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第七章 秘伝と任されたもの
431 平和な休日
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翌日は流石に高耶も疲れて一日中家に居ることにした。
「お兄ちゃん。今日は一日いるの? おしごとは?」
それを優希が口にしたのは、昼ご飯の時。今日は休日なので、父母も居る。
「そういえば、珍しいわね。高耶が昼間に家に居るなんて」
「朝も起きて来なかったもんねえ」
どれだけ仕事人間だと思われているかわかる会話だ。
「ん~、まあ、たまには。昨日まで忙しかったから今日は休みだ」
「なにしてたの?」
「統二の所の学校の土地神様を復活……というか、元気にしてたんだ。統二も、今日は疲れてまだ寝てるかもな」
瑶迦の所で世話になっている統二が、食事時にも来ないということは、勉強が忙しい時か、疲れて休んでいる時だ。勉強をするという時でも、一度はこちらに顔を見せるので、今日は本当に動けないのかもしれない。
昨晩の騒動では、色々と能力を限界まで使う所があった。余裕があった者達でも、撤収する時に土地神が心置きなく休めるよう、近場で悪さをしそうな妖を掃除したりしてから帰ったのだ。統二もかなり活躍していたと聞いている。
おかげで、おそらく今日明日は連盟で動ける者は半数以下のメンバーになるだろう。
「大変だったの? あ、昨日いつ帰って来たのか知らないわ」
「確かに。朝方、物音がした気がしたけど……」
高耶は、父母に秘伝家の事を知られる前までは、未成年ということもあり、夜に仕事に出ることはあまりなかった。帰宅はせめて九時までにと連盟の方でも気にしてくれていたようだ。
しかし、家業のことも話したことと、成人したということで、最近は日を跨ぐギリギリになって帰って来ることも稀にあった。
「帰って来たのは、朝の五時くらいだったかな……休日があるとはいえ、学校の校庭に色々置いたままってことには出来なくて、片付けとかしたからな……」
「一晩中頑張ってたの?」
「ああ。一晩中……派手に戦うことは無かったが……精神的に疲れた」
鬼の方の相手をすれば良かったと思ったほどだ。肉体的な疲労より、精神的な疲労感の方が高耶は苦手だった。
そこに口を挟んだのは、珀豪だ。
《主は、土地神交代で土地に囚われる危険性も感じていたのだろう。あの土地神が回復し、人を許さねば、最悪土地は見放され、代わりに主が土地神として選ばれていた可能性が高い》
「それ、お兄ちゃん、ダメなやつ」
これがあって、イスティアやキルティスも参加したのだ。口にはしないが、高耶のための保険だった。
《その通り。正しい神楽を捧げて土地神の注意を引き、かつて間違って攻撃したことを人の代表として詫びた……土地を安定させ、土地神の怒りを解いたが……中々に厄介であったな》
「……人型にならない神は、言葉で訴えかけてもほとんど通じないからな……チャンネルも合いにくい」
《うむ……》
あの土地神は、虫の姿だった。そうなると伝えられるのは感情と行動で示すことだけ。意思の疎通を図るには、周波数を合わせる的なものも必要。それさえも、相手の意志がなければできない。
「言葉が通じないってこと?」
「そう……信頼関係を築くことができれば、ある程度通じるようになるんだけど、人間不信に拍車がかかっている状態だったから、通じるようになるのは下手したら何十年も先かも……」
虫でもなんでも、長く付き合っていくと、不意に言ってることが分かっているんじゃないかという様子を見せることがある。猫や犬なんかがわかりやすいだろうか。しかし、これは信頼関係がなければ生まれてこないものだ。あちらが知ろうとしなければ、言葉の意味なんて考えもしないのだから。これが周波数を合わせるということにも関係してくる。
《うむ。しかし、幸い、神楽は完璧だ。その内、こちらの声を聞こうとしてくれるだろうよ》
「そうだな……」
きっかけとなる繋がりは、神楽によって出来ている。なんとかなるだろう。それでゆっくりと時間をかけて歩み寄っていくしかない。
「あの土地神は、子ども好きのようだし、何とかなる……はずだ」
《文化祭という祭りもあることだしな》
「ああ……」
祭りは良い。楽しい気持ちが溢れる場所では、良い気が巡り、そこから家路につくことでその気を広げてくれる。土地に気を巡らせやすくなるものだ。
「文化祭かあ。楽しみだよねえ。その文化祭の準備だって言って、後片付けは後にすれば良かったのに」
「さすがに……祭壇とか神楽の舞台とかは目立つんで……」
《テントぐらいならば良いのだがな。それに、早く土地神を説得せねば、一夜にして生えた神木がな……》
「え? 生えた?」
「神木って、大きそうねえ」
《大樹であった。三本もな。果泉の力を少々甘く見ておった……》
「「あ、果泉ちゃんか……」」
可愛く笑って、とんでもない事をするのが果泉だ。もう美咲と樹は分かっている。
「アレのお陰で色々と上手くいった所があるんだがな……女王が居てくれて良かった。今の土地神の力では、亜空間に三本も入れ込めなかったからな」
「女王さま!? どんな人!?」
これには優希が食いつく。
「あ~……」
呼ぶのはどうかと思うし、迷う所だ。しかし、そこでエリーゼが思い出す。
《ご主人様っ。あのセキュリティー担当の人たちが、カメラに映るようにしてくれていませんでしたか?》
「あ……」
「おしゃしんあるの!?」
《ありますよ~。お仕事用のカメラがご主人様のお部屋に。それに撮ってあるはずです》
「見る!!」
《取ってきますね》
「ああ」
それから、のんびりと久し振りの休暇を楽しんだ。
