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第七章 秘伝と任されたもの
418 お怒りみたいです
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特訓を始めて三日。ようやくその日がやって来た。
土曜日の部活も終わり、職員達も安全のためにと帰らせた午後八時。ここから連盟の関係者だけしか出入りできなくなるよう、今回は公的機関を通して手を回している。
学校の関係者に使える伝手がなかったのだ。その伝手がないからこそ、今回のようなものが見逃されて来てしまったとも言える。
「はあ……正に爆発寸前の不発弾状態だね」
橘の術者達が中心となって学校の周りに人避けの結界と特殊不可視と遮音の結界を張っている。それを監督しながら、蓮次郎は顔を顰めていた。
高耶達、連盟の関係者が二百人ほどいるのだが、それを見えなくしてある。学校は誰もいない静かなものだと外からは見えるのだ。
仮に戦いで煩くしてもその音が漏れない。そうした結界は、若い橘の術者達が訓練も兼ねて張っていた。これらの結界も秘伝家から得た新しいものだ。
「う~ん。うん。穴もない。よく出来たみたいだ。分厚さもしっかりしているね」
「ほお。これはええなあ。結界は一人で張るものだと思っておったが……今までは、ここまでの大きさのものならば、力を補佐する者達を用意するか、幾つも重ねていくのが普通だったでねえ」
複数人で結界を張るというのは、今回のような大きな結界を一つ張るのではなく、一人が結界を張り、その一人に補佐として何人かが力の調整と補助をすることで大きくしていた。時には何人かの結界を少しずつ重ねていき、広さを取ることもあったようだ。
「ええ。ここまで綺麗に繋げて一つの結界を複数人で作るというのは初めてです」
「これを応用したのが、荒ぶる神をも閉じ込める結界やね」
「実戦でどれだけ耐えられるかはまだまだ未知数……不安ではあるけどね」
「なんや。珍しく弱気やないの」
「そりゃあそうですよ。あんな怖そうなの相手にしたことないですから」
「……せやねえ……」
この場に集った者達には視えていた。荒ぶる神が。その見た目はとても特殊だ。
「……思うんやけど……あれはサナギかや……」
「ぐるぐる巻きにされてるみたいに見えるよ。ミイラみたいに」
「怨嗟と怨念が巻き付いとるんや思うんやけど……外すの怖いなあ」
「バタバタ、ぴちぴちしてるもんね……」
神の本来の姿を確認できていなかった。それは、明らかに良くないものが周りに渦巻き、この地に縫い付けているような、無理やり留めているように見える。黒い気持ちの悪い帯のようになったものが、巻き付いているのだ。
「ぴちぴちて……魚やないねんから」
「けど、釣り上げた魚みたいに跳ねてない?」
「そうやけども……」
激しくジタバタしているのが見えており、さすがの連盟の者達も近づくのが怖かった。
「よくもまあ、この状態を気にせず学校に通えたもんやなあ」
「あ~、音の子ね。あと高耶君の従兄弟。何度か高耶君も来るけど……」
「ここまでジタバタしていませんでしたから」
高耶が二人に近付き、そう告げた。言い訳ではないが、ここまで気になるほど暴れ出したのは最近だ。
そして、今回参加となったイスティアとキルティスが近付いてきて見解を口にする。
「アレだな。高耶が来て、ちょっと刺激されたのと、神職の奴らに反応してる」
「やられた被害者は加害者の関係者を恨むからね~。神職の子達に攻撃されたんでしょ? 神木まで切られて。怒って当然よね~」
「「「「「……っ」」」」」
見学という扱いになっている神職の者達は、完全に怯えていた。しかし、自分たちの先祖の不始末だ。見届けなくてはならないと震える体を叱咤してこの場に居る。
「まあ、あなた達は悪くないわよ。あくまでも手を出したのはもうこの世に居ない子だものね。子孫にまで恨みを向けられるのは違うわよね~」
「思想までは遺伝しねえよ。環境がつくるものだからな。少なくとも、今後はアレを討とうなんて考えを持つような環境を作らないだろ?」
「も、もちろんです!」
「きちんと記録を残し、反省とともに教訓として参ります!」
「それでいい」
「それでいいと思うわ」
今日のこの恐怖を伝えることは難しいだろうが、視る力を取り戻し、連盟との繋がりも出来たなら、子孫達の育つ環境はがらりと変わる。もちろん、今後一切同じ過ちを繰り返さないと確実に言えるものではない。時が経てば忘れられるものもあるし、体験した本人にしか分からないものは多い。それでも、しばらくは伝える努力をしてくれるだろう。それで今は良しとすべきだ。
「あなた達は私が守るわ。その結界から出ないでね?」
「「「「「はい!」」」」」
キルティスが守るならば安心だと、連盟の者達も気にせず全力を出せそうだ。
「日も暮れた。始めよか」
「「「「「はい!」」」」」
本番はこれからだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
読者賞ありがとうございました。
これからもよろしくお願いします!
