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9th ステージ
093 カイトウ……ってなんだ?
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怪盗を怪盗らしくするためには、ある程度、この行為に正当性を持たせなくてはならない。
本来なら、見守る方、盗られる側が調査推理し、辿り着くべき答え。しかし、怪盗さえ知らず、お約束を知らない異世界人にとって怪盗は、ただ教会に盗みに入る愚か者でしかない。
そして、聞こえてきた言葉に、リンディエールは仮面の下で少し焦る。
「……なあ、カイトウ……ってなんだ?」
「さあ……」
「そういう名前なんじゃ……」
『マジか! そっから!?』と、思わず大声でツッコむところだった。まさか、盗み以前に『怪盗』という言葉さえ知らないとは気付かなかった。恐らく、撮影中のヒストリアも同じように愕然としているだろう。これは完全に認識不足だった。
だが、計画に変更はない。元々、異世界仕様の怪盗として形を作ろうと思っていたのだ。
見た目は優雅に、余裕があるように見せたまま、リンディエールはこのまま決行していく。
「皆さまにも確認していただきましょう……コレが、わたくしが先日、この教会に出した予告状です」
教会の壁に、それを映し出した。
----------
三日後の風の日の晩
*幸運転化の宝玉
*穢れた王冠
*召喚の杖
*隷属の香石
*召喚された異世界の少女
これら五つを
神の依頼により
いただきにあがります
怪盗 リンリア
----------
これにより、名が『カイトウリンリア』ではなく『リンリア』であると伝わったようだ。言葉の意味は分からなくても、それが伝われば上出来だ。
「素直にわたくしに渡す……とは思っておりません。あなた方にとって、コレらはある意味で商売道具なのですから」
「っ……渡す……渡すとは……渡せるわけが……」
大司教達が、ブツブツ言っているのが、リンディエールには聞こえる。特に、マークしているタヌキじじいが、いい具合に煮え立ってきているようだ。
「わたくしが神からの使者であると言ったところで、あなた方は変わらないでしょう……」
昨日まで、考えた末にヒストリアを見て決めた。時代劇のお裁きのように、全部この場で教会に非があると詳らかにしてしまえばいいのだ。
リンディエールはまた、優雅に扇を開き、口元を少し隠す。スポットライトを浴び、教会関係者達が何事かと騒いだことで、夜中だというのに、住民達も距離を取りながら、かなりの人が起き出しているのが確認できる。
人数的にも計画通り。勝手な推測で騒ぎ出す前に始めたことで、しっかりと彼らも耳を傾けているようだ。
スッと改めて夜の少し冷たい空気を吸い込む。
「この教会には、遥か昔の遺物を使い、教会に都合の悪い者たちを洗脳、隷属させ、意のままに操ってきた者たちが居ます」
「……っ」
辺りにまた沈黙が落ちた。反論がないならばと、リンディエールは続ける。
「『穢れた王冠』は上の者たちが操りやすい教皇に被せることで、呪われた状態にし、ゆっくりと思考力を奪うもの」
「「「なっ……」」」
大半はそんなことがと驚く声を詰まらせるが、知っていた大司教達は、なぜ知っているのかと目を見開く。騒がれる前にとリンディエールは続けた。
「『隷属の香石』は、特別に用意した護符があれば影響はありませんが、年二回の大きな集会時に持ち出し、そこで集まった住民達に影響を与えることで、この国の正当性を……教会の教えが絶対であると洗脳していたようですね」
「「「っ!!」」」
住民達だけでなく、下の位にいる神官達も、これにはドキリと心臓が跳ねるのを感じた。
「今、不自然に体が震えたのがその証。洗脳が解けた合図です。事実を知ることで、これは解くことができます」
完璧に隷属させられるものではないが、大勢に一気に洗脳をかけられるのが売りなようだ。
「次に『召喚の杖』これは、本来、従魔を召喚するための補助的な導具。術者にも従魔の方にも負担なく召喚を可能にするためのものですが……あなた方はわざと使い方を誤った」
扇を束ね、その先を狼狽する大司教達へ向ける。
「喚ぶべき者、場所を特定することなく使用することで、わざと繋がる先を定めず、暴走させる……これにより、異界への穴が開きます」
再び優雅に扇の先を口元へ持ってくる。この動作全てが、人々を正しく注目させた。
「何度もこれを行うことで、異界の穴は閉じることなく、この世界に魔素が流れ込む。濃い魔素は魔獣や魔物達を活発にさせるでしょう……」
口角を引き上げ、いっそ挑発的に微笑むと、再びリンディエールは、鋭く扇の先を大司教達へ向けた。
「そして、世界の危機だとして『幸運転化の宝玉』の力を使い、異世界から勇者や聖女を召喚した。あまつさえ、その異世界から来た者たちにそれらの真実を告げることなく、隷属の腕輪まで嵌めて、意のままに操ろうとしたのです! これが、神の意だと言うつもりですか!」
「っ……」
大司教達が、知られていることに驚き、大きく目を見開くのが見えた。
そんな中、リンディエールが『よし、決まった』と、ひと山越えたことに、ホッとしていたことは、表には出ていない。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
一週空きます。
よろしくお願いします!
