秘伝賜ります

紫南

文字の大きさ
358 / 468
第七章 秘伝と任されたもの

358 新しい関係?

しおりを挟む
式神として喚び出した将也が、闘神となっていたということで混乱した高耶だが、さすがに、翌日もあるということで、その夜は解散となった。

そして明けて朝。

《おはよ~!》
「……将也……あんた……なんか若返ってない?」
《え~、そうかなあ? そういえば、霊の場合は、喚び出した人のイメージより、こっちの最盛期の頃の姿が取られることが多いって聞いたかも》

高耶が、将閃しょうせんという名で将也の最盛期の頃もイメージしていた事もあり、亡くなった頃の姿よりも若干若い姿になっていた。実際それは、高耶が生まれた頃の姿だった。

《どう? 懐かしい? 大丈夫! 美咲もまだそれなりに若いよ!》
「っ……将也、ちょっとあっちで正座してなさい!」
《なんで!?》

朝からご機嫌な将也に、美咲はイラついたようだ。久し振りの再会だとか、この前は言えなかったことも、これからは一緒にいられるなら言える。けど、どんな顔で会えばいいのかとか、色々と考えていた。

そんな複雑な気持ちで起きて来た美咲からすると、朝早くから能天気な様子で、普通に家に現れた将也にイラつくのは仕方がないのかもしれない。

そんな美咲と、将也を見て、起きて来た優希が目丸くしていた。樹も部屋にやって来たが、美咲と将也のやり取りを見て、静かに控えることにしたようだ。

「ミサキママ、きげんわるい?」
《女心とは複雑なのだろう》
「へ~……ねえ、ハクちゃん」
《なんだ? 今日は優希の好きなオムレツを作ったぞ?》
「たべる!! じゃなくて、なんでマサヤおじさまがいるの?」

前回、一日だけの邂逅だったが、優希も将也と交友を持った。その中で、瑶迦に『叔父様ですよ』と紹介されたことで、そのまま『おじさま』呼びになったようだ。

《ああ……昨日の夜、我らと同じ、主の式になったのだ。これからは、主が喚べばこうして一緒に居る事になる》
「そうなの!?」

優希は、素直に美咲に言われた通り、部屋の隅で正座をする将也に駆け寄って行く。

「ねえねえっ、マサヤおじさまっ」
《ん? ユウキちゃんだったよね? どうしたのかな?》
「マサヤおじさまも、いっしょにおでかけできるの?」
《ん? そうだね。できるよ?》
「やったあっ! じゃあ、お兄ちゃんとおむかえにもきてくれる?」
《おむかえ……ああ、お迎え? 学校に? いいよ! いやあ、高耶の時はそういうこと全然やらなくて、授業参観? とかも行かなかったからねえ。やってみたかったんだよ!》
「え? じゅぎょうさんかんもきてないの?」
《うん。修行してるか、弟子達の稽古つけてるかだったからね》
「……それは……ミサキママがおこったんじゃない?」
《え? あ~……美咲……?》

将也が目を向けると、美咲は腕を組んで睨み付けていた。

「そうねえ。高耶は、あなたが毎日稽古を付けてくれるから、そういう行事に来なくても何とも思わなかったでしょうね」
《……う、うん……そ、そうなんだ……?》

父親が働きに行ってしまい、生活する中で常にすれ違う父と子というのは、現代では多いだろう。そんな父顔が、たまに学校の行事に参加すれば、子どもは喜ぶ。寂しいと思っている子ども達にとっては、それは何よりのご褒美だ。

しかし、高耶の場合は毎日顔を合わせるし、稽古として一対一で向き合う時間もある。よって、特に学校行事に来て欲しいとか、そんなことは言わなかった。

とはいえ、周りからどう思われるかは別だ。

「私、思ったのよ。あなた、高耶と遊ぶってことは一切なかったでしょう?」
《そうだね……稽古ばかりで……》
「お陰で、高耶が遊ぶ事も知らない仕事バカになったんだけど、その責任はどう取ってくれるのかしら?」
《……あー……》
「時間はあるんでしょう? 責任の取り方、考えてちょうだい」
《……はい……》

