エセ関西人(笑)ってなんやねん!? 〜転生した辺境伯令嬢は親友のドラゴンと面白おかしく暮らします〜

紫南

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4th ステージ

032 ウチの友達が来るゆうだけや

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クイントを伯爵領へ送って次の日の夜。クイントから連絡が入った。彼は宣言通り本気で仕事をしたらしい。

『明日の昼頃にはそちらに着けそうです。昼食、ご一緒できませんか?』

これに、どう答えようか迷った。

「ええけど、こんなど田舎に、宰相さんが満足出来るような店はないで? ウチはいつも使用人らと食堂で食べるしなあ」
『それで構いませんよ?』
「へ? いやいや、当主居らんで?」
『ヘルナ様達はいらっしゃるのでは?』

さすがというか、クイントはほんの少しの情報で正しく推測する。楽で良いが全てを見透かされていそうで怖い。

「そりゃあ、ばあちゃんらとは一緒に食べるけど……ほんまにええん?」
『ええ。その方が部下達も一緒にできそうですし。私も実は、賑やかな方が好きなんです。普通に下町の居酒屋とかでも嬉しいくらいで』
「は? 宰相さんが?」

なんだかとんでもない話を聞いた。

『ふふ。子どもの頃はヤンチャだったのですよ。突然、次期当主と言われるようになってからしばらくは反発もしましたからね』
「それは……ありそうやね」
『ヤンチャな私、どうですか?』
「嫌いやないわ」

なぜかスルッと出ていた。口説かれているのだろうかと混乱したためだ。

『っ、それは良かった。では、昼に』
「気いつけてな」
『はい。おやすみなさい、リン。是非、私との夢を見てくださいね』
「そ、それは断言できんわ……おやすみ……」

なんだろう。この恋人のような会話。

「これは……術中にはまっとるんでは……? おかしい……おかしいで……十歳児を本気で口説くとかおかしいやろっ」

そうして悶えること数分。考えても分からんと不貞寝した。

翌日、朝食の席で祖父母と魔法師長に話すことにする。

「おはようさん。ケンじいちゃん。よお眠れたか?」

魔法師長の名をケンレスティン・シュバークという。ティンと呼ぶ者が多いらしいが、前世の記憶を持つリンディエールにはケンの方が馴染みがある。なので、ケンじいちゃんと呼ぶようになった。

「はい。おはようございます。リンさん。あのような素晴らしい寝具は初めてで、かつてなく気持ちよく目覚めることができました」
「そりゃ良かったわ」

様付けはやめてほしいと頼んだため、魔法師長はさん付けでリンディエールを呼ぶ。

リンディエールは魔法師長用に寝具一式を新たに用意していた。可愛らしいおじいちゃんな魔法師長には、長生きして欲しいと願って、硬すぎず、柔らか過ぎないマットと枕。重くない掛け布団を用意したのだ。もちろん、少し前から祖父母にも提供済みだ。

体が痛くならないと好評だったため、現在少しずつ住み込みの使用人達用にも作製中である。客室には既に入れてあるので、クイントもきっと喜んでくれるはずだ。

魔法師長は昨日のうちに祖父母の友達ポジションをすぐに確立し、使用人達とも穏やかに笑い合うようになっていた。なので、当主への挨拶もせずに普通に食堂で食べている。

予定では宰相であるクイントと共に当主へ挨拶することになっているので問題はない。ただ、当主がこれを知っているかどうかをリンディエールは知らない。

「……本当に一日で終わらせるとは思いませんでした……あ、いえ、あの子は昔から有言実行が常でしたけれど……」

クイントの魔法の師であり、教育係でもあったという魔法師長も驚いていた。

「宰相さんらしいわ。護送するん見送ったら、残った護衛連れてこっちに向かうそうやで」
「ご当主へのご挨拶が早まりそうですね……」

残念そうにするのは、ここへ来て一日、魔法師長としてではなく、気さくな祖父母の友人としての滞在がとても気に入ったからだろう。

「せやけど、あの宰相さんのことや。早くても顔合わせるんは夜やない? 辺境伯へ挨拶ゆうか、普通にウチの家に遊びに行くみたいなノリやったで?」
「……ありそうです……」
「ん~……あ、シュルじい。宰相さんが来るゆう話、当主にはどう伝わっとるん?」

