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第一章
024 舞い踊る姫
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2018. 10. 26
**********
魁は素早く同僚達に話しをすると、散り散りになり、動けなくなった人や、逃げて来る人を導いた。
樟嬰は、それを満足気に確認すると、腰の得物を抜く。サッと大きな緋色の扇を開くき、気を込めた。
「参の姫【錦】!」
その言葉と共に、光に包まれた扇は、二回り程大きくなり、美しい金と銀の模様が浮き出てきた。
「行くよ、錦」
鋭く空を薙ぐと、光の斬光が一体のカルマに向けて一直線に飛び、その体を真っ二つに切り裂いた。
カルマは、断末魔を上げ、裂かれた場所から黒い霧になって霧散していく。
「いけるな」
ニヤッと面白そうに顔を歪めると、一気に数十の斬光を繰り出しながら駆け出した。
徐々に勢いをつけると、カルマが固まっている場所を目ざとく見付け、躊躇なくその群の真ん中へ高く跳びはねて入り込んだ。
慌てたのは、その鮮やかな行動に半ば見とれていた魁や同僚達だった。
「ッ……樟嬰様っっ」
叫ぶ声を聞くと同時に樟嬰は、一瞬でその群を黒い霧にして、中から何食わぬ顔で現れた。
「どうかしたのか?」
「っ……いいえ……っ、お怪我はございませんか……?」
「あぁ。何ともない。ないんだが……」
少しだけ首を傾げて錦を見ると、やはり怪我でもと、魁が慌てる。
「どうされました?」
「いや。どうも久しくこれを使わなかったもんだから、調子に乗りすぎでな……錦っ、加減するこっちの身にもなってくれよ……」
そうして錦に向かって話す様は、かなり危ない人のようだ。
「ん……? 今、この人何か危ないな……とか思っただろ」
「へっ……いや……」
「隠すな隠すな。わたしも自分でやってて恥ずかしくなる時があるんだ……よッ」
呑気に話しながらも斬光を幾つも繰り出し、もう既に半数以上を消してしまっていた。
そうして戦っているうちに、確実に一体ずつ仕留めている矢に気付いた。放たれる矢の方を目で確認してみれば、黄城の中階の辺りに、若い青年が弓をつがえているのが見える。
「……魁……あれは誰だ?」
不思議な気の拍動を感じる。
人ではない。しかし、神族でもない。誰かに似ていると思った。すると、目が合った。
それはまるで、初めて見た生き物に恐怖するような目だった。逃げ出すように奥へと引っ込んだその男を不思議に思いながら、気合いを込めた斬光は、また一気に過たずカルマを一掃した。
◆ ◆ ◆
「何なんだ? あの男……」
あの目を思い出すと少しばかり苛立った。一族の者達に、蔑むような目で見られることはしばしばあった。だから、たいていの嘲りや上から見下されるような目には頓着しない。
だが、あの視線は違う。
「くそっ、見たかっ魁ッ。あの男っ、私を珍獣でも見るような目で見おったぞっ。お前っ、今すぐここへ連れて来いッ」
ちょっと失礼ではないのか。自分でもよく分からないが、非常に腹立たしい。
樟嬰は、正体の分からないその男の存在そのものに何かを感じていたのだが、それには気付かず、ただあの目が気に入らなかったのだと思い込んだ。
「あっ、あのっ……どうか落ち着いてください。それに……」
「なんだっ」
「はっ、いえっ。あの方は、玉様ですっ」
何と言ったのか、頭が理解しなかった。
「っ、何っ? 玉……あれが……?」
そのことに衝撃を受け、再び彼のことを思い出そうとした時だ。閻黎が城から飛び出してきた。
「っ、樟嬰様っ。お出ででしたかっ。まさかっ御自ら討伐に……」
「閻黎殿……えぇ。全部片付きましたよ。すぐに領に戻ります」
「あ……お待ちをっ。今、玉様がおいでなのです」
それを聞くと、樟嬰ははっきりと答えていた。