将也は肩を落としていた。美咲の方は、気になっていたことを一つ言えたと、少しスッキリした表情だ。

「ハクちゃん。マサヤおじさま、はんせいしてるの?」
《そのようだな》
「お兄ちゃんがおしごとばっかりするから?」
《遊ぶ事を教えなかったからだな》
「ふ~ん。ユウキがおしえるよ?」
《そうだな。優希も教えてやってくれ》
「うん! マサヤおじさまといっしょにお兄ちゃんとあそべればいいんでしょ?」
《それが良いだろう》
「かんがえてみる!」
《うむ》

そんな話をしている所に、高耶が起きて来た。

部屋の隅で、腕を組む美咲の前で小さくなって正座している将也を見て、何とも言えない気持ちになる。

「あ~、母さん? ご飯早く食べた方がいいんじゃないか? 父さんはもうずっと居られるから」
「そうね。そうするわ!」

仕事があると切り替えて、美咲は朝食の並ぶテーブルについた。

それを確認してから、将也に声をかける。

「父さん、一旦送還するか?」
《ん? いや。出来ればこのまま頼む。お前も学校? か? その間は、瑶姫の所で、話を聞いてくる》
「そっか。分かった。俺も昼過ぎには帰ってくるから」
《学校は?》
「午前の二コマしか授業がないんだよ」
《ふたこま?》
「……あ~……大学に行ってるんだ」
《おおっ、大学!》

秘伝本家だけでなく、他の家でもだが、大抵は家を継いだり、補佐に回るため、高校までで大学に行く者はほぼいない。

将也からしても、大学まで行くというのは、想定されたことのないものだった。

本家の頭の固い者達からすれば、大学など行くものではなく、そんな時間があるならば稽古しろ、修行しろという考え。

しかし、将也からすれば、『大学に行く=なんか頭良さそう』というくらいの認識だったようだ。

「大学は、朝からずっとじゃなくて、卒業に必要な科目とか、受けたい科目の授業を自由に組み合わせるから、人によっては休みになっていたりもするんだ。今日は必須のが二つだけなんだよ」
《へえ~。じゃあ、その後は?》
「家に帰って来てからの予定ってことか?」
《うん》
「瑶迦さんの所の書庫で調べ物をして、優希のお迎え、その後、夕食後にバイトだ」
《あっ、優希ちゃんのお迎えは俺も一緒に行く事になったからな!》
「そうなのか……分かった。けど、今日は伴奏の確認もあるんだが……」

優希に目を向けると、優希が頷いていた。

「マサヤおじさまにもきいてもらうのっ!」
「……優希……分かった。けど、あそこの土地神様が良いと言ったらな? 将也おじさまは、ちょっと存在が普通の式神とは違うんだ」
「うん? ゆうれいだから?」
「ああ。それもある。けど……ちょっと特別な力を込めすぎてしまったんだ。だから、神様にとても近い。別の神様が神様の守る場所に入るのは、ちゃんと許可をもらわないといけないんだよ」
「……そっか……うん。わかった。けど、ちゃんとおねがいしてみてね?」

少し寂しそうにする優希。けれど、事情は分かってくれたようだ。そんな優希の頭を撫でておく。

「そうだな。分かった」
「うん。えへへ。マサヤおじさま、はいれるといいねっ」
《俺も頑張ってお願いするからな》
「うん!」

将也も優希の頭を高耶と同じように撫でた。優希が懐いているのは一目瞭然だ。

そんな優希と将也を見て、樹が複雑そうな表情を浮かべている。エリーゼがスープを置きながら尋ねる。

《樹はん? 羨ましいん?》
「うん……」
《は~、本来なら、樹はんもおじさまですもんねえ……》

優希の実の父ではないのだ。兄の娘なのだから、間違いなく叔父様だろう。将也のように慕って欲しいと思うだろう。

少し同情するように見ていたエリーゼだが、樹が何を羨ましく思っているのかを間違えていたようだ。

「うんっ、いいなあ、優希っ。僕も将也兄さんに構って欲しい!」
《えっ、そっち?》
「……」

今の旦那が昔の夫に懐いているのを見る美咲は死んだような目をしており、エリーゼは静かに撤退した。

《なんや、この状況……これもドロ沼言うんやろか?》
《複雑だな……中々ない家庭環境が出来上がりそうだ》
《十分、今までも、早々見ない家庭環境ですけどねえ……》
《……仕方あるまい……》

