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第七章 秘伝と任されたもの
426 可愛い……だろうか?
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広い運動場の校舎に向かって右側では、テンション高めな連盟の者達が戦っている。
後方支援ということで、日が沈む頃になって統二や勇一も駆け付けてきた。源龍がそんなまだ現場慣れしていない者達を一挙に引き受けて指導していた。
それらを全て任せてしまっている現状は心苦しいが、高耶は一人運動場の左側に来て土地神と向き合った。
「穢れ……は、全部取り除けないか……」
洗濯された土地神は、ビチビチと跳ね回っていたのが嘘のように、今やぐったりと水の渦に支えられて浮いている。
《かなり強めに洗ったから、外側は全部剥がせたと思うけどね》
清晶はやり切ったという顔をしていた。大物を洗い終わったのだ。そんな心情になるのも無理はない。寧ろ正しい反応だ。
《染まってしまっておるなあ》
残っている穢れは、黒いシミとなっている。それを痛々しそうに黒艶が見上げる。
《我々でもここまでのものは……土地神自身の気力にも影響します》
常盤は、清晶の洗濯の傍ら、浄化もかけていた。浄化ならば、内側も全て効果範囲に入る。よって、大抵の穢れならば、染み込んでしまっていても消せたはずなのだ。
《常盤のって、異物認定しないと消えないんじゃない?》
《ああ。意識の端にもそれが本来のものではないと認識していることが必要だ》
《となると……》
「まずは正気付かせるか」
《それがよかろう》
清晶は水の渦で支えたまま、土地神の向きを変え、高耶達と向き合うように移動させる。土地神の姿は、イモムシのようだ。穢れで覆われて蓑虫状態だったところを剥がされたように見える。
《む。顔は可愛いではないか?》
《可愛い……なるほど》
《顔って……幼虫とかイモムシ系って、あの目? っぽいのも、触覚だったり、模様だったりするよね? 目? 顔? で良いの?》
《あれは大変、円な目だ。可愛らしいだろうっ!》
《可愛い……》
《目、白だよ? 目じゃないでしょ!》
《体の色が濃い橙色だろう? ならば白い目でわかりやすい。なんとも愛らしい顔ではないか!》
《白目剥いてるだけだったらどうなんだよ!》
《むむっ。主よ! 早く目を覚まさせるのだ! そして、その愛らしさを! とく! 早く!》
《そもそもイモムシに白目ないだろって言いたいんだよ!!》
《……可愛い……》
「……」
何の言い合いだと高耶は一気に肩の力が抜けた。常盤は自分に暗示でもかけているのか、可愛いを連発して確認している。
「はあ……」
高耶は大きく息を吐いてから、土地神を囲んで聖域を作り出す。すると、土地神が身を捩った。
キュギャァァァ!!
「くっ」
耳を痛めてそうになる鳴き声が響き、咄嗟に結界で囲い、上に逃して、聖域を解く。
あの声は、妖が視える者にしか聞こえないので、外に漏れても大丈夫だろう。
それよりも気になるのは、土地神の反応だ。
「……聖域でなんで……っ?」
《見えました。中に何か居ます》
常盤が鋭い目で腹の辺りを見て、構える。
《あれは……鬼……いや、だが、人型ではある……》
《鬼ではないけど、穢れてるね。常盤の浄化を拒んだのが、アレじゃない?》
《そんな気が……します》
「なるほど……なら、アレを取り出すしかないな……吐き出すのは……」
《絞り出す?》
「……さすがにそれは……」
《口に突っ込むか? ほれ、珀豪が酔っ払いに吐かせていただろう》
「……あ~……」
そこで充雪がどこからともなく現れた。
《一発食らわせればよかろう。ほれ、毒を吐かせるためのやつだ》
「……酷いことするみたいだ……」
《あれは助けるものだ》
「いや、その後尋問するから良いやつだろ……」
敵に服毒死させないための技だ。酷い暴力よりも暴力的なやつだった。しかし、内臓は傷付けない絶妙な力加減が必要で、秘伝が持っているのは、術も使っている特殊なものだ。
胃洗浄などという技術がない頃に出来たものらしく、失敗すると普通に死んでしまう。威力からして強力だ。
「あんな、どこに胃があるかも分からないのに……」
《そこはほれ。穴開けんけりゃ、死なんて。仮にも神だし》
「イスティア……っ、おじいちゃんを呼んどく」
「おおっ。呼んだか?」
高耶達が何やら困っているのを遠目に見て、イスティアが心配になって来てくれたようだ。
「今から土地神が呑み込んでいる何かを吐き出させます。けど、内臓とかの場所が人とは違うんで、力加減が……」
「おう。死なねえように見てりゃいいんだな? 危なかったら治療ってことで」
「はい……お願いします」
「ほいよ!」
イスティアは頼りにされて嬉しそうだ。
「では、行ってきます」
「おう」
高耶は土地神に近付いた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
●GWのお暇潰しに連載中の他作品もどうぞよろしくお願いします!