「ッ、結構っ。会う必要はありません。あちらもないでしょう。ですので、どうかお伝えください。城の地、陽花の領内で、誤りはないかと」
またあんな目で見られたらと思うと、会いたくなかった。
「誤り……とは……」
「父上から聞いておりませんか?この世の理と律について」
「聞いております。っ、ではっ、陽花に理と律に触れるものがあると……っ」
妖魔を生み出し、瘴気を生む元となる問題。それを正さなくてはならない。
「恐らく。そして、同じく葉月でも……」
「っ……どうなさるおつもりですっ」
「……華月院に戻ります。そして、原因となっているものを排除します」
これは、あの家に生まれた樟嬰のやるべきことだ。
「っ、ではわたくしもっ。お一人では危険ですっ。華月院は、古くから能力を至上の物としている。邪魔と判断した者や、無能と判断した者は切り捨てる。あなたも例外ではないでしょう……」
「えぇ。ですから、力を使います」
「っ……あの力は命を……だから、余程の場合でない限りお使いにならなかったのでは? 今、力がある事を一族に知られればどうなるか……っ、道具として死ぬおつもりですかッ」
確かにそうだ。ここまで妖魔の数が増えてきたと言う事は、休む暇もなく力を行使し続けなくてはならない。そうなっては、どれほど神族としての生命力があったとしても、いくらももたないだろう。
「考えておりますので、ご心配には及びません。老師には、別に頼みたい事があります。お願いできますか?」
そう言って樟嬰は、悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
◆ ◆ ◆
「樟嬰様っ。馬を連れて参りました」
「おっ、さすがに気がきくな、魁」
天馬に跨がり、閻黎にもう一度向き直る。
「では、お願いします」
「お任せください……お気をつけて……」
それに応えるように穏やかに微笑むと、勢いよく舞い上がる。そんな樟嬰を、閻黎と魁は不安を胸に見送った。
樟嬰は、振り返る事なく真っ直ぐに葉月の方角へ向かって行く。行きと同じく、光の渦を出現させると、一瞬後には姿は見えなくなっていた。
その一部始終を、そっと城の窓から見ている者がいた。青玉は、いつまでも樟嬰が消えた一点を見つめていた。
「あれが……葉月領主……華月院樟嬰……」
初めて見た樟嬰は、鮮やかに優雅に舞を舞うように妖魔を退治していた。
果敢に向かっていく後ろ姿。閻黎には昔から、よく彼女の話を聞いていた。
葉月の領主は、まだ年若い女性だと。強く、戦いに秀でた男でさえも、一捻りでのしてしまう人だと。
にわかには、信じられなかった。現実に存在するなら、それはどれほど大柄で快活な女性なんだろうかと思った。
つい先ほどには、その女性が、華月院の深窓の姫であると聞かされ、ますますわからなくなった。弟である華月院沙稀は、利発で穏やかな少年だった。
あの少年の姉ならば、会ってみたいと思った。樟嬰を知る者は皆、美しく、卓越した知識と教養を持った方だと言うと聞く。
自身の主である王を選んだ時、美しい容姿に惹かれた。見た目は肝心だ。人目を惹く力は、王としては必要となる要素だ。次いで、強い光を持つ魂に惹かれた。これ程に惹かれる人は、他にはいないと思えたから選んだ。だが今、その時よりも強く惹かれる自分がいた。
振り向いて欲しい。
こちらを見て欲しい。
跳びはね、舞い踊る様は美しく目に焼き付いた。
目が合った時、まずいと思った。
自分の中で、何かが警告する。近づいてはならない。これ以上見てはならない。いつまでも目を合わせていたいと思う欲望と、そうしてはならないと響く警鐘。
自分が壊れてしまうのではないかと思った。
相反する心と身体に訳がわからなくなった。
「……樟嬰……」
甘く、絡み付く感覚。
これほどの激情を、自分が持っているとは知らなかった。
「華月院樟嬰……」
