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第七章 秘伝と任されたもの
423 潜むもの
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扉から出て来た妖精女王は、状況を確認して高耶の方を見ると頷いてみせた。
《異界に一体ずつで良いかしら?》
「お願いします」
これにまた一つ頷き、妖精女王は鬼達の下に扉を開く。
《術者も連れて行きますわ。順に黙らせるのでしょう?》
「はい」
《戦闘の方もお手伝いしますわ。ねえ、あなた》
《うんうん! 部隊をいくつか呼ぶよ! 人だけにすると、良くなさそうだしね!》
《ええ。何人か喰らっているようですし》
「「「「「え……」」」」」
「やはり……」
それは、鬼から感じる違和感。既に正気ではないと分かるものだ。
「……それって、人を喰ってるってこと?」
蓮次郎が鬼達から目を離さずに問いかける。これに妖精女王が答えた。
《そこの鬼だけではありませんわ。下にまだ潜んでいる妖達もです。この場所。行方不明者が多かったのではないかしら》
「っ、すぐに確認させますわ!」
桂花が外に連絡して、周辺での行方不明者の情報を集めさせる。
「桂花さん! 確認の範囲の年代は広げてください。ここ数年ではないです」
「っ、わかりましたわ! 六十年ほど前まで調べさせます!」
《ここ数年はないの?》
「十年前までの記録は確認したんです……」
《予想していたのね?》
「ええ……」
ここまで神が正気を失うということ、そして、鬼が居る可能性を考えると、それは予想できることだった。
《そう……でもそうね。現代社会では行方不明者がそれなりに居るとはいっても、人里……街中での妖被害はかなり未然に防げているでしょうから》
「はい……街中では、神隠しにあう確率は低くなっですからね……連盟でも見回りは強化されています」
「うむ。最近は防犯カメラでも妖が確認できるようになったのもあるでなあ」
焔泉が同意する。そうした見回りもできていた。今時は防犯カメラも増えている。
《そうでしたの。さすがですわね。さあ、班わけもできましたわね。鬼達を移動させます》
「お願いします」
《構わないわ。頼ってもらって嬉しいもの。倒してしまって良いのよね?》
「はい……あの状態では、正気に戻ることもなさそうですし」
《そうね……人の味を知ってしまってはね……》
実際の血肉の味だけでなく、妖ならばその感情も喰らう。鬼も似ている。負の感情だけを餌として求めていたのも知っているのだ。そうしたものを全て知った鬼は、きっと本来の過ちを自覚することすらできなくなっている。
《では、鬼達は任せて。けど、気を付けることね。恐らく、あの鬼達が居ることで出ることを躊躇っていた妖達が出てくるわよ。それも、酷い臭いのが……私たちは失礼するわ》
「はい。鬼のこと、お願いします」
《ええ》
鬼達の動きを封じていた橘の者と、攻撃手段の多い安部家の関係者の多くが妖精女王によって作られた空間に移動していった。そこで妖精達と共に鬼を退治してもらう。
「さあ~て。あの女王様が、酷い臭いと言うほどの醜悪なものが出てくるんだな?」
達喜が拳を握って傍に来た。目線は鬼達が出てきた穢れが溜まる場所に向かっている。
「鬼が出るか蛇が出るかって所だと思うけど、鬼はもう出ちゃったからな~」
「橘の……呑気に何を言っておる……」
「いや、だってさ。蛇嫌いなんだよ。コレ見てよ。鳥肌。やばいのが出てきそうでさあ」
「……軽口は緊張からかいな……」
「あははっ」
蓮次郎は笑っているが、その笑みはぎこちない。冷や汗もかいているようだ。
結界を張っていることで、この中の空気を一番感じているのだろう。
「っ……今から、結界の維持に全力を使うよ」
「そこまでのもんが出てくる……と?」
焔泉も嫌な予感はヒシヒシと感じているようだが、確認したいのだろう。
「思うに……ここは妖を寄せてた……あの中……恐らく蠱毒のような状態になってる……」
「っ……なるほどのお……食虫植物のようなものと聞いた時に、思い当たるべきだったかもしれんなあ」
この場所には、虫も多かった。その不自然さをも含めて可能性を考えるべきだった。
「幸い、鬼は残ってた。早く気付いてよかったよね。あと数年気付かなかったら……怖いなあ……」
鬼も含めて蠱毒は完了していたかもしれない。そうなれば、どんな妖となっていたかわからない。
「神の御前で蠱毒とはのお……ほんに恐ろしいものやて」
「っ、出てきます!」
「「「「「っ!!」」」」」