いよいよ、次の土日には文化祭だ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「お兄ちゃん。今日は一日いるの? おしごとは?」
それを優希が口にしたのは、昼ご飯の時。今日は休日なので、父母も居る。
「そういえば、珍しいわね。高耶が昼間に家に居るなんて」
「朝も起きて来なかったもんねえ」
どれだけ仕事人間だと思われているかわかる会話だ。
「ん~、まあ、たまには。昨日まで忙しかったから今日は休みだ」
「なにしてたの?」
「統二の所の学校の土地神様を復活……というか、元気にしてたんだ。統二も、今日は疲れてまだ寝てるかもな」
瑶迦の所で世話になっている統二が、食事時にも来ないということは、勉強が忙しい時か、疲れて休んでいる時だ。勉強をするという時でも、一度はこちらに顔を見せるので、今日は本当に動けないのかもしれない。
昨晩の騒動では、色々と能力を限界まで使う所があった。余裕があった者達でも、撤収する時に土地神が心置きなく休めるよう、近場で悪さをしそうな妖を掃除したりしてから帰ったのだ。統二もかなり活躍していたと聞いている。
おかげで、おそらく今日明日は連盟で動ける者は半数以下のメンバーになるだろう。
「大変だったの? あ、昨日いつ帰って来たのか知らないわ」
「確かに。朝方、物音がした気がしたけど……」
高耶は、父母に秘伝家の事を知られる前までは、未成年ということもあり、夜に仕事に出ることはあまりなかった。帰宅はせめて九時までにと連盟の方でも気にしてくれていたようだ。
しかし、家業のことも話したことと、成人したということで、最近は日を跨ぐギリギリになって帰って来ることも稀にあった。
「帰って来たのは、朝の五時くらいだったかな……休日があるとはいえ、学校の校庭に色々置いたままってことには出来なくて、片付けとかしたからな……」
「一晩中頑張ってたの?」
「ああ。一晩中……派手に戦うことは無かったが……精神的に疲れた」
鬼の方の相手をすれば良かったと思ったほどだ。肉体的な疲労より、精神的な疲労感の方が高耶は苦手だった。
そこに口を挟んだのは、珀豪だ。
《主は、土地神交代で土地に囚われる危険性も感じていたのだろう。あの土地神が回復し、人を許さねば、最悪土地は見放され、代わりに主が土地神として選ばれていた可能性が高い》
「それ、お兄ちゃん、ダメなやつ」
これがあって、イスティアやキルティスも参加したのだ。口にはしないが、高耶のための保険だった。
《その通り。正しい神楽を捧げて土地神の注意を引き、かつて間違って攻撃したことを人の代表として詫びた……土地を安定させ、土地神の怒りを解いたが……中々に厄介であったな》
「……人型にならない神は、言葉で訴えかけてもほとんど通じないからな……チャンネルも合いにくい」
《うむ……》
あの土地神は、虫の姿だった。そうなると伝えられるのは感情と行動で示すことだけ。意思の疎通を図るには、周波数を合わせる的なものも必要。それさえも、相手の意志がなければできない。
「言葉が通じないってこと?」
「そう……信頼関係を築くことができれば、ある程度通じるようになるんだけど、人間不信に拍車がかかっている状態だったから、通じるようになるのは下手したら何十年も先かも……」
虫でもなんでも、長く付き合っていくと、不意に言ってることが分かっているんじゃないかという様子を見せることがある。猫や犬なんかがわかりやすいだろうか。しかし、これは信頼関係がなければ生まれてこないものだ。あちらが知ろうとしなければ、言葉の意味なんて考えもしないのだから。これが周波数を合わせるということにも関係してくる。
《うむ。しかし、幸い、神楽は完璧だ。その内、こちらの声を聞こうとしてくれるだろうよ》
「そうだな……」
きっかけとなる繋がりは、神楽によって出来ている。なんとかなるだろう。それでゆっくりと時間をかけて歩み寄っていくしかない。
「あの土地神は、子ども好きのようだし、何とかなる……はずだ」
《文化祭という祭りもあることだしな》
「ああ……」
祭りは良い。楽しい気持ちが溢れる場所では、良い気が巡り、そこから家路につくことでその気を広げてくれる。土地に気を巡らせやすくなるものだ。
「文化祭かあ。楽しみだよねえ。その文化祭の準備だって言って、後片付けは後にすれば良かったのに」
「さすがに……祭壇とか神楽の舞台とかは目立つんで……」
《テントぐらいならば良いのだがな。それに、早く土地神を説得せねば、一夜にして生えた神木がな……》
「え? 生えた?」
「神木って、大きそうねえ」
《大樹であった。三本もな。果泉の力を少々甘く見ておった……》
「「あ、果泉ちゃんか……」」
可愛く笑って、とんでもない事をするのが果泉だ。もう美咲と樹は分かっている。
「アレのお陰で色々と上手くいった所があるんだがな……女王が居てくれて良かった。今の土地神の力では、亜空間に三本も入れ込めなかったからな」
「女王さま!? どんな人!?」
これには優希が食いつく。
「あ~……」
呼ぶのはどうかと思うし、迷う所だ。しかし、そこでエリーゼが思い出す。
《ご主人様っ。あのセキュリティー担当の人たちが、カメラに映るようにしてくれていませんでしたか?》
「あ……」
「おしゃしんあるの!?」
《ありますよ~。お仕事用のカメラがご主人様のお部屋に。それに撮ってあるはずです》
「見る!!」
《取ってきますね》
「ああ」
それから、のんびりと久し振りの休暇を楽しんだ。
いよいよ、次の土日には文化祭だ。
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