焼けるようなもどかしさが拡がった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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魁は素早く同僚達に話しをすると、散り散りになり、動けなくなった人や、逃げて来る人を導いた。
樟嬰は、それを満足気に確認すると、腰の得物を抜く。サッと大きな緋色の扇を開くき、気を込めた。
「参の姫【錦】!」
その言葉と共に、光に包まれた扇は、二回り程大きくなり、美しい金と銀の模様が浮き出てきた。
「行くよ、錦」
鋭く空を薙ぐと、光の斬光が一体のカルマに向けて一直線に飛び、その体を真っ二つに切り裂いた。
カルマは、断末魔を上げ、裂かれた場所から黒い霧になって霧散していく。
「いけるな」
ニヤッと面白そうに顔を歪めると、一気に数十の斬光を繰り出しながら駆け出した。
徐々に勢いをつけると、カルマが固まっている場所を目ざとく見付け、躊躇なくその群の真ん中へ高く跳びはねて入り込んだ。
慌てたのは、その鮮やかな行動に半ば見とれていた魁や同僚達だった。
「ッ……樟嬰様っっ」
叫ぶ声を聞くと同時に樟嬰は、一瞬でその群を黒い霧にして、中から何食わぬ顔で現れた。
「どうかしたのか?」
「っ……いいえ……っ、お怪我はございませんか……?」
「あぁ。何ともない。ないんだが……」
少しだけ首を傾げて錦を見ると、やはり怪我でもと、魁が慌てる。
「どうされました?」
「いや。どうも久しくこれを使わなかったもんだから、調子に乗りすぎでな……錦っ、加減するこっちの身にもなってくれよ……」
そうして錦に向かって話す様は、かなり危ない人のようだ。
「ん……? 今、この人何か危ないな……とか思っただろ」
「へっ……いや……」
「隠すな隠すな。わたしも自分でやってて恥ずかしくなる時があるんだ……よッ」
呑気に話しながらも斬光を幾つも繰り出し、もう既に半数以上を消してしまっていた。
そうして戦っているうちに、確実に一体ずつ仕留めている矢に気付いた。放たれる矢の方を目で確認してみれば、黄城の中階の辺りに、若い青年が弓をつがえているのが見える。
「……魁……あれは誰だ?」
不思議な気の拍動を感じる。
人ではない。しかし、神族でもない。誰かに似ていると思った。すると、目が合った。
それはまるで、初めて見た生き物に恐怖するような目だった。逃げ出すように奥へと引っ込んだその男を不思議に思いながら、気合いを込めた斬光は、また一気に過たずカルマを一掃した。
◆ ◆ ◆
「何なんだ? あの男……」
あの目を思い出すと少しばかり苛立った。一族の者達に、蔑むような目で見られることはしばしばあった。だから、たいていの嘲りや上から見下されるような目には頓着しない。
だが、あの視線は違う。
「くそっ、見たかっ魁ッ。あの男っ、私を珍獣でも見るような目で見おったぞっ。お前っ、今すぐここへ連れて来いッ」
ちょっと失礼ではないのか。自分でもよく分からないが、非常に腹立たしい。
樟嬰は、正体の分からないその男の存在そのものに何かを感じていたのだが、それには気付かず、ただあの目が気に入らなかったのだと思い込んだ。
「あっ、あのっ……どうか落ち着いてください。それに……」
「なんだっ」
「はっ、いえっ。あの方は、玉様ですっ」
何と言ったのか、頭が理解しなかった。
「っ、何っ? 玉……あれが……?」
そのことに衝撃を受け、再び彼のことを思い出そうとした時だ。閻黎が城から飛び出してきた。
「っ、樟嬰様っ。お出ででしたかっ。まさかっ御自ら討伐に……」
「閻黎殿……えぇ。全部片付きましたよ。すぐに領に戻ります」
「あ……お待ちをっ。今、玉様がおいでなのです」
それを聞くと、樟嬰ははっきりと答えていた。
「ッ、結構っ。会う必要はありません。あちらもないでしょう。ですので、どうかお伝えください。城の地、陽花の領内で、誤りはないかと」
またあんな目で見られたらと思うと、会いたくなかった。