これが日常になるのかと、珀豪達からしても少しばかり不安になるようだった。






**********
読んでくださりありがとうございます◎

しおりを挟む
感想 688

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

聖女は支配する!あら?どうして他の聖女の皆さんは気付かないのでしょうか?早く目を覚ましなさい!我々こそが支配者だと言う事に。

naturalsoft
恋愛
この短編は3部構成となっております。1話完結型です。 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★ オラクル聖王国の筆頭聖女であるシオンは疑問に思っていた。 癒やしを求めている民を後回しにして、たいした怪我や病気でもない貴族のみ癒やす仕事に。 そして、身体に負担が掛かる王国全体を覆う結界の維持に、当然だと言われて御礼すら言われない日々に。 「フフフッ、ある時気付いただけですわ♪」 ある時、白い紙にインクが滲むかの様に、黒く染まっていく聖女がそこにはいた。

モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまで

ChaCha
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したことに気づいたアイナ・ネルケ。 だが彼女はヒロインではない――ただの“モブ令嬢”。 「私は観る側。恋はヒロインのもの」 そう決めて、治癒魔術科で必死に学び、気合いと根性で仲間を癒し続けていた。 筋肉とビンタと回復の日々。 それなのに―― 「大丈夫だ。俺が必ず君を守る」 野外訓練で命を救った騎士、エルンスト・トゥルぺ。 彼の瞳と声が、治癒と共に魂に触れた瞬間から、世界が静かに変わり始める。 幼馴染ヴィルの揺れる視線。 家族の温かな歓迎。 辺境伯領と学園という“日常の戦場”。 「……好き」 「これは恋だ。もう、モブではいたくない」 守られるだけの存在ではなく、選ばれる覚悟を決めたモブ令嬢と、 現実しか知らない騎士の、静かで激しい溺愛の始まり。 これは―― モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまでの物語。 ※溺愛表現は後半からです。のんびり更新します。 ※作者の好みにより筋肉と気合い…ヤンデレ落ち掛けが踊りながらやって来ます。 ※これは恋愛ファンタジーです。ヒロインと違ってモブは本当に大変なんです。みんなアイナを応援してあげて下さい!!

レイブン領の面倒姫

庭にハニワ
ファンタジー
兄の学院卒業にかこつけて、初めて王都に行きました。 初対面の人に、いきなり婚約破棄されました。 私はまだ婚約などしていないのですが、ね。 あなた方、いったい何なんですか? 初投稿です。 ヨロシクお願い致します~。

婚前交渉は命懸け

章槻雅希
ファンタジー
伯爵令嬢ロスヴィータは婚約者スヴェンに婚約破棄を突きつけられた。 よくあるパターンの義妹による略奪だ。 しかし、スヴェンの発言により、それは家庭内の問題では収まらなくなる。 よくある婚約破棄&姉妹による略奪もので「え、貴族令嬢の貞操観念とか、どうなってんの?」と思ったので、極端なパターンを書いてみました。ご都合主義なチート魔法と魔道具が出てきますし、制度も深く設定してないのでおかしな点があると思います。 ここまで厳しく取り締まるなんてことはないでしょうが、普通は姉妹の婚約者寝取ったら修道院行きか勘当だよなぁと思います。花嫁入替してそのまま貴族夫人とか有り得ない、結婚させるにしても何らかのペナルティは与えるよなぁと思ったので。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿しています。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

処理中です...