ちょうど通りかかった家令のシュルツを捕まえた。

「ご予定ですか? 明日の昼前にお着きになり、昼食をお出しして落ち着かれた頃にご挨拶となります。夕食まで歓談され、領の視察は二日目になりますね。ああ、そうです。旦那様が明日の晩餐はお嬢様もと考えておられるようでしたが、いかがいたしますか?」
「なんや。それウチが決めてええんか?」
「はい」

令嬢たるもの、父親の言うことは絶対というのが普通ではないのか。そう首を傾げながら考える。

「そうやね……できればやめた方がよさそうやけど……宰相さんに決めてもらうわ」
「左様ですか……」

一体どうゆう関係だと考えていそうだ。そんなシュルツに、リンディエールは変更を伝える。

「シュルじい。宰相さんの予定が変わったんよ。一日前倒しや。昼はここで一緒に食べるよって、厨房にも伝えてや。宰相さんの連れてくる護衛の五人も一緒するで、よろしゅうな。部屋の準備は出来とるやろ?」
「へ? あ、は、はい。出来ております……え?」
「当主への挨拶とかは宰相さんが来てから考えてもらうわ。一応は領主館に連絡……は、知らせてええなら宰相さんがするか。出迎えは……」

どうするかなと考えていると、魔法師長がおずおずと声をかけてくる。

「あの……恐らくクイント様なら、リンさんがいらっしゃれば問題ないかと……当主に挨拶と言っていますが、間違いなく目的はリンさんです。なので、ファルビーラ様とヘルナ様もいらっしゃれば一応の体面は整うかと」

それでいいのかと思わなくもないが、きちんと当主の出迎えが要るようならば、連絡するだろう。

「お忍びゆう体にもなるか……一日早く来てゆっくりするゆうことやね。当主の予定はそのままにしといてや。変更するんやったら、宰相さんが連絡するわ。シュルじいと部屋の世話するメイドさんらには一日前倒しで悪いけどな」

それほど手のかかる人でもないだろう。ただ、人は増えるので、食事は気にしてもらわなくてはならない。

「増える食事の人数は料理長に伝えといてえな。ここで食べるやろうけど、あんま気負うなゆうといて」
「……承知しました」

色々と呑み込んだ顔で、シュルツは厨房へ向かって行った。

「それにしても、こちらの食事はとても美味しいですねえ。朝からこんなに食べられるか心配だったのですが……食べられたことに驚いています」
「良かったわ。無理せんで、食べれるだけ食べてや。最近は栄養もきちんと計算できとるでな。帰りにレシピや献立も渡すわ。ケンじいちゃんには元気でいてもらわな。なっ」
「っ……ありがとうございます」

感動された。本心なので嬉しいものだ。

その時、厨房から料理長が駆け出してきた。

「リ、リン嬢ちゃん! さ、さい、宰相様がここに! ここでお昼におた、お食べに!?」
「なんやハゲ。落ち着きいや」
「できるわけないでしょうっ」
「できな、ちょい水かぶって来い。まったく、デカい図体しとんのに、肝はちっさいなあ」
「そ、そんなどうしようも……っ」

大の男が十歳児に泣きついている状況はどうなのだろうか。注目する使用人たち。これにより『えっ!? 宰相様がここで!?』と動きを止める。リンディエールは変わらず食事を進めていた。

「ウチの友達が来るゆうだけや」
「じょ、嬢ちゃんのともっ、友達……友達? 友達なら……え!? 宰相様が友達!?」

動揺しすぎだ。

「うっさいわ! だいたいなあ。王都の王付きの近衛騎士が憧れてますゆうて頭下げるヘルナばあちゃんと、一応英雄のファルじいちゃんが平気なんやったら、王様来ても大したことあらへんわ!」
「え、あ……たしかに……?」

