エセ関西人(笑)ってなんやねん!? 〜転生した辺境伯令嬢は親友のドラゴンと面白おかしく暮らします〜

紫南

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5th ステージ

037 苦労しておられるようですね

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翌日。

昼前にグランギリアの所に魔法師長を迎えにリンディエールは転移した。

「グランも一緒に来るゆうことでええんか?」
「ええ。屋敷の片付けも済ませました。いざという時の避難所としても使うように離れの鍵も里長に渡しましたし問題ありません」

既に昨日、リンディエールが帰ってから準備は整えたらしい。前々からいつでも出ていけるようにと考えていたという。

「けど、もったいないやん。こんな立派な屋敷……」

もちろん、壊されるのも嫌だ。ならば無理にでも空間収納にと考え始めたところでグランギリアが提案した。

「それでなのですけれど、この屋敷全てをリン様の図書館にしてはどうかと」
「……と、図書館っ!?」
「はい。ヒストリア様もかなりの蔵書をお持ちとか。でしたら、こちらの屋敷全てを図書館に……」
「っ、するする!! いっぱい置けるやん! すごいで!!」

リンディエールは大興奮だ。屋敷全てを自分専用の図書館に出来るのだから当然だろう。

「ふふふ。では、屋敷を造り替えます」

グランギリアは玄関扉のノッカーに魔力を流す。すると、カタカタと屋敷が音を立てはじめた。

見ているファシードも、魔法師長もリンディエールの隣で目を輝かせている。大規模な魔法の行使に興味がないはずがない。

「完了しました。少し見て見ましょうか」

ノッカーから手を離し、グランギリアが扉を開ける。

中に入ってすぐの玄関アプローチは変わらない。だが、リビングの方に入ると、そこには綺麗に棚が並び、壁は一面本棚だった。

「この屋敷自体が魔導具のようなものでして、亜空間収納のように、各部屋の入り口で何が置かれているかを検索することができるようにしました。魔力登録をした者しか入れない設定になりますので、まずは登録してしまいましょう」

玄関に入ってすぐ。中央にあった四角い石。何かを置く台座のようなものだ。高さも今の十歳のリンディエールくらい。それに先ずグランギリアが魔力を送る。魔力波動には同じものがないため、個人を特定するのに使われる。

すると、今度はその石の上に丸い魔石が出てきた。真球の紅い魔石だ。手を触れ魔力を送るとキラキラと光を放ちながら回転する。

「どうぞ、そちらの石板に魔力を送ってください」
「分かった」
「ファシード殿とケンレスティン殿も登録でよろしいですか?」
「もちろんや。二人もここ使いたいやろ?」
「「っ、はい!」」

そうして、登録が終わった。

「マスター権限をわたくしとリン様で登録してあります。どちらかの認証がないと、新たな方の登録はできません」
「どのみち、ウチやグランと一緒やないとここまで来られんし、ええやろ」

今のところ、移動手段はリンディエールとグランギリアの持つ転移しかないのだから。

「ほんなら、行こか」
「はい。これから、どうぞよろしくお願いいたします」
「ウチこそや」

里の者達にまた来るからと挨拶して、デリエスタ家の前に転移した。

「これから昼食や。先ずは部屋に案内するわ」
「はい」
「……リンちゃん……私もいいの?」

ファシードが小さい魔法師長に隠れるようにして声をかけてきた。

「当たり前やん。オババの部屋はウチの部屋の近くに用意したでな。大丈夫や。ここのメイドさん達も優秀やで。ただ、食事はきちんと歩いて食堂まで来て取りいや。あんま動かんのはあかんで」
「食堂……」
「人にも慣れや。みんな味方になってくれるで、心配あらへん」
「ん……わかったぁ……」

長生きするには適度な運動も必要。人と関わることも大切だ。誰かと話の出来る環境はあった方がいい。

「研究は一人でするもんかもしれんけどなあ、アイデアとひらめきは人の中から生まれるもんやで」
「っ……あ、うん……そうかも……」

今までの経験上、思い当たることがあったようだ。年長者はこれだから話がしやすい。

それぞれの部屋に案内した後、魔法師長にファシードを頼み、先に食堂に向かってもらうことにする。

リンディエールはグランギリアを連れて、家令のシュルツの執務室へ向かった。

「シュルじい、入るで」
「っ、はい」

今日の朝食事の席で、すれ違ったシュルツに侍従長を決めたからと気楽に告げた。物凄く混乱されたようだが、そのまま昼前に連れてくると言っておいたのだ。

中には領主護衛のギリアンも居た。

「なんや、ギリ兄。今日は非番か?」
「違いますよ。今日はこちらで仕事です」
「あ、そうか。宰相さん達と挨拶やったな」
「そうですよ……はあ、それで、そちらが……」

