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9th ステージ
091 抵抗してみなさい
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教皇が密かに国を出て数日が経った日の夜。
「なっ、なんだ!?」
「何が起きたんだ……?」
「こ、この光は一体……っ」
雲の合間から見える月明かりは淡く、半月よりも小さめだ。そんな夜に、聖皇国の中心にある教会が唐突に様々な角度から照らす光によって照らし出されたのだ。
光の筋が見えるほどの強い光。それも一定方向に向かう光など、魔法でも考えられることではなかった。
「か、神が……神が降臨されるんだ……っ」
「まさかっ。あの手紙……っ、本当に神託だったのか……?」
「大司教様っ!! こ、これは一体……っ!」
教会に三日前、とあるカードが届いた。それは、いつの間にか神殿の祭壇の上に置かれていたのだ。そのカードは見たことがないほどの装飾が施されており、そこに書かれていた文字は、それが文字だと認識できても、文字だと認めるには美しすぎた。
祭壇にあったこともあり、極一部の敬虔な信徒である司教や司祭が、これは、神からもたらされた神託だと距離を置きながらも見つめた。
そうして、しばらく祈りながらも、目に焼き付けようとするのに忙しくしていた。だが、次第に文字を理解し、動きを止める。
「っ……え……」
そのカードには、こう書かれていた。
----------
三日後の風の日の晩
*幸運転化の宝玉
*穢れた王冠
*召喚の杖
*隷属の香石
*召喚された異世界の少女
これら五つを
神の依頼により
いただきにあがります
怪盗 リンリア
----------
そして、今夜がその約束の晩。
誰かのイタズラだと、上層部は判断したが、まったく警戒しないということはない。一応は、下位の者たちに、夜の見張りを強化するようにと告げ、さっさとベッドに入ったようだった。
月が中天に差し掛かろうとする頃。それは起きた。
ピカッ!
ピカッ!
ピカッ!
寝静まった静かな教会を、いくつもの光の筋が照らし出したのだ。
「一体、何が……っ」
「こんな魔法はあり得ない……やはり神が……」
途端に騒がしくなる中、その教会の天辺に、光の筋が動いて集まる。何事かと出てきた多くの人々の視線は、自然とそこに集まった。
そこには、艶やかな長い黒髪を風に靡かせる少女がいた。赤を基調としたミニスカートを基に、ヒラヒラと長い裾が後ろ側に伸びているドレスのようにも見えた。胸のあたりには、大きなリボン。こちらも赤だが、色合いがスカートよりも少し鮮やかだ。
スカートから伸びている足は、黒。足下は少しヒールのあるショートブーツだ。少女にしては、姿勢や身体的なバランスが良い。それに少し見惚れるが、最後に目が行くのは、顔だ。
大きな鼻から上半分を覆う銀の仮面。それがどうしてか、とても少女に似合っていた。
そして、少女は全ての視線が集まったことを確認してか、どこからともなく出した銀の扇を口元に広げて見せる。この仕草に、誰もが息を呑む。それだけ魅力的だった。
そんな少女が扇を閉じると小さな艶やかない唇を開く。
「わたくしは、怪盗リンリア。神からの依頼により、約束のものをいただきに参りました」
耳鳴りがするほどの沈黙が辺りに満ちる。
少女は蠱惑的に唇を笑みの形に結び、閉じた扇の先を教会関係者へと向けた。
「さあ。精一杯、抵抗してみなさい」
遠くても分かる。仮面の隙間から見える瞳が、キラキラと輝いていた。それがまた、多くの者を魅了したのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
一週空きます。
よろしくお願いします!
「なっ、なんだ!?」
「何が起きたんだ……?」
「こ、この光は一体……っ」
雲の合間から見える月明かりは淡く、半月よりも小さめだ。そんな夜に、聖皇国の中心にある教会が唐突に様々な角度から照らす光によって照らし出されたのだ。
光の筋が見えるほどの強い光。それも一定方向に向かう光など、魔法でも考えられることではなかった。
「か、神が……神が降臨されるんだ……っ」
「まさかっ。あの手紙……っ、本当に神託だったのか……?」
「大司教様っ!! こ、これは一体……っ!」
教会に三日前、とあるカードが届いた。それは、いつの間にか神殿の祭壇の上に置かれていたのだ。そのカードは見たことがないほどの装飾が施されており、そこに書かれていた文字は、それが文字だと認識できても、文字だと認めるには美しすぎた。
祭壇にあったこともあり、極一部の敬虔な信徒である司教や司祭が、これは、神からもたらされた神託だと距離を置きながらも見つめた。
そうして、しばらく祈りながらも、目に焼き付けようとするのに忙しくしていた。だが、次第に文字を理解し、動きを止める。
「っ……え……」
そのカードには、こう書かれていた。
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三日後の風の日の晩
*幸運転化の宝玉
*穢れた王冠
*召喚の杖
*隷属の香石
*召喚された異世界の少女
これら五つを
神の依頼により
いただきにあがります
怪盗 リンリア
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そして、今夜がその約束の晩。
誰かのイタズラだと、上層部は判断したが、まったく警戒しないということはない。一応は、下位の者たちに、夜の見張りを強化するようにと告げ、さっさとベッドに入ったようだった。
月が中天に差し掛かろうとする頃。それは起きた。
ピカッ!
ピカッ!
ピカッ!
寝静まった静かな教会を、いくつもの光の筋が照らし出したのだ。
「一体、何が……っ」
「こんな魔法はあり得ない……やはり神が……」
途端に騒がしくなる中、その教会の天辺に、光の筋が動いて集まる。何事かと出てきた多くの人々の視線は、自然とそこに集まった。
そこには、艶やかな長い黒髪を風に靡かせる少女がいた。赤を基調としたミニスカートを基に、ヒラヒラと長い裾が後ろ側に伸びているドレスのようにも見えた。胸のあたりには、大きなリボン。こちらも赤だが、色合いがスカートよりも少し鮮やかだ。
スカートから伸びている足は、黒。足下は少しヒールのあるショートブーツだ。少女にしては、姿勢や身体的なバランスが良い。それに少し見惚れるが、最後に目が行くのは、顔だ。
大きな鼻から上半分を覆う銀の仮面。それがどうしてか、とても少女に似合っていた。
そして、少女は全ての視線が集まったことを確認してか、どこからともなく出した銀の扇を口元に広げて見せる。この仕草に、誰もが息を呑む。それだけ魅力的だった。
そんな少女が扇を閉じると小さな艶やかない唇を開く。
「わたくしは、怪盗リンリア。神からの依頼により、約束のものをいただきに参りました」
耳鳴りがするほどの沈黙が辺りに満ちる。
少女は蠱惑的に唇を笑みの形に結び、閉じた扇の先を教会関係者へと向けた。
「さあ。精一杯、抵抗してみなさい」
遠くても分かる。仮面の隙間から見える瞳が、キラキラと輝いていた。それがまた、多くの者を魅了したのだ。
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