後方支援ということで、日が沈む頃になって統二や勇一も駆け付けてきた。源龍がそんなまだ現場慣れしていない者達を一挙に引き受けて指導していた。
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「穢れ……は、全部取り除けないか……」
洗濯された土地神は、ビチビチと跳ね回っていたのが嘘のように、今やぐったりと水の渦に支えられて浮いている。
《かなり強めに洗ったから、外側は全部剥がせたと思うけどね》
清晶はやり切ったという顔をしていた。大物を洗い終わったのだ。そんな心情になるのも無理はない。寧ろ正しい反応だ。
《染まってしまっておるなあ》
残っている穢れは、黒いシミとなっている。それを痛々しそうに黒艶が見上げる。
《我々でもここまでのものは……土地神自身の気力にも影響します》
常盤は、清晶の洗濯の傍ら、浄化もかけていた。浄化ならば、内側も全て効果範囲に入る。よって、大抵の穢れならば、染み込んでしまっていても消せたはずなのだ。
《常盤のって、異物認定しないと消えないんじゃない?》
《ああ。意識の端にもそれが本来のものではないと認識していることが必要だ》
《となると……》
「まずは正気付かせるか」
《それがよかろう》
清晶は水の渦で支えたまま、土地神の向きを変え、高耶達と向き合うように移動させる。土地神の姿は、イモムシのようだ。穢れで覆われて蓑虫状態だったところを剥がされたように見える。
《む。顔は可愛いではないか?》
《可愛い……なるほど》
《顔って……幼虫とかイモムシ系って、あの目? っぽいのも、触覚だったり、模様だったりするよね? 目? 顔? で良いの?》
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《可愛い……》
《目、白だよ? 目じゃないでしょ!》
《体の色が濃い橙色だろう? ならば白い目でわかりやすい。なんとも愛らしい顔ではないか!》
《白目剥いてるだけだったらどうなんだよ!》
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《……可愛い……》
「……」
何の言い合いだと高耶は一気に肩の力が抜けた。常盤は自分に暗示でもかけているのか、可愛いを連発して確認している。
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高耶は大きく息を吐いてから、土地神を囲んで聖域を作り出す。すると、土地神が身を捩った。
キュギャァァァ!!
「くっ」
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あの声は、妖が視える者にしか聞こえないので、外に漏れても大丈夫だろう。
それよりも気になるのは、土地神の反応だ。
「……聖域でなんで……っ?」
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《絞り出す?》
「……さすがにそれは……」
《口に突っ込むか? ほれ、珀豪が酔っ払いに吐かせていただろう》
「……あ~……」
そこで充雪がどこからともなく現れた。
《一発食らわせればよかろう。ほれ、毒を吐かせるためのやつだ》
「……酷いことするみたいだ……」
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《そこはほれ。穴開けんけりゃ、死なんて。仮にも神だし》
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