしければ、代表の者達とお引き合わせします」
「いや……これをしたのは君なのでは?」

これというのは、繋がっている扉のことだ。

「そうですが、息子さんと同級である私が話すより、お二人より年上の、経験豊富な大人の話の方が良いでしょう」
「はあ……まあ……」
「そうですねえ……」

確かにその方が良いかと頷いたのを確認し、高耶は前に立って歩き出す。

「では、行きましょう。今は別件でここに集まっていますので、どうぞ」
「はい……」
「分かりました……」

そうして、焔泉達の居る別館に案内した。既に、話は通してあったので問題はない。

「よお参られた。話は聞いとりますでなあ」
「ああ、時島先生も居たら安心でしょう。お茶をしながらゆっくりお話ししましょうか」
「はあ……」
「よ、よろしくお願いします……」

押され気味になっているが、これくらいがちょうど良いだろう。

「お茶菓子は、白木さんの家の近くの和菓子屋さんで買って来ました」
「相変わらず、気が利くやないの」
「ほら、高耶くんもそこに座って。ついでに書類仕事任せてもいいかな?」
「……そうじゃないかと思いました……」
「あははっ。よろしく。こっちは任されてあげるからね」
「……はい……」

どちらが面倒かと考えれば、実は高耶には説明する方が面倒だ。高耶も好きで疑われながらも真摯に説明しようとするわけではない。そうしないと仕事が進まないのだから、仕方なくだ。

頭を下げるのもその先の事が進むようにしているだけだ。表に出さなくても、納得できない時もある。

我慢できるだけで、できればやりたくないのが本音だ。年若いというだけでバカにされることも多々あるため、半分諦めてはいるが、今回のように緊急性のない件についてならば、こうして誰かに丸投げしても良いのではないかと、今更ながらに気付いたのだ。

「高耶……丸投げ、出来たんだな」
「その機会が中々ないだけだ。残念なことにな」
「なるほど……」

あまり人に頼らない高耶にしては珍しいと見られるようだ。

「けど……こうすればいいんだな……」

焔泉も蓮次郎も、目に見えて機嫌が良い。高耶に頼られたというのが嬉しいのだ。

思わぬところで、頼るということを一つ知った高耶だった。










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読んでくださりありがとうございます◎
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