土曜日の部活も終わり、職員達も安全のためにと帰らせた午後八時。ここから連盟の関係者だけしか出入りできなくなるよう、今回は公的機関を通して手を回している。
学校の関係者に使える伝手がなかったのだ。その伝手がないからこそ、今回のようなものが見逃されて来てしまったとも言える。
「はあ……正に爆発寸前の不発弾状態だね」
橘の術者達が中心となって学校の周りに人避けの結界と特殊不可視と遮音の結界を張っている。それを監督しながら、蓮次郎は顔を顰めていた。
高耶達、連盟の関係者が二百人ほどいるのだが、それを見えなくしてある。学校は誰もいない静かなものだと外からは見えるのだ。
仮に戦いで煩くしてもその音が漏れない。そうした結界は、若い橘の術者達が訓練も兼ねて張っていた。これらの結界も秘伝家から得た新しいものだ。
「う~ん。うん。穴もない。よく出来たみたいだ。分厚さもしっかりしているね」
「ほお。これはええなあ。結界は一人で張るものだと思っておったが……今までは、ここまでの大きさのものならば、力を補佐する者達を用意するか、幾つも重ねていくのが普通だったでねえ」
複数人で結界を張るというのは、今回のような大きな結界を一つ張るのではなく、一人が結界を張り、その一人に補佐として何人かが力の調整と補助をすることで大きくしていた。時には何人かの結界を少しずつ重ねていき、広さを取ることもあったようだ。
「ええ。ここまで綺麗に繋げて一つの結界を複数人で作るというのは初めてです」
「これを応用したのが、荒ぶる神をも閉じ込める結界やね」
「実戦でどれだけ耐えられるかはまだまだ未知数……不安ではあるけどね」
「なんや。珍しく弱気やないの」
「そりゃあそうですよ。あんな怖そうなの相手にしたことないですから」
「……せやねえ……」
この場に集った者達には視えていた。荒ぶる神が。その見た目はとても特殊だ。
「……思うんやけど……あれはサナギかや……」
「ぐるぐる巻きにされてるみたいに見えるよ。ミイラみたいに」
「怨嗟と怨念が巻き付いとるんや思うんやけど……外すの怖いなあ」
「バタバタ、ぴちぴちしてるもんね……」
神の本来の姿を確認できていなかった。それは、明らかに良くないものが周りに渦巻き、この地に縫い付けているような、無理やり留めているように見える。黒い気持ちの悪い帯のようになったものが、巻き付いているのだ。
「ぴちぴちて……魚やないねんから」
「けど、釣り上げた魚みたいに跳ねてない?」
「そうやけども……」
激しくジタバタしているのが見えており、さすがの連盟の者達も近づくのが怖かった。
「よくもまあ、この状態を気にせず学校に通えたもんやなあ」
「あ~、音の子ね。あと高耶君の従兄弟。何度か高耶君も来るけど……」
「ここまでジタバタしていませんでしたから」
高耶が二人に近付き、そう告げた。言い訳ではないが、ここまで気になるほど暴れ出したのは最近だ。
そして、今回参加となったイスティアとキルティスが近付いてきて見解を口にする。
「アレだな。高耶が来て、ちょっと刺激されたのと、神職の奴らに反応してる」
「やられた被害者は加害者の関係者を恨むからね~。神職の子達に攻撃されたんでしょ? 神木まで切られて。怒って当然よね~」
「「「「「……っ」」」」」
見学という扱いになっている神職の者達は、完全に怯えていた。しかし、自分たちの先祖の不始末だ。見届けなくてはならないと震える体を叱咤してこの場に居る。
「まあ、あなた達は悪くないわよ。あくまでも手を出したのはもうこの世に居ない子だものね。子孫にまで恨みを向けられるのは違うわよね~」
「思想までは遺伝しねえよ。環境がつくるものだからな。少なくとも、今後はアレを討とうなんて考えを持つような環境を作らないだろ?」
「も、もちろんです!」
「きちんと記録を残し、反省とともに教訓として参ります!」
「それでいい」
「それでいいと思うわ」
今日のこの恐怖を伝えることは難しいだろうが、視る力を取り戻し、連盟との繋がりも出来たなら、子孫達の育つ環境はがらりと変わる。もちろん、今後一切同じ過ちを繰り返さないと確実に言えるものではない。時が経てば忘れられるものもあるし、体験した本人にしか分からないものは多い。それでも、しばらくは伝える努力をしてくれるだろう。それで今は良しとすべきだ。
「あなた達は私が守るわ。その結界から出ないでね?」
「「「「「はい!」」」」」
キルティスが守るならば安心だと、連盟の者達も気にせず全力を出せそうだ。
「日も暮れた。始めよか」
「「「「「はい!」」」」」
本番はこれからだ。
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読者賞ありがとうございました。
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