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第六章 秘伝と知己の集い
357 予想していません!
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喚び出された瑠璃は、上機嫌で三通の手紙を手渡してきた。
《高耶さんに》
「ああ……」
一通は天界、一通は霊界、一通は魂の管理をする神界からだ。
全部、それぞれの言葉で書かれてあるが、高耶には問題なく読める。瑶迦やエルラント達に鍛えられた結果だ。
「……父さんの署名まで入ってる……」
将也の同意を示す署名も入っていた。そんな呟きを聞き、瑠璃がクスクスと笑う。
《将也さん、昨日から正座して門の前で待っていますよ?》
とんでもない情報だ。それは居た堪れない。
「……瑶迦さんの所に行って来る……ここではな……」
さすがに、家の中では手狭だ。最初の契約召喚は気を使う。
《既に用意は済んでいるはずですよ》
「……そうか……」
瑶迦も賛成ということなのだろう。
《私も立ち合いますね》
《我も行こう》
「ああ」
瑠璃と珀豪が立ち会うことになった。そこで、樹が勢いよく手を上げる。
「僕も行って良い!?」
「い、良いですけど……」
「やった!! あ、美咲さんはどうする?」
「う~ん……やめとくわ。ここで待ってる。多少はカッコ付けたいだろうしね。私が居るとやり辛いでしょう」
「あるかも……」
「ありそうだね……」
将也の性格をよく知っている美咲は、そう判断した。樹まで納得したことで、美咲は留守番となった。優希が寝ているので、その方が安心だろう。
「それじゃあ、行ってくる」
「はいは~い。あ、寝てるかも」
「分かった」
夜はとても幻想的に見える瑶迦の屋敷。森の木々の間から覗く空は、都会では見られない無数の星々が輝き、月の光が柔らかく屋敷を包んでいる。
《こんばんは。良い夜ですわね。高耶さん》
いつも通り出迎えたのは藤だ。精霊は、夜に眠る必要はない。けれど、夜には夜の顔を見せるものだ。藤は昼間よりも妖艶な美しさを見せていた。
「遅くにすみません」
《構いませんわ。それに、お相手は待て状態らしいですしね。ふふっ》
「……はい……」
今か今かと門の前で待っている父が居ると思えば、時間など気にしていられない。
《場所は、お庭を使うようにとのことです》
「ありがとうございます」
《そのままお向かいくださいな。樹さんはこちらへ。契約が終わるまではこちらで姫様のお相手をお願いします。ちゃんと中から見えますから》
「えっ、わ、わかりました。高耶君! がんばってね! 待ってるから!」
「はい……」
失敗するとは思っていない様子の二人に、本来なら少し不安にもなる事なのだがと思いなからも、苦笑を向けるに留めた。
瑠璃と珀豪を伴って庭に向かっていると、充雪が姿を現す。
《珍しいな。緊張しているのか?》
「まあ……実の父親を、人形みたいにはしたくない……」
《あっ、確かに……ん~……?》
それに今気付いたというように驚き、そして、高耶の顔をマジマジと見つめる。
「……なんだ? なんで意外そうなんだよ……」
《いや……お前が失敗するとは思えんから》
「……分からねえだろ……」
《いや、ねえな。自信持ってやれ》
「やった事ねえんだから、さすがに……」
それも、全く知らない相手ではなく、知っている相手だ。心持ちも違ってくる。
《高耶さんがそんな弱気になるなんて……明日には世界が崩壊するのでしょうか?》
《主も人の子だったということか……明日は優希が体育の時間を楽しみにしていたぞ。雨など降らせんでくれ》
「……」
揃って空を確認された。
《失敗なんてしねえよ。だいたい、アレが失敗するのは、あちら側の意思を無視して無理やり引っ張るからじゃんか》
《ふふっ。将也さんは、自分から飛び出して来ますわ》
《む。寧ろ将也が間違えて主意外の者の呼び掛けに応えてしまう方がありそうだ……》
《……ありそうだな……》
《ありそうですわ……》
「っ、すぐにやる!」
《それがいい!》
《それがいい》
《それがいいですわっ!》
まさかの将也の方でのうっかりがありそうな危機に、高耶の腹も決まった。
庭に陣を描き、力を込める。
そして、呼びかけた。正しく喚び出されたのが将也であると確認し、高耶は最後の気合いを入れた。
「……名は……【将閃】……閃光のように……いつまでも将であれ」
《っ……ありがとう。高耶》
「……ああ。お帰り」
《ただいま!》
もういつもの父だった。式神として喚び出しているので、実体もある。
成功して良かったとほっと息を吐く高耶。そんな中、瑠璃と珀豪が茫然と将也を見ていた。充雪も首を傾げて不思議そうにしている。
「どうしたんだ?」
《何か変か?》
《変ですわ》
《変だな》
《変だ》
「え?」
《んん?》
はっきりと変と言われて、将也も首を傾げた。
するとそこに、瑶迦が出て来て声を掛ける。
「あらあら。高耶さんったら、気合いを入れ過ぎて、神気も込めてしまったのね? 将也さんが闘神になっているわよ?」
「……え?」
《……へ?》
《あ~……》
《あー……》
《おおっ、やったな将也!》
「ふふふっ。さすがは高耶さん。予想の斜め、遥か上に行きましたわねっ」
瑶迦が愉快だと笑い、高耶と当事者である将也は茫然とする。