料理長だけでなく、他の使用人達もヘルナとファルビーラを見て、うんと頷く。引き合いに出された二人はなんとも言えない顔をしていたが気にしない。事実だ。

「そんで? ここに居んの、魔法師長のケンじいちゃんやけど、どうなん?」
「……え? ま、魔法師長……さま? ファルビーラ様達のご友じ……ん?」

しばらく整理する時間をやるべきだろう。さっさと食べてしまうことにする。

そんなリンディエールを見て、魔法師長が祖父母に声をかけていた。

「いつも……このように?」
「リンは大人相手でも平気で説教するからな……領主の護衛も、話を聞かんかったら遠慮なく蹴り飛ばすし……」
「使用人達はリンちゃんをこの家のお嬢様というか……主人並に考えてる節があるのよね……実力もあるし……当主とリンの命令が別だったら、リンの方を優先すると思うわ」
「……それほどですか……」

使用人達のリンディエールに対する信頼は大きい。普段家に居ない当主よりも、長男の部屋に入り浸っている夫人よりも上なのだ。

ここでようやく料理長が再起動する。

「はっ……大丈夫な気がしてきました……」
「そうか。なら良かったわ」
「はい……」

それでも未だ、不安そうな表情を向けてくる。厨房から覗き見ている他の料理人達もだ。これは確かな言葉が欲しい時だ。ここの使用人達は甘えたが多い。ただしこれは、リンディエールにしか向けられない。

「はあ……あんなあ、普段、手え抜いとんのか?」
「へ? いいえ!」
「ウチは、あんたらが勤勉なのも分かっとる。お客が来るなら特別な料理を思うかもしれん。けどなあ。普段やらん料理をその時一度のために出す方がよっぽど失礼やで」

慣れないものを出して失敗するのはバカのやることだ。

「いつも、今より上を目指しとんとちゃうんか?」
「目指してます……分かって……っ」

分かってくれていたのかと料理長は言葉を詰まらせる。

「努力しとんのは分かっとるし、誰より食べるウチらのことを考えとるやろ。そうやないと、料理人があんな真面目に本読んで勉強せえへんわ。寄越したんウチやけど、料理人は実践あるのみっちゅう風潮があるん知っとるで」
「……リン嬢ちゃん……っ」

こんなお子様に言われて、その料理人の常識をあっさり無視した料理長を、リンディエールは口にはしないが尊敬している。それに倣い、他の料理人達も教本を手に取った。この家の料理人達を誇らしく思う。

「それでもこんなガキの言うように勉強したんや。これで大成せんかったらウチが悪い」
「っ、そん……っ」

誰かのせいにしたいならすればいいと笑ってやった。

「けどなあ。これだけは言っとくで。自信持ちい。王宮料理人なんてきっと大したことあらへんわ。実践だけやないて分かったやろ」
「はい。きちんとした専門の知識が必要だと俺らは分かってます!」

感覚だけではダメだ。根拠のある知識がなくてはならない。それを、彼らは理解していた。

「なら、あんたらがこの国で最先端の料理人や。そんな料理人達が作る料理がお客に出す自信ないて言うなや? 今までの経験と知識と味覚を信じい。あんたらが美味い思うもんを出せばええねん。普段と変わらんわ!」
「っ、はい!」

早よ行けと手を振ると、料理長は厨房に駆け込んで行った。迎え入れる料理人達は目を潤ませながら、やる気をみなぎらせていた。

「やるぞぉぉぉ!!」
「「「「「おぉぉぉぉっ!!」」」」」

そんな料理人達の声を聞きながら、リンディエールは満足げに笑みを浮かべる。だが、口にしたのは別のこと。

「相変わらず、暑くさい連中やな」
「リンちゃん……嬉しいくせに」
「マジでリンにこの家任せた方が良い気がするわ……」
「なんとっ、なんと素晴らしいっ。感動いたしました!」
「ノリがええだけやで?」

そう言いながらも、優しい目をしていたリンディエールだった。

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読んでくださりありがとうございます◎
また二日空きます。
よろしくお願いします!
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