その高耶の警告と同時に、酷い臭いが辺りに漂った。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
《異界に一体ずつで良いかしら?》
「お願いします」
これにまた一つ頷き、妖精女王は鬼達の下に扉を開く。
《術者も連れて行きますわ。順に黙らせるのでしょう?》
「はい」
《戦闘の方もお手伝いしますわ。ねえ、あなた》
《うんうん! 部隊をいくつか呼ぶよ! 人だけにすると、良くなさそうだしね!》
《ええ。何人か喰らっているようですし》
「「「「「え……」」」」」
「やはり……」
それは、鬼から感じる違和感。既に正気ではないと分かるものだ。
「……それって、人を喰ってるってこと?」
蓮次郎が鬼達から目を離さずに問いかける。これに妖精女王が答えた。
《そこの鬼だけではありませんわ。下にまだ潜んでいる妖達もです。この場所。行方不明者が多かったのではないかしら》
「っ、すぐに確認させますわ!」
桂花が外に連絡して、周辺での行方不明者の情報を集めさせる。
「桂花さん! 確認の範囲の年代は広げてください。ここ数年ではないです」
「っ、わかりましたわ! 六十年ほど前まで調べさせます!」
《ここ数年はないの?》
「十年前までの記録は確認したんです……」
《予想していたのね?》
「ええ……」
ここまで神が正気を失うということ、そして、鬼が居る可能性を考えると、それは予想できることだった。
《そう……でもそうね。現代社会では行方不明者がそれなりに居るとはいっても、人里……街中での妖被害はかなり未然に防げているでしょうから》
「はい……街中では、神隠しにあう確率は低くなっですからね……連盟でも見回りは強化されています」
「うむ。最近は防犯カメラでも妖が確認できるようになったのもあるでなあ」
焔泉が同意する。そうした見回りもできていた。今時は防犯カメラも増えている。
《そうでしたの。さすがですわね。さあ、班わけもできましたわね。鬼達を移動させます》
「お願いします」
《構わないわ。頼ってもらって嬉しいもの。倒してしまって良いのよね?》
「はい……あの状態では、正気に戻ることもなさそうですし」
《そうね……人の味を知ってしまってはね……》
実際の血肉の味だけでなく、妖ならばその感情も喰らう。鬼も似ている。負の感情だけを餌として求めていたのも知っているのだ。そうしたものを全て知った鬼は、きっと本来の過ちを自覚することすらできなくなっている。
《では、鬼達は任せて。けど、気を付けることね。恐らく、あの鬼達が居ることで出ることを躊躇っていた妖達が出てくるわよ。それも、酷い臭いのが……私たちは失礼するわ》
「はい。鬼のこと、お願いします」
《ええ》
鬼達の動きを封じていた橘の者と、攻撃手段の多い安部家の関係者の多くが妖精女王によって作られた空間に移動していった。そこで妖精達と共に鬼を退治してもらう。
「さあ~て。あの女王様が、酷い臭いと言うほどの醜悪なものが出てくるんだな?」
達喜が拳を握って傍に来た。目線は鬼達が出てきた穢れが溜まる場所に向かっている。
「鬼が出るか蛇が出るかって所だと思うけど、鬼はもう出ちゃったからな~」
「橘の……呑気に何を言っておる……」
「いや、だってさ。蛇嫌いなんだよ。コレ見てよ。鳥肌。やばいのが出てきそうでさあ」
「……軽口は緊張からかいな……」
「あははっ」
蓮次郎は笑っているが、その笑みはぎこちない。冷や汗もかいているようだ。
結界を張っていることで、この中の空気を一番感じているのだろう。
「っ……今から、結界の維持に全力を使うよ」
「そこまでのもんが出てくる……と?」
焔泉も嫌な予感はヒシヒシと感じているようだが、確認したいのだろう。
「思うに……ここは妖を寄せてた……あの中……恐らく蠱毒のような状態になってる……」
「っ……なるほどのお……食虫植物のようなものと聞いた時に、思い当たるべきだったかもしれんなあ」
この場所には、虫も多かった。その不自然さをも含めて可能性を考えるべきだった。
「幸い、鬼は残ってた。早く気付いてよかったよね。あと数年気付かなかったら……怖いなあ……」
鬼も含めて蠱毒は完了していたかもしれない。そうなれば、どんな妖となっていたかわからない。
「神の御前で蠱毒とはのお……ほんに恐ろしいものやて」
「っ、出てきます!」
「「「「「っ!!」」」」」
その高耶の警告と同時に、酷い臭いが辺りに漂った。
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