「……はあ!?」
《ええ!?》
意味が分からなかった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
《高耶さんに》
「ああ……」
一通は天界、一通は霊界、一通は魂の管理をする神界からだ。
全部、それぞれの言葉で書かれてあるが、高耶には問題なく読める。瑶迦やエルラント達に鍛えられた結果だ。
「……父さんの署名まで入ってる……」
将也の同意を示す署名も入っていた。そんな呟きを聞き、瑠璃がクスクスと笑う。
《将也さん、昨日から正座して門の前で待っていますよ?》
とんでもない情報だ。それは居た堪れない。
「……瑶迦さんの所に行って来る……ここではな……」
さすがに、家の中では手狭だ。最初の契約召喚は気を使う。
《既に用意は済んでいるはずですよ》
「……そうか……」
瑶迦も賛成ということなのだろう。
《私も立ち合いますね》
《我も行こう》
「ああ」
瑠璃と珀豪が立ち会うことになった。そこで、樹が勢いよく手を上げる。
「僕も行って良い!?」
「い、良いですけど……」
「やった!! あ、美咲さんはどうする?」
「う~ん……やめとくわ。ここで待ってる。多少はカッコ付けたいだろうしね。私が居るとやり辛いでしょう」
「あるかも……」
「ありそうだね……」
将也の性格をよく知っている美咲は、そう判断した。樹まで納得したことで、美咲は留守番となった。優希が寝ているので、その方が安心だろう。
「それじゃあ、行ってくる」
「はいは~い。あ、寝てるかも」
「分かった」
夜はとても幻想的に見える瑶迦の屋敷。森の木々の間から覗く空は、都会では見られない無数の星々が輝き、月の光が柔らかく屋敷を包んでいる。
《こんばんは。良い夜ですわね。高耶さん》
いつも通り出迎えたのは藤だ。精霊は、夜に眠る必要はない。けれど、夜には夜の顔を見せるものだ。藤は昼間よりも妖艶な美しさを見せていた。
「遅くにすみません」
《構いませんわ。それに、お相手は待て状態らしいですしね。ふふっ》
「……はい……」
今か今かと門の前で待っている父が居ると思えば、時間など気にしていられない。
《場所は、お庭を使うようにとのことです》
「ありがとうございます」
《そのままお向かいくださいな。樹さんはこちらへ。契約が終わるまではこちらで姫様のお相手をお願いします。ちゃんと中から見えますから》
「えっ、わ、わかりました。高耶君! がんばってね! 待ってるから!」
「はい……」
失敗するとは思っていない様子の二人に、本来なら少し不安にもなる事なのだがと思いなからも、苦笑を向けるに留めた。
瑠璃と珀豪を伴って庭に向かっていると、充雪が姿を現す。
《珍しいな。緊張しているのか?》
「まあ……実の父親を、人形みたいにはしたくない……」
《あっ、確かに……ん~……?》
それに今気付いたというように驚き、そして、高耶の顔をマジマジと見つめる。
「……なんだ? なんで意外そうなんだよ……」
《いや……お前が失敗するとは思えんから》
「……分からねえだろ……」
《いや、ねえな。自信持ってやれ》
「やった事ねえんだから、さすがに……」
それも、全く知らない相手ではなく、知っている相手だ。心持ちも違ってくる。
《高耶さんがそんな弱気になるなんて……明日には世界が崩壊するのでしょうか?》
《主も人の子だったということか……明日は優希が体育の時間を楽しみにしていたぞ。雨など降らせんでくれ》
「……」
揃って空を確認された。
《失敗なんてしねえよ。だいたい、アレが失敗するのは、あちら側の意思を無視して無理やり引っ張るからじゃんか》
《ふふっ。将也さんは、自分から飛び出して来ますわ》
《む。寧ろ将也が間違えて主意外の者の呼び掛けに応えてしまう方がありそうだ……》
《……ありそうだな……》
《ありそうですわ……》
「っ、すぐにやる!」
《それがいい!》
《それがいい》
《それがいいですわっ!》
まさかの将也の方でのうっかりがありそうな危機に、高耶の腹も決まった。
庭に陣を描き、力を込める。
そして、呼びかけた。正しく喚び出されたのが将也であると確認し、高耶は最後の気合いを入れた。
「……名は……【将閃】……閃光のように……いつまでも将であれ」
《っ……ありがとう。高耶》
「……ああ。お帰り」
《ただいま!》
もういつもの父だった。式神として喚び出しているので、実体もある。
成功して良かったとほっと息を吐く高耶。そんな中、瑠璃と珀豪が茫然と将也を見ていた。充雪も首を傾げて不思議そうにしている。
「どうしたんだ?」
《何か変か?》
《変ですわ》
《変だな》
《変だ》
「え?」
《んん?》
はっきりと変と言われて、将也も首を傾げた。
するとそこに、瑶迦が出て来て声を掛ける。
「あらあら。高耶さんったら、気合いを入れ過ぎて、神気も込めてしまったのね? 将也さんが闘神になっているわよ?」
「……え?」
《……へ?》
《あ~……》
《あー……》
《おおっ、やったな将也!》
「ふふふっ。さすがは高耶さん。予想の斜め、遥か上に行きましたわねっ」
瑶迦が愉快だと笑い、高耶と当事者である将也は茫然とする。
「……はあ!?」
《ええ!?》
意味が分からなかった。
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