逃げ遅れた令嬢は最強の使徒でした

紫南

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015 家族を作るべきよ!

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馬車の待つ屋敷の前に着くと、そこでジルナリスがシルフィスカに抱きついてきた。

「シルフィ! なんて綺麗なのっ! 髪もステキ!」
「ありがとう。ジーナもよく似合ってる」
「ふふっ、青でシルフィと揃えたのっ。もうこの年で白は着れないわ~」

ジルナリスのドレスもシルフィスカの持っていた迷宮産のものだ。だが、こちらは男女ペアではない。さすがに着られないと遠慮したらしい。だが、濃いブルーのドレスは、とても似合っていた。

馬車に乗り込むと、向かいに座ったジルナリスは上機嫌に話し出す。隣にはレイル。その向かいに侯爵だ。

「シルフィって、夜会は初めて……じゃないのかしら?」
「他国では何度か。護衛を兼ねての仕事とかで」
「そういえば、シルフィって高ランクだものね……なら、ダンスとかは?」
「問題ないよ。男性側もね」
「……え? 男性側も?」
「男装して付き合わされたことがあって」
「……なんでもやり過ぎよ……」

潜入捜査などでも変装して入り込んだこともある。自然に紛れるためにはそういうことも必要だったのだ。確かになんでもやり過ぎていたかもしれない。

「はあ……それにしても、本当にメイドが必要なかったわね。ユキト君に手伝ってもらったの?」
「いや、一人で。ユキトは本当、人間臭い所があって、絶対にそういうことしないんだよ」
「うわあ、紳士ね~」

シルフィスカが気にしないと言っても断固として着替え中や肌を見せる時は避けるのだ。滅相も無いと言って。

「あれが人形かあ……本当にすごいわね」
「ああ……この前、あいつに人の気持ちを考えろと言われたよ。人形にダメ出しされるとかどうよ」

レイルや侯爵が居るが、ジルナリスが普通に話すので、シルフィスカも普段通りだ。

「ぷふっ、なにそれっ。あははっ。ダメ出しされたの?」
「された。困った人だなって顔されて」
「くふふふふっ。いいわねえ、それっ。シルフィには必要だわ」

大爆笑されて、シルフィスカもちょっとだけムッとした。その時、聞いていたレイルと侯爵が眉根を寄せてこちらをマジマジと見ていた。

「ジーナ。人形? とはどういうことだ?」
「あの青年? が人形……?」

心底分からないという顔だった。

「そういえば言ってないわねえ。あのユキトって子、古代の機械人形なのよ。シルフィが修理したんですって」
「っ、ま、まさかそんなことが!?」
「っ……機械人形? あの?」
「そうよん。本当によく出来てるわよね~」

よく出来ていると簡単に言えるものでもないというのが侯爵とレイルの感想だ。彼らには人にしか見えなかったのだから。

レイルに至っては、シルフィスカに頼りにされているユキトに嫉妬のような感情も抱いていた。それが人ではないと知らされて喜んでいいのか困ってしまう。

「それはなんとも……」
「だから、屋敷に入ってきた時の痕跡がなかったのですね……」

誰にも知られずに男を引き込んでいたという事実は印象が悪い。補佐達もユキトを知らず雇っていたシルフィスカに、少々渋い顔をしていたのだ。だが、あれが機械人形だと言うのならば話は違ってくる。

そんな様々な考えが巡っているとは知らず、シルフィスカは呑気だった。

「『城塞執事』だからとも言えるかな。同じ古代の機械人形でも『戦闘機』は感情があまり表情や声に出ていなかったから」
「……シルフィ? 戦闘機って? まさかとは思うけど……」

やばいやつなんじゃとジルナリスが声を落として少々身を乗り出した。

「古代兵器とも呼ばれるやつだよ。一体だけ修理が出来たんだ。今はヘスライルの方の対応をさせている」
「……」
「アレ、すごいんだ。土砂崩れで通れなくなってた山道を一時間もしないで開通させたし、戦闘の感覚を取り戻すって言って、魔獣を狩り続けてるんだ」
「……」

まるで動き続けていないと死んでしまうとでもいうように、戦闘を続けているのだ。

「ま、待ってね。シルフィ。私の気のせいかしら? 何体もあるように聞こえたのだけれど」

ジルナリスはこめかみを押さえながら首を振った。

「あるが? これも特典の一つで、迷宮の隠し部屋に結構な確率で拾えるんだ。今のところ、ユキトと同じ城塞執事が後二体と戦闘機が後四体は近いうちに動かせる所まで整備してある」
「……古代兵器を五体保有って……あんたは世界をどうするつもりよ」
「どうもしないが? 寧ろ世界から切り離された辺境で悠々自適に暮らしたい」
「だ、ダメよ! そんなことしたら、シルフィのことだもの、二度と戻ってこないでしょ?」
「もちろんだ。だから切り離されたいと」
「ダメ!」

シルフィスカはユキト達が居れば何の不自由なもなくどこででも暮らしていける。居なくとも今まで問題ないのだから、実はどうでもいい。どちらかと言えば、人付き合いも好きではないのだ。人と関わり合いになってイライラ過ごすならば、誰とも顔を合わせないで済む場所に行きたい。

「シルフィは家族を作るべきよ! あと、子ども! あなたの才能を次代に繋げなくちゃ。ユキト君とじゃ子どもできないでしょ?」

チラリチラリとレイルの方を見るジルナリス。何かを期待するような目だ。

「子どもか……ユキトなら養子を探してくるさ」
「そ、そうね。あの子ならやりそう……」

この時、明らかにレイルが肩を落としたのをジルナリスは見逃さなかった。そのまま目をそらす。自業自得な所はあるのだから。

「それに……ちょっと調べてみたけど、ユキト君があの『城塞執事』なら、女城主との結婚は有りだったわね……」
「っ、人形なのでは!?」

ジルナリスの言葉に、真っ先に反応したのは、レイルだった。

「だってあの子、人より人らしいのよ。人形であっても恋をすることだってあるんじゃないかしら? って思えたわ。古代の技術って相当高かったのだし、寧ろ、あの子達にとっては主人は絶対だもの。好意を向けるように作られてても不思議じゃないわよね……」
「そう……ですか……」

レイルはとても動揺していた。ユキトによく思われていないというのは感じていたのだ。人形だと分かっても、確かに嫌われているという雰囲気はあった。ならば、感情があると言われても納得するしかない。

そして何より、シルフィスカにとって、間違いなくユキトは特別な存在だ。様々な理由を加味しているが、特別なことには変わりない。一方でレイルは明らかにシルフィスカへの対応など、良くない部分があった。レイルの印象は悪い。それがとても落ち着かなくさせていた。

ここでようやく、レイルはシルフィスカへの感情を理解したのだ。

同じように侯爵も悶々と考え込んでいたため、シルフィスカの次の言葉を軽く聞き流してしまう。それが何に繋がっていくのかを、今は知る由もない。

「子どもとかそういうのじゃなくても、弟子はそれなりにいるから、いいんじゃないか?」
「……シルフィ……それ初耳よ……」
「そうだったか?」

シルフィスカとジルナリスは、そんな会話を続けながら暇を潰す。馬車が王城へ着いた時には、色々な意味で落ち込む男性陣と、久し振りに思う存分話を楽しんだ晴れやかな様子の女性陣というものが出来上がっていたのだった。

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読んでくださりありがとうございます◎
少し空きます。
来週18日です。
よろしくお願いします◎
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