秘伝賜ります

紫南

文字の大きさ
409 / 463
第七章 秘伝と任されたもの

409 もはや否定する力もなく

しおりを挟む
エルラント達の紹介を受け、年齢やどのような存在かを知った神職の者たちは、信じられないと、ここで断じることができなくなっていた。

「これまでのことを知ってしまっては……」
「ええ……信じないわけにはいきませんよね……」
「魔女様とは……」
「土地神様……神が……神とは……」

胸中は穏やかではない。大混乱中でもある。

「魔術師と吸血鬼ですか……いえ、嘘だとは思っていません。その存在を知らずに生きてきたというのが……悔しいと申しますか……」
「言いたいことは分かります……こう……人よりも世界を知っているつもりで、まだまだ世界の半分も知らなかったのではないかと……」
「ああ、それはありますね。それと、信じていたはずなのに、本当は信じていなかったのだと……自覚させられました」
「そうですねえ……神はおられるのだと……そう口にしていただけだったのだと、思い知らされたようで……」

反省もあるようだ。

「ふふふっ。世界とは、思っている以上に大きなものですわ」
「そうねえ。私もまだまだ、知らない事あるものね」
「だなあ。明らかにならないものが、未だにあるってのは、楽しいもんだぜ」
「全てを知るというのは、神でも難しいかもしれませんね」

そんな話をエルラント達がすれば、なるほどと頷き、盛んに質問が飛び交う。彼らはとても話し上手だ。そして、彼らより年上のものはいない。キルティス達からすれば、初老もとうに過ぎた者達も、子どものようなものだった。

頑固な者達にも、まだまだ若いわねと笑い、諭していくのが上手かった。

「さあ、桂花さん。次は天使と悪魔だったわよね? 高耶さん。お願いね」
「あ、はい……」

そうして、天使の瑠璃るり、悪魔の玻璃はり、天使と悪魔の子として瑪瑙めのうを紹介した。

「う、美しいっ……」
「……はあ……人に対して美しいなどと……本当に思えるものなのですね……」
「ああ、確かに……これは美しいと言わざるを得ない……」
「翼が……なんとも神秘的だ……純白というのは……輝くのですね……」

瑠璃の美しさに、目が潰れそうになっていた。そした、玻璃が挨拶すれば、その声に魅了される。それが魅了の力だと説明も入った。

「うっ、魅了……魅了とは……はあ……分かっていてもこれは……」
「魅了という状態を実際に経験できるとは……いやあ、貴重な体験ですっ」

言葉として知っていても、実際それを体験することなどほぼないだろう。強制的に惹きつけられるその不思議な感覚に、ちょっと恍惚としている者もいるようだ。

「あんな可愛い子になら、なんでもしたくなりますねっ!」
「あの樹精の果泉ちゃんとはまた違った可愛らしさだっ」

瑪瑙にもしっかり魅了されたらしい。早々にまた首領達の方で、抱っこ争奪戦が始まっていた。

そして、最後に、妖精を喚ぶことになったのだが、その前に瑤迦達にも教えていなかったと気付く事態になった。

「高耶さん? どうして言わなかったのです?」
「……知っているものと……」

これに、イスティアも呆れた声を出す。

「いや、知らねえよ。妖精なんて、俺らでも見た事ねえぞ? エル、お前は?」
「ないですねえ。だが……もしや、精霊に擬態したりしていないかな」

イスティアやキルティス達よりは、世界を歩き回っているエルラントに話を振れば、そんな問いかけが高耶に向けられる。

「あ、してるかもしれません……」
「やはり……」

エルラントは、その存在を知っていたかもしれないようだ。

「え? 擬態するの? あ、なら、あれかしら……」
「ん? なんだ。覚えあんの?」

イスティアは、何か心当たりのあるらしいキルティスに目を向ける。

「なんか違和感のある子に会ったことがあるのよ。樹精って、性質的にあまりアクティブな子が居ないの。だから、攻撃的な子はいないでしょう? 無視する子はいるけど」
「ああ、確かに。怒り方を知らない子が多いな」
「それはあるね。それで、契約者の感情に左右され過ぎて、問題が起きる事もあるくらいだ」
「そうですわねえ。どちらかといえば、お淑やかな子が多いですものね」

瑤迦の屋敷では、樹精達もかなりいる。度々訪れるようになったエルラント達も、そうした実感はしやすかった。

「で? 擬態した奴がいるって話だったか」
「そうそうっ。やたらと話かけてくる子がいたのよ。けど、契約する? って聞いたら、やめとくって消えちゃったの」
「消えた……ってのも奇妙だな。なるほど。そんじゃあ、高耶。お披露目しろや」
「……はい」

真剣な顔になったイスティアが綺麗な顔を凄んで見せる。これに逆らえるはずはなかった。









**********
読んでくださりありがとうございます◎
今年もよろしくお願いします!
しおりを挟む
感想 675

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」 魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。 ――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。 「ここ……どこ?」 現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。 救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。 「ほら、食え」 「……いいの?」 焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。 行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。 旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。 「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」 「ウチの子は天才か!?」 ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。 これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。 ※若干の百合風味を含みます。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

処理中です...