「誤り……とは……」
「父上から聞いておりませんか?この世の理と律について」
「聞いております。っ、ではっ、陽花に理と律に触れるものがあると……っ」
妖魔を生み出し、瘴気を生む元となる問題。それを正さなくてはならない。
「恐らく。そして、同じく葉月でも……」
「っ……どうなさるおつもりですっ」
「……華月院に戻ります。そして、原因となっているものを排除します」
これは、あの家に生まれた樟嬰のやるべきことだ。
「っ、ではわたくしもっ。お一人では危険ですっ。華月院は、古くから能力を至上の物としている。邪魔と判断した者や、無能と判断した者は切り捨てる。あなたも例外ではないでしょう……」
「えぇ。ですから、力を使います」
「っ……あの力は命を……だから、余程の場合でない限りお使いにならなかったのでは? 今、力がある事を一族に知られればどうなるか……っ、道具として死ぬおつもりですかッ」
確かにそうだ。ここまで妖魔の数が増えてきたと言う事は、休む暇もなく力を行使し続けなくてはならない。そうなっては、どれほど神族としての生命力があったとしても、いくらももたないだろう。
「考えておりますので、ご心配には及びません。老師には、別に頼みたい事があります。お願いできますか?」
そう言って樟嬰は、悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
◆ ◆ ◆
「樟嬰様っ。馬を連れて参りました」
「おっ、さすがに気がきくな、魁」
天馬に跨がり、閻黎にもう一度向き直る。
「では、お願いします」
「お任せください……お気をつけて……」
それに応えるように穏やかに微笑むと、勢いよく舞い上がる。そんな樟嬰を、閻黎と魁は不安を胸に見送った。
樟嬰は、振り返る事なく真っ直ぐに葉月の方角へ向かって行く。行きと同じく、光の渦を出現させると、一瞬後には姿は見えなくなっていた。
その一部始終を、そっと城の窓から見ている者がいた。青玉は、いつまでも樟嬰が消えた一点を見つめていた。
「あれが……葉月領主……華月院樟嬰……」
初めて見た樟嬰は、鮮やかに優雅に舞を舞うように妖魔を退治していた。
果敢に向かっていく後ろ姿。閻黎には昔から、よく彼女の話を聞いていた。
葉月の領主は、まだ年若い女性だと。強く、戦いに秀でた男でさえも、一捻りでのしてしまう人だと。
にわかには、信じられなかった。現実に存在するなら、それはどれほど大柄で快活な女性なんだろうかと思った。
つい先ほどには、その女性が、華月院の深窓の姫であると聞かされ、ますますわからなくなった。弟である華月院沙稀は、利発で穏やかな少年だった。
あの少年の姉ならば、会ってみたいと思った。樟嬰を知る者は皆、美しく、卓越した知識と教養を持った方だと言うと聞く。
自身の主である王を選んだ時、美しい容姿に惹かれた。見た目は肝心だ。人目を惹く力は、王としては必要となる要素だ。次いで、強い光を持つ魂に惹かれた。これ程に惹かれる人は、他にはいないと思えたから選んだ。だが今、その時よりも強く惹かれる自分がいた。
振り向いて欲しい。
こちらを見て欲しい。
跳びはね、舞い踊る様は美しく目に焼き付いた。
目が合った時、まずいと思った。
自分の中で、何かが警告する。近づいてはならない。これ以上見てはならない。いつまでも目を合わせていたいと思う欲望と、そうしてはならないと響く警鐘。
自分が壊れてしまうのではないかと思った。
相反する心と身体に訳がわからなくなった。
「……樟嬰……」
甘く、絡み付く感覚。
これほどの激情を、自分が持っているとは知らなかった。
「華月院樟嬰……」
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よろしくお願いします◎
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