秘伝賜ります

紫南

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第七章 秘伝と任されたもの

383 会合です

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緊急の会合は、その日の夜に開かれ、対策が議論された。集まった首領達は、頭を抱えた。

「確かに緊急だとは聞いたが……これはまた一級品だなあ。はっはっはっ」
「笑い事ではありませんよ、虎徹さんっ」

笑うしかないなと言って、自身の膝を叩くのは鐘堂しょうどう虎徹こてつ。神楽部隊を支える元は神職にあった一族の長だ。年は今年で七十五らしい。

「いやあ、睦美ちゃんも笑いなよ。神職持ちが、あり得んことしやがってって思うやろう?」
「思っても笑えませんよ!」

虎徹の向かいに座って嗜めるのは、同年の女性だ。名は浮岸うがん睦美むつみ。可愛らしい小柄な女性で、いわゆる動物と会話ができる能力を持つ一族の長だ。主な仕事は、力が衰えてしまった神の元にいる神使達を保護することだ。そして、動物達を使って諜報のようなことも出来る。情報屋でもあった。

「うむ。決して笑い事では済まされん問題ではあるようだな。秘伝のは、よく見つけたものだ」
「いえ……たまたまなのですが……」
「そういう星の下に生まれたと諦めよ」
「うっ……」

珍しく追い詰められる高耶の姿を見て、達喜が笑いながらもフォローに回る。

「はははっ。篤じい、本当の事で避けようのない事実でも言ってやるなよ」
「ふむ。すまぬな。この歳になると、何でもあるがまま受け入れるのが当たり前になるのでな」

高耶をそんなつもりもなく追い詰めているのは、九十も半ばに差し掛かるらしい九童くどう篤久あつひさだ。その歳を感じさせない物言い。盲目だが、明らかに見えているだろうと言う様子の身のこなしをする。実際、医者には盲目と間違いなく診断されるが、普通に資料も手にして読める。

目を閉じてしまっているが、それでも読める。ほぼ彼の世界は霊視状態で、人の世とは違うものが見えているが、特に不便はないらしい。資料が読めるのも、何かの目を借りて見ているということらしい。不思議な老人だ。

元々、九童家は霊視の力が強く、神子も生まれやすい。だが同時に、心を病む者が多い家でもある。お陰で未だに当主交代の目処が立たないと日々嘆いている。

「でも、確かに高耶君は見事に爆発寸前の危ない案件を拾ってくるよね」
「源龍さんまで……勘弁してください……」

榊源龍も、久し振りに高耶に会えたことで、深刻な状況であるのは分かっていても笑ってしまう。

「この際やし、高坊には地方全て回ってもらうかや」
「お姉さんダメですよ。毎日こんな議題がやって来たらどないしますの?」
「ほ……それは、わややわ。あかんなあ」
「見つかるのはええんですけどねえ」
「……」

この子どうしようかという目で、焔泉と時刃ときわ桂花けいかに見られ、高耶は小さくなるしかなかった。

「ほんでも、今回のはギリやねえ。爆発前で良かったわ」
「そうですわねえ」
「……」

面倒事だけどねと続きそうな二人から、目はしっかり逸らしておいた高耶だ。

「で? どうするんだい? 神様を宥める以前に、封印を解いた途端に呪われないかな?」

蓮次郎が軽い口調で現実を示唆する。これに、九童老が静かに確認する。

「橘の。結界でその場に留めることは可能か?」
「封じを解いた後ってことです? どれだけの怒り具合かにもよりますねえ。怒気って、威圧とかと一緒で、その気になれば結界も壊せるから」
「うむ……」
「それ以前に、神気が強いとか、呪う力が強ければ、仮に最強硬度でも、それぞれに特化した結界じゃなければ外に滲み出る可能性は高いかな」
「橘の結界は、用途別であったな……」
「そういうこと~。大体、神様を結界で閉じ込めるとか愚行でしょ? それこそ、封印術とは別物だし」
「そうか……」

結界はあくまでも、一時的に閉じ込めるもの、守るものであって、長い時を封印するのとは違う。もちろん、橘が施す封印術は強力ではある。

「用途別で結界の種類は豊富だから、神気だけとか呪いだけを対象に閉じ込める事は可能だよ?」
「おっ。なら呪いだけ何とかすれば良いんじゃねえの?」

達喜がそんな答えを出す。しかし、それは根本的な解決にはならない。

「バカですか? そんな簡単なものじゃないんですよ。呪いにも種類や格があるんです。それに、大元を断たなければ意味がありません」
「え~、めんどくせ」
「あなたは、何もする気がないようですね……」
「そんな事ねえけどな。寝るのやだな~。めっちゃ嫌な予感するし」
「嫌な予感って……」
「「「「「……」」」」」

予知をする夢咲の当主が嫌な予感がすると言うのだ。物凄くヤバそうだと誰もが口を閉じた。







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読んでくださりありがとうございます◎

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