ギリアンがグランギリアに真っ直ぐ目を向けた。

「グランギリアと申します。この度、リンディエール様の侍従となりました。よろしくお願いいたします」
「……俺はギリアン。当主の護衛長です。そしてこちらが……」
「当家の家令でシュルツと申します」

これで挨拶は済んだなとリンディエールはさっさと出て行こうとする。

「ほんなら、顔合わせも済んだし、昼食べてくるわ」

だが、そこはギリアンとシュルツの二人に止められた。

「お嬢、彼と少し話をさせてください」
「家令として、お伝えしておきたいこともございます」
「ん? そうやなあ」
「リン様。ここは安全のようですし、少し離れることをお許しいただけますか?」
「分かった。先に行ってじいちゃんらと食べとるわ」
「はい。すぐに参ります」

グランギリアが良いならいいかとリンディエールは先に食堂に向かった。

残ったグランギリアは、二人に席を勧められる。

「はあ……お嬢には本当にいつも驚かされる……まさか魔族の方とは」

向かいのソファに腰掛け、額を片手で覆って天を仰ぐギリアン。

「本当に、本当に心臓がいくつあっても足りませんよ……お嬢様が生まれてから寿命がどれだけ縮んだか……」

シュルツは頭を抱えて俯いた。

「ふふふ。苦労しておられるようですね」

グランギリアには、その苦労も楽しめるものだ。

「笑い事じゃないっすよ……聞きますが、お嬢を鍛えたのはあなたですか?」
「いいえ。初めてお会いした時は既にお強く、高難度の迷宮に野菜を買いに来ておられました」
「「野菜……」」

二人はなさそうであり得そうだと納得する。それに、グランギリアはクスクスと笑いながら懐かしげに続けた。

「はい。籠に沢山里の者にもらった野菜を抱えて『ウチ、リンディエールゆうねん! なんやものしりな人がおるゆわれてあそびに来てん。こないなええ男がおる聞いとらんで!? ぜひお友だちからよろしゅう! リンて呼んでや!』と扉を開けた途端に一気に挨拶をされまして」
「お嬢……」
「お嬢様ぁ~」

挨拶かどうかも微妙。貴族の令嬢としてはアウトだが、これはこれでリンディエールらしい。

「驚き過ぎて思わず招き入れてしまいました。あのような経験は、長く生きてきて初めてで、衝撃的な出会いでしたね」

嬉しそうに笑うグランギリアを見て、二人は頷き合う。これは問題ないと。

「これからお嬢のこと、よろしくお願いします。貴族の家の事情で、寂しい思いをさせてしまっています。どうか、側にいてやってください」

ギリアンは立ち上がって頭を下げた。それに続いて、シュルツも立ち上がって頭を下げる。

「わたくしからもお願いいたします。お嬢様は奔放な方です。侍従を付けようにも、ついていける者は考えられませんでした。あなたならばお任せできる。僭越ながら、当主に代わりましてお願い申し上げます。どうかお嬢様をよろしくお願いいたします」

早い段階でリンディエールに侍従を付けようという話が使用人の中で出ていた。そうして繋いでおかなければ、リンディエールは全てを捨てて出て行ってしまう気がしていたのだ。

家を捨てるにしても、自分たちが認めた者が側にいて欲しい。それはただの自己満足だろう。けれど、どうしてもと思っていた。大切に思うからこそのわがまま。

「もちろんです。わたくしにとってリン様は生涯唯一の主人です。最期まで共にあると誓いました。お任せください」
「っ、ありがとう」
「ありがとうございますっ」

グランギリアは二人がとても気に入った。リンディエールを大切に思っていることが分かったからだ。そして、何よりも、この時代で魔族である自分を受け入れたことは大きい。

侍従が異種族であることよりも、リンディエールを一人にすることの方が問題だと思った証拠なのだから。

それから少しだけ、リンディエールがやらかした事の話をギリアンやシュルツが披露し、いかに大変かを伝えながらもどうか見捨てないでくれと頼み込む。

グランギリアならば大丈夫だと信頼したからこそだろう。それがグランギリアも嬉しかったのだ。

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