本来なら、見守る方、盗られる側が調査推理し、辿り着くべき答え。しかし、怪盗さえ知らず、お約束を知らない異世界人にとって怪盗は、ただ教会に盗みに入る愚か者でしかない。
そして、聞こえてきた言葉に、リンディエールは仮面の下で少し焦る。
「……なあ、カイトウ……ってなんだ?」
「さあ……」
「そういう名前なんじゃ……」
『マジか! そっから!?』と、思わず大声でツッコむところだった。まさか、盗み以前に『怪盗』という言葉さえ知らないとは気付かなかった。恐らく、撮影中のヒストリアも同じように愕然としているだろう。これは完全に認識不足だった。
だが、計画に変更はない。元々、異世界仕様の怪盗として形を作ろうと思っていたのだ。
見た目は優雅に、余裕があるように見せたまま、リンディエールはこのまま決行していく。
「皆さまにも確認していただきましょう……コレが、わたくしが先日、この教会に出した予告状です」
教会の壁に、それを映し出した。
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三日後の風の日の晩
*幸運転化の宝玉
*穢れた王冠
*召喚の杖
*隷属の香石
*召喚された異世界の少女
これら五つを
神の依頼により
いただきにあがります
怪盗 リンリア
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これにより、名が『カイトウリンリア』ではなく『リンリア』であると伝わったようだ。言葉の意味は分からなくても、それが伝われば上出来だ。
「素直にわたくしに渡す……とは思っておりません。あなた方にとって、コレらはある意味で商売道具なのですから」
「っ……渡す……渡すとは……渡せるわけが……」
大司教達が、ブツブツ言っているのが、リンディエールには聞こえる。特に、マークしているタヌキじじいが、いい具合に煮え立ってきているようだ。
「わたくしが神からの使者であると言ったところで、あなた方は変わらないでしょう……」
昨日まで、考えた末にヒストリアを見て決めた。時代劇のお裁きのように、全部この場で教会に非があると詳らかにしてしまえばいいのだ。
リンディエールはまた、優雅に扇を開き、口元を少し隠す。スポットライトを浴び、教会関係者達が何事かと騒いだことで、夜中だというのに、住民達も距離を取りながら、かなりの人が起き出しているのが確認できる。
人数的にも計画通り。勝手な推測で騒ぎ出す前に始めたことで、しっかりと彼らも耳を傾けているようだ。
スッと改めて夜の少し冷たい空気を吸い込む。
「この教会には、遥か昔の遺物を使い、教会に都合の悪い者たちを洗脳、隷属させ、意のままに操ってきた者たちが居ます」
「……っ」
辺りにまた沈黙が落ちた。反論がないならばと、リンディエールは続ける。
「『穢れた王冠』は上の者たちが操りやすい教皇に被せることで、呪われた状態にし、ゆっくりと思考力を奪うもの」
「「「なっ……」」」
大半はそんなことがと驚く声を詰まらせるが、知っていた大司教達は、なぜ知っているのかと目を見開く。騒がれる前にとリンディエールは続けた。
「『隷属の香石』は、特別に用意した護符があれば影響はありませんが、年二回の大きな集会時に持ち出し、そこで集まった住民達に影響を与えることで、この国の正当性を……教会の教えが絶対であると洗脳していたようですね」
「「「っ!!」」」
住民達だけでなく、下の位にいる神官達も、これにはドキリと心臓が跳ねるのを感じた。
「今、不自然に体が震えたのがその証。洗脳が解けた合図です。事実を知ることで、これは解くことができます」
完璧に隷属させられるものではないが、大勢に一気に洗脳をかけられるのが売りなようだ。
「次に『召喚の杖』これは、本来、従魔を召喚するための補助的な導具。術者にも従魔の方にも負担なく召喚を可能にするためのものですが……あなた方はわざと使い方を誤った」
扇を束ね、その先を狼狽する大司教達へ向ける。
「喚ぶべき者、場所を特定することなく使用することで、わざと繋がる先を定めず、暴走させる……これにより、異界への穴が開きます」
再び優雅に扇の先を口元へ持ってくる。この動作全てが、人々を正しく注目させた。
「何度もこれを行うことで、異界の穴は閉じることなく、この世界に魔素が流れ込む。濃い魔素は魔獣や魔物達を活発にさせるでしょう……」
口角を引き上げ、いっそ挑発的に微笑むと、再びリンディエールは、鋭く扇の先を大司教達へ向けた。
「そして、世界の危機だとして『幸運転化の宝玉』の力を使い、異世界から勇者や聖女を召喚した。あまつさえ、その異世界から来た者たちにそれらの真実を告げることなく、隷属の腕輪まで嵌めて、意のままに操ろうとしたのです! これが、神の意だと言うつもりですか!」
「っ……」
大司教達が、知られていることに驚き、大きく目を見開くのが見えた。
そんな中、リンディエールが『よし、決まった』と、ひと山越えたことに、ホッとしていたことは、表には出ていない。
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